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2025年4月6日

「いつの間にか富裕層」になる理由

 

野村総研が2年ごとに調査している「日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」の最新版が出ています。


既にニュースなどで話題になっていますが、2023年段階で「富裕層・準富裕層」が2005年以降最多となったそうです。とくに注目なのは、近年の株式相場の上昇を受け、運用資産が急増したため「いつの間にか富裕層」となった一般生活者の存在。でも、ここでよく考えないといけないのは、そういった人が「いつの間にか富裕層」となったのは、なにも近年の株式相場上昇だけが理由ではないということです。

野村総研は、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類しており、金融資産が5億円以上を「超富裕層」、1億円以上を「富裕層」、5000万円以上を「準富裕層」、3000万円以上を「アッパーマス層」と定義しています。

2023年段階を集計した最新データでは、超富裕層と富裕層は合わせて165.3万世帯(前回調査2021年比11.3%増)、うち富裕層は153.5万世帯(10.0%増)でした。富裕層・超富裕層が保有する純金融資産の総額は、それぞれ334兆円(29.0%増)、135兆円(28.6%増)となり、両者の合計額469兆円(28.8%増)となります。世帯数と純金融資産総額ともに2013年以降一貫して増加を続けています。

今回の調査結果でとくに野村総研が注目しているのが、近年の株式相場の上昇で運用資産が急増したために富裕層となった「いつの間にか富裕層」の存在です。その中身は「年齢は40代後半から50代、職業としては主に一般の会社員で、従業員持株会や確定拠出年金、NISA枠の活用を通じて、運用資産が1億円を超えたケース」が多いとか。こうした「いつの間にか富裕層」が生まれるほど、近年の株式相場の好調が力強かったわけですが、レポートには書かれていない要素もあるように思います。それは、「いつの間にか富裕層」となった人たちは、自覚的か無自覚かは別にして、とにかく“リスク資産への投資を止めなかった人たち”だったということです。

なにしろ「いつの間にか富裕層」は、年齢層が40代後半から50代で従業員持株会や確定拠出年金を通じて資産が増えた。ということは持株会や企業型確定拠出年金に加入したのは30年ほど前ということです。それから現在まで運用を続けたということは、その間にリーマン・ショックやコロナ・ショックなど多くの暴落局面を経ていることになります。それでも運用を止めずに、さらにNISAなど新たに生まれた優遇税制口座も活用して投資を続けてきた。その結果が「いつの間にか富裕層」なのです。

つまり、普通の会社員が「いつの間にか富裕層」になった大きな理由のひとつは、「どんなときも投資を止めなかった」ことにほかなりません。“最後まで市場に居続けた人が勝つ”というのは投資の世界では常識なのですが、今回の野村総研のデータは、そういった投資の世界の常識を可視化してくれたわけです。ちなみに私自身は、さすがに富裕層まではいきませんが、零細企業勤めにもかかわらず「いつの間にか準富裕層」となりました。そういう人は、かなり多いと思います。実際に野村證券のデータによると、準富裕層の世帯数も403.9万世帯(24.1%増)と大幅に増えています。結局、株式投資というのは、こういうものなのです。

さて、ここ数日前から世界の株式市場は大暴落が続いています。米国のトランプ大統領による相互関税政策のショックは想像以上に大きく、今後の株価も下値がまったく見えなくなってきました。このため「いつの間にか富裕層」となった人の中には、再び「準富裕層」に転落した人も多いことでしょう。私自身もせっかく「準富裕層」の仲間入りをしたと思っていたら、見事に「アッパーマス層」に逆戻りとなりました。しかし、こういった下落相場でも市場に居続けることが、一般生活者が「いつの間にか富裕層」となるための絶対条件なわけです。そういうことをしっかりと頭に入れておけば、今後の株式相場がどのような動きを見せたとしても、どっしりと腰を落ち着けて臨むことができるのではないでしょうか。
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