2016年7月7日

配当金を得ることこそ株式投資の王道



6月末は上場企業の株主総会ラッシュでした。総会後には株主に対して配当金が支払われます。ここ数年、個別株への投資も少しづつ増やしてきたので、少額ずつながら次々と配当金が振り込まれました。こんなとき、つくづく思うのですが、やはり配当金を貰うことこそ株式投資の最大の醍醐味です。そういう株式投資の魅力について楽天証券経済研究所の窪田真之所長が非常に面白い論考を書いています。

投資で取るべきリスク、駄目なリスク(NIKKEI STYLE)

窪田氏が指摘するように、私も「配当利回りに注目した長期投資が株式投資の王道」だと思っています。

株式投資のリターンは、株価上昇によるキャピタルゲインと配当金収入によるインカムゲインがあるわけですが、どうも日本では“株で儲ける”と言うとキャピタルゲインを得ることにばかり注目が集まりがち。でも、窪田氏が指摘するようにキャピタルゲイン狙いの投資と言うのは、非常に難易度が高いのです。なぜかというと、素晴らしく株価が上昇する銘柄は確かに存在するのだけれども、実際の株式市場は玉石混交ですから「本物の成長株は一握りだけでしょう。本物を見分けるのは至難の業です」ということになるわけです。

一方、配当狙いの投資というのは、比較的難易度が低い。まず企業はきちんと配当予想を出すので、少なくとも短期の利回りは容易に計算できる。もちろん減配リスクはありますが、企業の余剰金のレベルやキャッシュフローの状態を見ていれば、やはり減配の可能性についてある程度の見通しは立つものです。そうした見通しを超えて経済状況が悪化することによる減配もありえますが、その場合は株価も大幅に下落するでしょうから、キャピタルゲイン狙いの投資も同じように大きな打撃を被ってしまうだけです。

そう考えると、確かに現在の日本株市場の雰囲気というのは実に不思議。窪田氏も次のように指摘しています。
最近の株式市場で私が驚きを感じていることがもうひとつあります。東証1部の大型株の中には数千億円の利益を上げ、予想配当利回りが3%以上に達しているのに、見向きもされない銘柄が多数あることです。東証1部の予想配当利回り(加重平均)は今、2.3%です。中でも大型株の配当利回りが高くなっています。
東証1部の時価総額上位で見ると、日産自動車は5.1%、三井住友フィナンシャルグループは5.1%、三菱UFJフィナンシャル・グループは4.0%、ホンダは3.4%、日本たばこ産業は3.0%、トヨタ自動車は2.9%などとなっています。長期金利がマイナス0.2%の時代に、魅力的な水準ではないでしょうか。
あえて極論すると、長期金利がマイナスとなる現在において配当利回りが3%を超えるような優良大型株というのは、リスク許容度の範囲内での投資である限り、ほとんどタダみたいな値段だと思う。もちろん東芝やシャープのような例があるので一点集中投資はダメですが、高配当利回りの優良株を幅広く分散しながらコツコツ安値で拾うという投資方法は、かなり魅力的なはず。

だから窪田氏の「ところが同じ日本の個人投資家が極めてリスクの高い東証マザーズのバイオ株に積極的に資金を投じているのは不思議でなりません。真のリスクに対する認識が不足しているのかもしれません。東証マザーズ株は、夢があるからリスクは小さいと感じてしまうのでしょうか」という言葉に納得するのです。

ちなみに長期投資における配当金の重要性については、ジェレミー・シーゲル教授も『株式投資』『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』の中で強調していることです。そして“本物のお金持ち”というのは、実際に配当収入から大きなリターンを得ている。本物のお金持ちはバタバタと売買を繰り返してキャピタルゲインを追いかけるようなことはしていません。デーンと構えて、左団扇で美味しく配当金を得ています(さらにそれを再投資することで、それこそ雪だるま式に富を増やしている)。



こういうことは、実際に長期で配当金を貰い続けるという経験をしない限りは、なかなか理解できないのかもしれません。幸いなことに私は生まれた時に祖父から関西電力の株式を少数ながら譲渡され、30年以上にわたって配当金を貰い続けた経験があるので、いかに配当金というものが大きいかということが実感としてわかるのかもしれません(残念ながら関電株は現在、無配転落していますが)。

ちなみに、インデックスファンドを長期保有すれば、こうしたインカムゲインもかなり安定的に確保できます。例えば現在、TOPIXの予想配当利回りは2%台ですから、TOPIX連動のインデックスファンドを保有すれば、やはりそれなりの配当収入が純資産に積み上げられ、分配金がなければ自動的に再投資されています。個別株のような個別企業リスクも分散投資によって低減されているから、便利なものです。

ただ、投資信託の場合、インカムゲインもキャピタルゲインもすべて基準価額の動きに内包されてしまうので、どうしても配当金の魅力を実感として得ることが難しい。前述したように配当金の醍醐味というのは、やはり実際に経験しないと分からないという面もあります。そういう意味では、個別株を保有してみるというのも投資の経験値を上げる上では有効なのかもしれません。その場合、まずはよほどのことがない限り倒産しそうもない優良大型株を割安な(配当利回りが高い)ときに買ってみるというのが個別株投資入門のセオリー。同時にそれは、株式投資の王道への第一歩でもあるのです。

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