2022年1月17日

『Clothes and the Man: The Principles of Fine Men's Dress』―プロはみんな読んでる紳士服スタイリング虎の巻


ブログでたまにスーツなどメンズファッションについて書いているのですが、案外と反応があって驚きます。このブログの読者にも意外とメンズファッションに興味がある人がいるということでしょう。そこでちょっと面白い本を紹介しようと思います。アラン・フラッサー『Clothes and the Man: The Principles of Fine Men's Dress』です。これは非常に有名は本で、紳士服のスタイリングに関する基本文献の1冊。それこそプロはみんな読んでいる虎の巻です。

アラン・フラッサーは知る人ぞ知る米国のデザイナー・スタイリスト。シャツアパレルのスタイリストを経て自分のブランド「アラン・フラッサー」を立ち上げます。映画「ウォール街」でマイケル・ダグラスの衣装を担当したことでも有名。


アラン・フラッサーの功績でもう一つ大きいのが、アメリカン・トラディショナルをベースにブリティッシュ・クラシックも踏まえながらメンズファッション・スタイリングの歴史的アーカイブを整理し、正統な服装基準を体系的に整理したことです。それに基づいて1985年に発表されたのが本書『Clothes and the Man: The Principles of Fine Men's Dress』。文字通り“The Principles of Fine Men's Dress(正しい紳士服装原理)”というべきものです。

実際にその中身は、まさに紳士服装理論の虎の巻ともいうべきものです。「スーツ、ジャケット、トラウザーズ、コート」「ドレスシャツ」「ネックウエア」「フットウエア」「アクセサリー、サスペンダー、ベルト、ハンカチーフ、ジュエリー」「フォーマルウエア」「帽子」「クラシック・スポーツウエア」といった項目を立てて、歴史的展開を踏まえながら簡潔にして具体的にスタイリングの基本をイラストや写真で解説しています。「ワードローブ」の章では体形に応じたスタイリングの注意点や、ワードローブにそろえておくべきスーツ・ジャケット、シャツ、ネクタイの種類や素材・色柄をそれそれ具体的な本数まで含めて例示する親切さ。

歴史的背景の説明や理論だけでなく、徹底的に具体例まで示しているところが、まさに本書が“虎の巻”たるゆえんでしょう。メンズファッション・スタリングのプロは、必ず本書に目を通しているはず。そして現在も日々出版されるメンズスタイリングの入門書や解説書の種本のひとつとなっているのでした。ちなみに本書は1988年にハースト婦人画報社から『アラン・フラッサーの正統服装論』として翻訳が出ているのですが、もともと発行部数が少なかった上に、おそらく購入者が実用書として保有しているためか古書市場にはほとんど出てきません。このため一種の稀覯本となっており、古書価格は非常に高いです(Amazonのマーケットプレイスではバカげた値段がついています)。


ただ、いかにもアメリカ人らしい簡潔な文章で書かれていますから、大学入試レベルの英語力があれば原書でも十分に読めます。なので苦労して翻訳版を探すよりも原書を読んだ方が手っ取り早いです。原書なら、それこそAmazonマーケットプレイスなどで比較的安価に入手できます。私自身も古本で入手しました。

アラン・フラッサーの著書としては『Making the Man: The Insider's Guide to Buying Mens Clothes』も非常に有名で、やはりメンズスタリングの理論書としては基本文献とされています。そして2002年に刊行された大型本が『Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion』。これも紳士服の歴史的アーカイブを読み解き、正統紳士服装理論を体系化する試みでした。


男性(とくに中高年)はファッション音痴を自認する人が少なくありません。私自身も若い頃はそうでした。なぜファッションが分かららなかったのか。それは「ファッション」と「スタイル」の違いが分かっていなかったからです。「ファッション」は絵画で例えれば現代芸術、書道でいえば草書です。一方、「スタイル」は絵画でいうとデッサンなどの基礎技術、書道の楷書です。つまり、まず「スタイル」について理解していないと、それをベースに創造される「ファッション」が理解できないのです。

このことに気付いて、スタイルについて勉強するようになってからファッションに対する見方が変わりました。例えばファッション用語に「外す」というのがありますが、特徴的なアイテムなどを使ってあえて正統なスタイリングのルールから「外す」ことで個性を表現する高度な方法論です。そこに非常にセンスが必要なのですが、そもそも正統なスタイリングが分かっていないと、それこそ「形無し」のダサいスタイルになるわけです。

だから、ファッションには興味があるのだけど、どうやって勉強すれば分からない人は、まずは正統なスタイリングを知ることから始めるのが非常に大切です。その場合、今回紹介したような基本文献に目を通すというのがいちばんの近道。やはり洋服文化は欧米のものですから、本家に学ぶべきでしょう。そうすれば、とくに社会人の場合、どこに出ても恥をかかない着こなしができるようになるはずです。

ただ、ファッションやスタイリングの勉強をすると、デメリットも生じます。それは、洋服を着たり集めたりするのが楽しくなるので、次々と服や靴を買ってしまうこと。最近、私の買い物に対して妻の視線がますます厳しくなってきました。そこで「正しいスタイリングは高価な服だけでなく、それこそユニクロやAOYAMAで売っている服でも実践できるのだ」と説明しているのでした。

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