2015年5月9日

『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』ほか-財務3表を理解するためにはこの3冊



企業の2015年3月期決算発表も佳境に入ってきました。個別株投資をしている人は、自分が持つ銘柄の決算短信の中身が気になるところです。ところが企業分析の中心となるなる財務3表(損益計算書〈PL〉、貸借対照表〈BS〉、キャッシュフロー計算書〈CS〉)を有機的に理解するのは、ちょっと専門的に会計を勉強した人でないと難しいのも事実。会計を専門的に勉強した経験がなくとも、わかりやすく財務3表のつながりを説明してくれるのが國貞克則氏の決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書)財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書)財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ (朝日新書)の3冊です。大ベストセラーですが、実際に読んでみると、まさに頭の中のモヤモヤすっきり、目から鱗のシリーズでした。

私は仕事の関係で毎年、ある業界の様々な企業の決算分析をする必要があるのですが、文学部出身のため専門的に会計の勉強をしたことがなく、大変苦労していました。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)それぞれの概念は何となく理解していたのですが、それぞれがどういった関係にあるのかということでは、いつも頭モヤモヤといった状態でした。そんな時に読んだのが決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書)です。これを読んで、財務3表の関係が実にすっきりと頭に入ってきました。

架空の事業主となって架空の事業を営みながら実際に財務3表を作成していく形で3表の関係を説明しているので、一種のロールプレイングを通じて断片的な知識がつながっていき、読んでいてお思わず膝を打つこと数回。「そういうことだったのか!」と思わず声に出してしまったほどです。たとえばBSはバランスしていて、PLも黒字なのに資金が足らずに黒字倒産ということは中小企業ではよくあることですが、なぜそうなるのか。また、PLがBSにどう反映していくのか。このメカニズムを理解すれば、PLとBSを時系列で眺めることで“会社が成長する”とはどういうことなのかといったことがじつにクリアに分かりました。同時に、PLとBSは操作されているという厳然たる事実にも気づきます。

財務3表を一体的に理解することができれば、それを用いて実際に企業の経営状態を分析してみようというのが財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書)。ここでは実際の企業の財務3表を使って財務分析を行います。使われているデータは刊行時のものなので少し古いですが、ドリルのように楽しく読むことができます。




ここまで読むと、財務3表を読むのが楽しくなってくるから不思議。そこで3冊目の財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ (朝日新書)に進めば、初級者は完全に卒業でしょう。ここでは事業再生や経営改革にどのように会計の知識を活用するのかを説明しています。平社員のサラリーマンでも、これくらいは最低限理解しておきたいところです。




3冊を通じて共通していいるのは、企業活動とは「お金を集める」「お金を投資する」「リターンを回収する」のサイクルだという至極当たり前の“仕組み”だということ。それを具体的に表現しているのが財務3表だというのが本シリーズの眼目です。

財務諸表を読むのは、何も投資のためだけではありません。サラリーマンにしろ自営業にしろ、企業活動を行う上では最低限の知識です。しかし、普通の人はなかなか会計について専門的に学ぶ機会は少ない。どこか我流で理解しているものです。そんな人にとって、本シリーズのように体系的に、しかも平易に財務3表の“仕組み”を教えてくれるのは非常に有益だと断言できます。

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