2015年4月27日

住信SBIネット銀行がSBIカードを子会社化―既存契約者にも配慮した新たなサービスを期待したい

久しぶりに住信SBIネット銀行にログインしようと思いサイトを開くと、SBIカードを子会社化するというリリースが21日に発表されていました。住信SBIネット銀行は、ネット専業銀行では最大手ともいえる存在ですが、あきらかに出遅れていたのがクレジットカード事業ですから、さもありなんと思いました。今後、SBIカードは住信SBIネット銀行が主導して運営していくわけですが、既存の契約者にとって不利にならない形での新たなサービスを期待したいと思います。

SBIカードは、SBIホールディングスの100%子会社であり、住信SBIネット銀行はSBIホールディングスと三井住友信託銀行の折半出資会社ですから、今回の資本移動はSBIホールディングスと三井住友信託銀行の間で利害が一致したと見るのが普通です。リリースによるとSBIカードは会員数が8万人強ですから、はっきり言ってカード会社としては弱小の部類に入る。一方、住信SBIネット銀行は自前のクレジットカード事業がないのが弱点でした。競合する楽天銀行などと比較して、明らかに出遅れています。そこで住信SBIネット銀行がSBIカードを傘下に加えることで双方にメリットが生まれると判断したのでしょう。

恐らく今後、住信SBIネット銀行がキャッシュカード一体型クレジットカードをSBIカードとの提携で出すことが予想されます。住信SBIネット銀行の口座数は200万口座を超えていますから、その1割でもクレジットカード会員にすることができれば、SBIカードとしては劇的な会員数増加となります。当然、カード会員へ誘導するためのインセンティブが必要ですから、カード会員に対する様々な優待を設けてくることになるでしょう。

ただし、既存の住信SBIネット銀行口座保有者は警戒が必要かも。通常、銀行提携クレジットカードの優待は、振込手数料やATM手数料の優遇がほとんどです。ところが住信SBIネット銀行は、すでにすべての契約者に、これら優待を提供しています。もしかすると、こうした優遇がクレジットカード会員に限定される可能性があります。そうなると、カード非会員にとってはサービス改悪になる。また、SBIカードの強みは1.2%というポイント還元率の高さでした。しかし、こうした高還元率はリボ払いやキャッシングによる利息収入が多くないと継続不可能です。やはり銀行提携カードや一定条件(高額決済など)を満たすユーザーに限定される可能性が捨てきれません。これも既存ユーザーにとってはサービス改悪です。

一方、両社が提携することでサービスの拡大が期待できる部分もあります。ひとつはドル決済の充実。現在、SBIカードでは住信SBI銀行を引き落とし口座に指定している場合に限り、外貨での決済を行ったときに住信SBIネット銀行の外貨預金口座にある米ドルでの支払いが可能です。ただし、これは手動で細かな設定を行わないと自動的にリボ払いとなり、高い金利が発生するなど使い勝手が極めて悪い。ぜひ、ドル決済のシステムを簡略化し、安心して使えるようにしてもらいたいものです。

もうひとつ気になるのが、ステータスカードの扱いです。SBIカードは、レギュラーカード(年会費無料)、ゴールドカード(年会費5,250円)、プラチナカード(年会費31,500円)を発行するだけではなく、Master Cardの最高グレードであるWorld Master CardとしてSBIワールドカードを発行していました。現在は新規発行を停止しているようですが、もしかしたら住信SBIネット銀行との提携カードで復活させる可能性があるのではと勝手な想像をしています。住信SBIネット銀行の口座残高だけでなく、提携するSBI証券の口座残高とも総合して審査すればかなりの精度で富裕層の割り出しが可能ですし、その囲い込みツールのひとつとしても活用できるからです。

さらに勝手な想像を膨らますと、今回の住信SBIネット銀行によるSBIカードの買収は、どちらかといえば三井住友信託銀行の意向が強かったのかもしれません。前にも書きましたが、三井住友信託銀行の弱点はクレジットカード事業でした。そこでシティバンクからシティカードジャパンを買収し、ダイナースクラブカードを手に入れた。次に住信SBIネット銀行を通じてSBIカードを傘下に加えることでWorld Master Cardの発行権も手に入れたことになります。一気に陣容が整ってきました。じつに気になる点です。

いずれにしても住信SBIネット銀行とSBIカードには、既存契約者の利便性を損なわない形で銀行とカード会社が提携するメリットを持った新たなサービスを開発してもらいたいたいと期待しています。

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