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2024年12月22日

iDeCoは“本当に必要な人”のための制度になる―2024年12月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績

 
SBI証券のオリジナルプランで拠出している個人型確定拠出年金(iDeCo)の12月買付(2024年11月拠出分)の定例報告です。とくに変化はないのですが、このど自民党と公明党が令和7年度税制改正大綱を発表し、iDeCoも大幅な改正がほぼ確実となりました。改善の部分と、見方を変えると改悪となる部分があり、議論を呼びそうです。個人的な印象としては、iDeCoは今後ますます“本当に必要な人”のための制度として拡充されていくのだと感じました。

SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.09889%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.096%+投資対象ETF信託報酬0.0705%程度)
「EXE-i全世界中小型株式ファンド」(0.18%+投資対象ETF信託報酬0.054%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」

ここにきて株式市場も比較的堅調に推移していることもあり、iDeCo資産の評価額は12月20日段階で累積損益率が+75.0%となり、収益率と絶対額ともに過去最高に迫る数字となっています。

さて、話題の令和7年度税制改正大綱におけるiDeCo改正の中身です。まず改善となる点では、掛金の上限が大幅に引き上げられる方向です。具体的には以下のようになり、とくに企業年金に加入していない第二号被保険者に対する大幅な拡充となります。

・第一号被保険者(個人事業主)は月75,000円(現行から月7,000円増額)
・企業年金に加入している第二号被保険者(会社員など)は月62,000円から確定給付型企業年金や企業型確定拠出年金の掛金を控除した額
・企業年金に加入していない第二号被保険者(会社員など)は月62,000円へ(現行から39,000円増額)

一方、見方によっては改悪となるのがiDeCoの給付時の税制。一般的にiDeCoは掛金が所得控除されることによる節税効果をメットとして指摘する人が多いのですが、正しくは課税繰り延べであり、給付時に繰り延べた税金を支払うことになります。ただその際、一時金で受け取れば退職所得控除が、年金で受け取ると公的年金等控除が適用されるため、結果的に大幅な節税効果が期待できます。今回の改正ではこのうち「退職所得控除の計算における勤続年数等の重複排除の特例」が縮小されます。

従来はiDeCoの一時金を受給してから5年以降に退職金をもらった場合、退職金控除が重複して使える特例がありました。具体的には、60歳でiDeCoの資産を一時金として受け取って退職所得控除を利用しても、65歳以降に勤務先から退職金を受け取れば、こちらにも退職所得控除がまるまる適用されたのです。しかし、今回の改正では特例の条件である一時金受給後の期間が10年以降に延長され、特例を利用できる対象が大幅に縮小されました。

こうした改正に対して批判もあるわけですが、私はある意味で当然だと思います。というのも、そもそも「退職所得控除の計算における勤続年数等の重複排除の特例」が不公平でした。なぜなら、退職金を何歳で支払うかは(中途退職しない限り)会社が決めることだからですです。

具体的な例を挙げましょう。例えばiDeCoに加入しておるAさんとBさんはともに65歳まで雇用を約束した企業に勤めているとします。Aさんの会社は60歳定年で退職金が支払われ、5年間は嘱託社員として雇用されることを労使で合意している。一方、Bさんの会社は定年延長を制度があり、5年延長すれば65歳で退職金が支払われます。この場合、どちらも(雇用契約の違いはあれど)65歳まで働いたのに、Aさんは勤続年数等の重複排除の特例を使えず、Bさんは使える。たまたま就職した企業の退職金制度の違いによって課税額が変わってしまいす。これは不公平です。そもそも、就業形態の違いによる老後資金の格差を是正することがiDeCoの制度趣旨でもあります。

今回の改正によって、掛金上限が大幅に拡大される一方、受給時に仕えた税制上の特例が縮小されることになります。これはiDeCoがますます“本当に必要な人のための制度”になっていくということを意味していると感じました。“本当に必要な人”とは誰か。それは、退職金や企業年金がない、もしくは極めて貧弱な自営業者・フリーランスと中小零細企業のサラリーマンです。そして、退職所得控除の枠が不足するほど十分な退職金がもらえ、企業年金もたっぷりともらえるような人は、そもそもiDeCoのような税制優遇制度で優遇すべき対象ではありません。そういう人はiDeCoではなく、それこそNISAなど万人向けの税制優遇口座を使って老後資金を作ればいいのです。なんども言いますが、勤務先や就業形態の違いによる老後資金の格差を是正することがiDeCoの制度趣旨だということを忘れてはいけません。

【ご参考】PR
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。

iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』などが優れた解説書ですが、最新の制度改正にも対応した入門書として竹川美奈子さんの『[改訂新版]一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』と大江加代さんの『最強の老後資産づくり iDeCoのトリセツ 2022年施行 法改正完全対応版』を挙げておきます。

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