2015年4月25日

『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』―生活実態に即した資産形成・運用ノウハウを完全網羅



フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長の新著、貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活 (オレンジ世代新書)を読みました。一読して感嘆。おそらく資産形成・運用に関する入門書としては決定版的1冊です。勤労者3万人アンケートの分析結果を基にあらゆる世代の生活実態に即した資産形成・運用のノウハウを完全網羅しています。「投資って必要なんだろうか?」「投資したほうがいいのかな?」とちょっとでも思い始めた人には、是非一読をお薦めします。

野尻氏は「老後難民」という言葉を生み出し、早い時期から資産形成に着手する必要性を指摘ている1人ですが、本書はフィデリティ退職・投資教育研究所が実施した勤労者3万人アンケートの分析結果をベースに、実態に即した資産形成・運用のノウハウを紹介してくれます。目次を挙げておきます。

第1章 年代別現状と課題 20代・30代の恐れと不安
第2章 年代別現状と課題 40代・50代の嘆きと苦悩
第3章 年代別現状と課題 60代・70代の悩みと憂鬱
第4章 働き方と老後
第5章 積立と引き出し
第6章 相続と投資
第7章 思い込みと分配金
第8章 セグメントと投資
第9章 NISAとDC


各章とも見開き4ページの「ファイル」として細かい項目が立てられており、全9章41ファイルの構成です。新書版ですが、さすが教育系書籍の強い明治書院が出しているだけに行間を詰めて文字がぎっしり。最近の薄っぺらい新書とは密度が違います。

まず、勤労者3万人アンケートを基にした各世代ごとの悩みがリアル。その上で野尻氏が具体的な処方箋を提示するという形が非常に腑に落ちます。例えば30代の投資では、なぜかFXの比率が高いのですが、野尻氏は「(FXでは)いつまでたっても老後のための資産形成には向かえません」とバッサリ。また、「収入-消費=貯蓄(投資)」ではなく、「収入-貯蓄(投資)=消費」という発想で生活する重要性を指摘しますが、まさにこれなどは本多式貯蓄法であり、王道の方法です。50代からの資産形成についても真面目に処方箋を書いているところは、世の中のお父さんたちにとっても十分参考になるでしょう。とにかくあらゆる世代の生活実態に即した形で資産形成・運用のあり方を総合的・具体的に網羅しているので、「これなら自分でもできる」と納得させられる点がすばらしい。

本書のもうひとつの特徴は、資産運用の出口戦略について明確に紹介していること。つまり、60歳までを「資産形成の時代」、75歳までを「使いながら運用する時代」、残りの人生を「厳格に使う時代」と分ける考え方です。具体的には国際分散投資で平均年率3%のリターンを確保できれば、60歳からは年4%を引き出しても相当期間は資産が底をつくのを防げるという考え方。また、老後の資産取り崩しは、「定額取り崩し」ではなく「定率取り崩し」とすることで収益率配列リスクを抑えるということを指摘しています。これは非常に重要なポイントです。

そのほかにも税金、相続、退職金の使い方、NISAとDC(確定拠出年金)のメリットなど資産形成・運用のノウハウが盛りだくさん。また、コラムも著者の体験に基づく内容(個別株で儲けたが、自社株で大損し「忸怩たる思い」など)で面白い。とくに家庭内投資教育の重要性を指摘した部分は、すべての日本人にとってためになる指摘です。

投資経験のない人にとっては「投資は怖いもの」という印象を持ちがちですが、正しい見通しと方法で行えば、意外と安心して投資できます。それによって将来に対する不安を少しでも軽減できるならすばらしい。野尻氏も指摘していますが「このままいけば極めて高い可能性で厳しい老後を迎える」リスクと、「資産運用での値下がり」のリスクの大きさを比べた場合、「コントロールできる分だけ資産運用のリスクの方が御しやすい」ということです。

資産形成・運用に興味を持ったという人は、まずはこれ1冊を読んで理解すれば初級編はクリアし、中級者の仲間入りです。その上で個別の投資方法の勉強に進めばいい。例えば具体的な運用商品については、山崎元氏の全面改訂 超簡単 お金の運用術 (朝日新書)などが参考になるでしょう。個人型確定拠出年金に興味を持てば、竹川美奈子さんの金融機関がぜったい教えたくない 年利15%でふやす資産運用術が参考になります。金融機関に騙されないためのワークブックとしては吉本佳生氏の金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか (光文社新書)が面白くで実践的です。








いずれにしても野尻氏の貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活 (オレンジ世代新書)は、投資未経験者にも安心して薦めることのできる良書だと断言します。
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