2022年1月23日

指数の人気とファンドの評価―「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021」雑感

 


「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021」の結果発表・表彰式が1月16日に開催されました。新型コロナウイルス禍のため昨年に続いて今回もオンライン開催となりました。今回の結果を見て、やはりいろいろと感じたことがあったのでメモしておきたいと思います。

今回の「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021」の結果は以下のようになりました。

1位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
4位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
5位 iFree レバレッジ NASDAQ100
6位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
7位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
8位 楽天・全米株式インデックス・ファンド
9位 たわらノーロードロード先進国株式
10位 SBI・V・全米株式インデックスファンド

1位から3位は昨年とまったく同じでした。とくに1位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と2位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は得票数でも他からひとつ抜けた存在となっており、個人投資家から圧倒的な支持を集めていることが分かります。では、この二つのファンドの順位の差は何を意味するのでしょうか。

これは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がファンドの評価として「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」を上回っているということでしょうか。私にはとてもそうは思えません。なぜなら、「eMAXIS Slim」シリーズの中で「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」と本当の意味で競合する「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は6位の得票しか集めることができなかったからです。

おそらく二つのファンドの人気の差は、ファンドとしての評価の差というよりも、連動する指数の人気の差だと思います。現在の日本の個人投資家の間では、明らかに全世界株式指数の方が先進国株式(日本除く)指数よりも人気があるということです。これは3位に「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」が入っていることからもうかがえます。こちらは全世界株式指数の人気に加えてバンガードの「元祖」「本家」としてのブランド力が加わった強さです。

こうしたことを考えると、1位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と2位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」には、ファンドの評価として差は、ほとんどないといえそうです。やはりインデックスファンドの最大の付加価値はコストの安さであり、継続的に信託報酬を引き下げる実績でしょう。この点において二つのファンドは抜きんでているわけです。そして順位の差は指数の人気の差にすぎず、そこに優劣はありません。いまやFOYのトップを争うファンドは、ファンドの評価だけでなく指数の人気の差が順位を左右するほど高レベルな戦いになっているということをあらためて感じました。

さらに言うと、「eMAXIS Slim」シリーズは全世界株式インデックスファンドで圧倒的な人気を得ているのに、なぜ先進国株式インデックスファンドでは「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」に勝てないのかという問題が浮上します。そこにこそFOYの投票を通じて示された個人投資家の声が隠されています。

もうひと印象的だったのが、昨年は4位だった「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」が今回も7位に入ってトップ10の地位を維持したのに対して、昨年5位の「ひふみ投信」は今回13位と大きく順位を落としたことです。「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は受益者との信頼関係の強さを今回も見せつけました。一方、「ひふみ投信」の順位低下は、2021年の運用成績が冴えなかったことが影響したと思います。やはりアクティブファンドにとって運用成績の低迷というのは、大きなマイナスポイントになるという厳しい現実を示しています。

最後のひとつ、5位に入った「iFree レバレッジ NASDAQ100」について。FOYは、その年に急激に人気の高まったファンドが上位に入ることが少なくありません。しかし、その後も継続的に上位にランクインし続けるファンドはそれほど多くありません。その意味で、このファンドの真価が問われるのは次回のFOYからでしょう。ファンド自体は非常に面白い仕組みの商品だと思うので、要注目だとは思います。

それにしても新型コロナウイルス禍という異常事態の中で、今回も無事にFOYが開催されたことは凄いことだと思います。あらためて運営委員会の皆さんには、心の底から「ご苦労様」、そして「ありがとうございました」と言いたいと思います。

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