2023年9月2日

日本も“ゼロ・コミッション革命”の時代に突入―SBI証券と楽天証券が売買手数料を無料化

 

SBI証券と楽天証券が国内株式売買手数料を無料化すると発表しました。


ネット証券による株式売買手数料引き下げ競争はこれまでも激しかったのですが、ついに無料に。日本の証券業界もいよいよ“ゼロ・コミッション革命”の時代に突入しました。

SBI証券は9月30日から、楽天証券は10月1日から売買手数料が無料化されます。無料コースにはSBI証券の場合は交付書類の電子化、楽天証券はSORサービス利用の同意といった適用条件がありますが、いずれも非常に低いハードルですから、口座保有者からすれば実質完全無料化と言ってよいでしょう。

これは何度も書いていることですが、株式売買手数料の無料化というのは非常に大きなインパクトがあります。というのも証券会社は株式の売買に際して証券取引所に場口銭と呼ばれる手数料を支払わなければなりません。ですから、口座保有者に課していた売買手数料を無料化すると、場口銭のコストを証券会社がすべて負担しなければならなくなります。だからこそ株式売買手数料の無料化というのは、非常に大きなサービスなのです。

それにしても、SBI証券と楽天証券というネット専業証券の2強が株式売買手数料無料化に踏み切ったことには、日本の証券業界にとっても大きな意味があります。日本もいよいよ“ゼロ・コミッション革命”の時代に突入したと言えるからです。それは証券会社の収益構造が根本的に変わることを意味します。つまり、従来のような売買手数料から、投資信託の運用を含めた資産管理業務へと収益源の中心が大きくシフトしていくということです。

こうした流れは、既に米国で起こっていました。米国では1970年代からに“ゼロ・コミッション革命”が進行しました。それを主導したのは、チャールズ・シュワブ氏が1971年に創業したチャールズ・シュワブ・コーポレーションです。チャールズ・シュワブ社は1974年に株式取引委託手数料を70%引き下げ、証券業界に衝撃を与えました。2005年には口座管理手数料を撤廃し、2019年には株式やオプション取引に係る委託手数料まで無料化します。さすがにこの時は手数料撤廃による収益力低下が嫌気され、同社の株式は13%も下落し、他のネット証券の株価も総崩れとなったほどです。

株主から心配されるほど徹底して手数料の無料化を進めたチャールズ・シュワブですが、それを可能にしたのが収益構造の転換を積極的に進めたことです。従来のような売買手数料収入ではなく、貸株や信用取引の際の金利収入、資産運用・管理手数料、自己勘定取引収入を中心とした収益構造への転換を進めたわけです。こうした“ゼロ・コミッション革命”を推し進めたチャールズ・シュワブ氏の行動と信念は、彼の自叙伝『ゼロ・コミッション革命―チャールズ・シュワブの「顧客目線」投資サービス戦略』を読めばよく分かります(これは、非常に面白い本です)。

『ゼロ・コミッション革命―チャールズ・シュワブの「顧客目線」投資サービス戦略』

今回、SBI証券と楽天証券が株式売買手数料の無料化に踏み切ったことで、日本も本格的に“ゼロ・コミッション革命”の時代に突入しました。それは、証券会社の収益構造が大きく変わることを意味するわけですが、同時にそういった変革が起こるようなマーケットの変化もあるはずです。その変化をどれだけ的確に見極め、行動できるかが証券会社の今後を左右するのでしょう。いずれにしてもいち早く行動に出たSBI証券と楽天証券は大いに評価できます。

【ご参考】
SBI証券、楽天証券ともにネットから無料で口座開設できます。⇒SBI証券楽天証券

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