2021年9月17日

お粗末で意味不明なバランス型ファンド批判

 

株式と債券を一定割合で組み入れて運用するバランス型ファンドは、リスクを抑えた運用を目指す商品として根強い人気があります。そのバランス型ファンドに関してモーニングスターにちょっと気になる記事が載っていました。


なんとも意味不明なバランス型ファンド批判で、いやしくも投資専門メディアに載せるにしてはお粗末な内容と言わざるを得ません。

記事では、過去20年間の騰落率を比較した上で、バランス型ファンドには弱点があるとして次のように書いています。
「現在のバランス型ファンドが抱える弱点」とは、株価が下落する時に同時に下落してしまい、分散投資で期待される安定化機能が喪失してしまっている点だ。現在のバランス型ファンドは、「安定」「安定成長」「バランス」「成長」の別なく、株価が下落する時には同時に下落するという点では変わりない。株式の組入比率の差によって、下落率が変わるだけだ。この下落率の変化は、株価の上昇時における株式ファンドへの追随率の違いにも直結している。すなわち、株式の組み入れ比率が小さい「安定」型は、株価が下落する時の下落率は小さいものの、株価が上昇する時には上昇率も小さくなる。
これがまったく意味不明。実際に記事で紹介さ入れているファンドの騰落率を見ると、株価下落時にはバランス型ファンドの下落率は株式ファンドよりも小さくです。逆に株価上昇時には、やはり株式ファンドより上昇率が小さくなっています。下落率が小さく、上昇率も小さい。変動の幅が小さくなっているわけですから、これを「安定化機能」と呼ばずになんと呼ぶのでしょうか。

なぜこんな頓珍漢なことになるのか。それは、この記事におけるバランス型ファンドに対する認識が根本的に間違っているからです。記事ではバランス型ファンドの機能を「株式の値上がり益を十分に享受しつつ、株価下落時には債券が支えることで安定的に高いリターンが得られる投資手法」 と書いていますが、これがまったくの間違いです。バランス型ファンドの機能は、異なる値動きをする資産に分散投資することで「リスク」を抑制することです。

「リスク」とは「変動の不確実性」のことであり、投資において「リスクを抑える」というのは「変動の幅を小さくする」ことを意味します。その観点で見れば、バランス型ファンドは株式ファンドよりも明らかにリスクが抑えられており、立派に目的とする機能を果たしているわけです。そこにリターンの大小は関係ありません。ところが記事には次のような記述もあります。
株価が下がる時には、株式と同じように下落するくせに、株価が上昇する時には株価の上昇率に劣後するという状況は、「二兎を追うもの一兎も得ず」という、中途半端な態度がもたらす最悪の結果ではないだろうか。
ことわざまで使って「中東半端な態度がもたらす最悪の結果ではないだろうか」と得意げに書いていますが、これこそ筆者の考え違いをさらけ出した記述でしょう。「リスクを抑える」ことを目的とした商品に対して「リターンが悪い」と批判しているわけですから、わかっている人からしたらじつに恥ずかしい内容です。

ちなみに記事の冒頭で紹介されているように、確定拠出年金(DC)などではバランス型ファンドでの運用が推奨されているのには意味があります。しかし、それは記事にあるように「長期では良い運用成績に結びつく」からだけではありません。やはり「リスクを抑える」必要があるからです。

なぜDCなどではリスクを抑えた運用を心掛ける必要がるのか。それは、DCというのは運用期間に限りがあり、一定の年齢に達すれば基本的に換金されるものだからです。そこでリスクの高い運用をしていると、いざ換金のタイミングになっているのに資産は暴落しているということが起こる危険性があります。だから、例えばDCで株式ファンドと債券ファンドを個別に運用している人も、運用終了の年齢が近づいてくれば徐々に債券ファンドの比率を上げることでリスクも下げていくというのがセオリーです。そういうDC運用のセオリーすら無視していることも、やはりこの記事のダメな点でした。

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