2022年8月21日

公的年金補完のための私的年金奨励は世界共通―2022年8月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績

 

SBI証券で運用している個人型確定拠出年金(iDeCo)の8月の買付(7月拠出分)が約定しました。なんだかんだありましたが、ここにきて相場も回復傾向となり、評価額も大きく改善しています。ちなみに、iDeCoは公的年金を補完するために国が用意している私的年金制度です。公的年金だけで老後資金を十分に担保できなくなっているという問題は世界共通ですが、その課題に対して公的年金を補完する私的年金を奨励するというのも世界共通の解決策となっています。

SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.1085%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.058%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」

累積損益率は8月19日段階で+42.8%となりました。ここにきて株価も回復傾向となっていることで資産残高評価額は再び過去最高を更新しました。

iDeCoは公的年金を補完するために国が用意している私的年金制度ですが、その重要性は極めて高いです。なぜなら、公的年金だけで老後資金をまかなうのは難しいという現実があるからです。しかし、これはなにも日本の公的年金制度だけが脆弱ということではありません。少子高齢化は先進国共通の悩みであり、やはりどの国も公的年金制度の維持には苦心している。そういう国際比較の視点を持つのに参考になる資料を厚生労働省も発表しており、以前にブログで紹介しました。


資料にあるように、日本のほか、米国、英国、カナダ、ドイツ、スウェーデンなど主要先進国の公的年金による所得代替率は個人ベースで30~40%です。イタリヤやフランスなど所得代替率が高い国もありますが、そういった国は保険料率が25~30%超と高い(他の国の保険料率は20%未満)。公的年金による所得代替率を高めるには保険料率を上げるしかないという当たり前の結論です。

また、年金給付額を経済情勢や年金財政に合わせて自動調整する日本の「マクロ経済スライド」は、年金減額制度だとして批判されていますが、同様の仕組みはスウェーデンやドイツでも導入されています。

つまり、どの先進国も「給付の十分性」と「制度の持続可能性」が矛盾するという「年金のパラドクス」に悩まされているわけです。そして、その対策のひとつが公的年金を補完する私的年金の奨励です。これは各国共通の対策として認識されており、極端な例を挙げると、オランダやデンマークなどは公的年金の所得代替率が15~30%(その代わり保険料率も低い)しかないかわりに強制加入の私的年金を設けて高い所得代替率を実現しています。

こうした各国の公的年金事情を見てみると、日本の公的年金制度とiDeCoは、いずれも特殊なものではなく、極めて一般的な制度だということが分かります。だとするなら、やはり可能な限り活用するべきでしょう。なぜなら、それを活用しないことは世界共通の方法から逸脱することを意味し、そういう特殊なやり方の難易度は高いからです。

そして恐らく多くの日本人は、意識的かそうではないかは別にして、やはり年金制度に関する世界の潮流を認識しているのでしょう。国民年金基金連合会が8月1日に発表したiDeCoの業務状況によると6月の新規加入者数は5万5810人で加入者総数は251万4572人となりました。2017年以来のピーク水準に迫る新規加入者数となっています。


【ご参考】
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。



iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』などが優れた解説書ですが、最新の制度改正にも対応した入門書として竹川美奈子さんの『[改訂新版]一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』と大江加代さんの『最強の老後資産づくり iDeCoのトリセツ 2022年施行 法改正完全対応版』を挙げておきます。

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