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2025年1月25日

大勢は決し、新たな可能性も示す―「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2024」雑感

 

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2024」の結果発表・表彰式が1月24日に開催されました。結果をふまえ、今回も感じたことをメモしておきたいと思います。まず、インデックスファンドに関しては“大勢は決した”ということ。そして新たに設けられたアクティブ部門は、投資信託の“新たな可能性”を示したということです。

今回の「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2024」のトップ10は以下のようになりました。

【インデックス部門】
1位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
2位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
3位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
4位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
5位 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド
6位 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
7位 たわらノーロード 先進国株式
8位 <購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド
9位 はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オールカントリー)
10位 楽天・全米株式インデックス・ファンド

【アクティブ部門】
1位 結い2101
2位 セゾン・グローバルバランスファンド
3位 コモンズ30ファンド
4位 セゾン資産形成の達人ファンド
5位 SOMPO123先進国株式
6位 なかの日本成長ファンド
7位 農林中金〈パートナーズ〉成長厳選投資おおぶね
7位 ひふみ投信
9位 楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)
10位 TracersS&P500ゴールドプラス

まず、インデックス部門についての感想。ランキングのトップテンのうち、全世界株式インデックスファンドが4本、米国株式インデックスファンドが3本、先進国株式インデックスファンドが3本入っています。つまり、現在のインデックスファンドへの支持は基本的にこの三つの資産カテゴリーに集中しており、その中での紙数の人気が順位に反映されていると言えるでしょう。これは昨年のFOYでも指摘しましたが、「商品」ではなく「指数」が選ばれる時代になっていることが鮮明です。

そもそもインデックスファンドは規模の経済が働く商品のため、どうしても特定のファンドによる独占・寡占になりやすいのですが、今回上位を占めた3ファンドは、いずれも「全世界株式」「S&P500」「先進国株式(日本除く)」それぞれの指数に投資するインデックスファンドとして圧倒的な地位を築いてています。そして、順位は、それぞれのファンドへの評価というよりも、指数の人気を反映しているということです。

そう考えると、インデックスファンドの競争においては、もはや“大勢は決した”という印象を持ちました。上位3ファンドは、コストの安さ、運用実績、規模いずれでも同じ指数に投資する競合ファンドと比べて高い評価を得ているということで、その人気を後発のファンドが打ち崩すことはほぼ不可能になっているということです。今後も「全世界株式」「S&P500」「先進国株式(日本除く)」の指数に投資するファンドを選ぶなら、この3本がそれぞれ選ばれ続けるような気がします。その中で指数の人気に変化が生じたときに、FOYの順位の変動も起こるのでしょう。

そうした中で、ちょっと気になるのが8位に入った「<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」の存在。現在、米国株式指数としてS&P500の人気が圧倒的ですが、あえてNASDAQ100に投資するというユニークさが際立ちます。競合ファンドの少なさもあって純資産残高も急成長しています。米国株の人気が続く中、米国株式の中でもとくに“とがった銘柄”で構成されるNASDAQ100に投資することで、米国株式のダイナミズムをポートフォリオに強く反映させたいと思う投資家にとって、非常に面白い選択肢として今後も人気が高まっていくような気がしました。

さて、今回のFOYから投票カテゴリーが分離された「アクティブ部門」ですが、こちらも非常に興味深い結果となりました。まず、上位10本のうち6本が独立系運用会社のファンドです。その中で1位に輝いたのが鎌倉投信の「結い2110」。これは画期的な結果だと思います。というのも「結い2101」は「これからの日本にほんとうに必要とされる会社、皆様が応援したくなるような「いい会社」に投資する投資信託」をうたっており、それこそ“儲けること”を第一には置いていないファンドだからです。

近年、アクティブファンドはますますインデックスファンドに運用成績で勝ちにくい環境となっています。このため従来のようにベンチマークを上回ることを目的としたアクティブファンドは徐々に投資家からの支持を失いつつあります。こうした中、私はこのブログでもアクティブファンドに関して、“儲ける”こと以外の付加価値を投資家に提案し、評価されることが必要だと指摘してきました。そのひとつの成功例が「結い2101」なのでしょう。

はっきり言って「結い2101」の運用実績は単純に騰落率だけを見ると市場平均と比べて物足りないものです。しかし、「目標リスク年率10%以下、目標リターン年率4%以上」という運用目標を掲げていることを理解すれば、なかなか立派な成績だと言えます。そして、発信されるレポート類の充実度、イベントなどを通じて投資先企業、運用会社、投資家のコミュニケーションとリレーションシップをしっかりと高めていこうとする姿勢は、やはり見事なものです。

こうしたことを考えると、「結い2101」がFOYアクティブ部門で1位に選ばれたことは、アクティブファンドの新たな可能性を示したと言えそう。それは、単純に“儲ける”こととは別の価値観を運用哲学として掲げ、それを実践し、受益者から共感されたことです。それこそがアクティブファンドが生き残るために追求しなければならない付加価値のひとつのモデルでしょう。そして、そのことをいち早く見抜き、目に見える形で示したのが今回のFOYにおけるアクティブ部門の意義だったと思います。

現在の日本の投資信託が置かれている状況や今後の可能性に関して今回のFOYも多くの示唆を与えてくれました。ぜひ投資信託業界もこの結果を良く分析し、今後の運営に生かして欲しいと思います。そうすることによって日本の投資信託業界はもっともっと良くなっていくはずですから。

最後に、今回も手弁当でFOYの運営を担った運営委員会の皆さんに、心から「ご苦労様」と言いたいと思います。

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