2015年5月25日

『日本人が知らなかったETF投資』『ETF投資入門 』-ETF投資について学ぶなら、まずこの2冊



インデックス投資を行う場合、毎月一定額を積み立てるドルコスト平均法によるコツコツ投資が定番ですが、ある程度まとまった金額を一括投資しようと思うのなら、ETF(上場投資信託)がコスト的にも安く済みます。その意味では、例えば退職金などまとまった資金のある人が、その一部をインデックス投資に回そうと考えた場合、ETFを買付けるのがもっとも合理的でしょう(間違っても毎月分配型投信など高コスト商品を買ってはいけません)。しかし、一般庶民にとってETFというのは、まだまだ認知度が低い金融商品ですし、その仕組みを理解するのは、やはり少し勉強が必要です。ETF投資について勉強するなら、まずはカン・チュンド氏の日本人が知らなかったETF投資ETF投資入門 (日経文庫)を読むことをお薦めします。

おろらく日本で唯一のインデックス投資アドバイザーであるカン・チュンド氏によるETF投資解説本ですが、ETFの仕組みから活用方法まで、じつに丁寧かつ分かりやすく説明してくれます。また、ETFのデメリットについても明確に指摘していることは重要。実際に私も少額ですがETFを所有しており、本書で指摘されるデメリット(例えば定額買付ができないことや分配金を自動的に再投資できないこと)は、決して軽視できるものではないという感覚を持っています。

また、なるべく読者を投資リスクの低い方に誘導しようとする著者の姿勢がよく出ているのもポイント。だから推奨するポートフォリオには必ず現金や債券が組み込まれており、読者が過剰なリスクを負わないように気をつかっています。このあたりにもカンさんの人柄がにじみ出ていてたいへん好感を持ちました。

新興国投資に対する認識にも共感します。新興国投資については、新興国の成長も最終的には先進国の多国籍企業などを通じて先進国に吸収されてしまうとの観点からアセットロケーションに組み込むことを否定する人もいますが、カンさんは2030年など長期的将来の世界経済のありようを展望して、比較的新興国に厚めの投資配分を提唱しています。これは非常に判断の分かれる点ですが、個人的には共感します。実際に新興国を定期的に訪問している人なら、おそらく実感としてわかるでしょう。

いずれにしてもまとまった金額を一括投資するなら、投資信託よりもETFの方がお得だし、面白い。私は現在、インデックス投信による積立投資を実践しており、ETF投資は休止していますが、これはETF投資に必要な最低金額を定期的に調達するのが難しいからです。将来、まとまった資金(退職金など)ができれば、その一部でETFを買付けようと思っています。最近は国内ETFも充実しているので、個人向け国債と組み合わせれば、それこそ毎月分配型ファンドを自作することも可能です。高コストな毎月分配型投信などを買うのはバカバカしくなるでしょう。

ちなみにカンさんはインデックス投資アドバイザーとして積立投資もとくに若い世代に推奨しており、この面でも良質な本をたくさん出しています。例えば積立型インデックス投資については、忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術 (アスカビジネス)がお薦め。コツコツ投資入門書の定番です。



Amazonレビューなどでも指摘されていますが、積立口座を開く証券会社を選択する際、給与振込口座からの引き落としサービスがあるかどうかを重視するあたりは、非常に現場感覚に優れた実践的指南となっているといえるでしょう。

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