2021年9月19日

『こんなときどうする? どうなる? Q&A 3つのNISA 徹底活用術』―制度過渡期だからこそ欲しかった1冊


竹川美奈子さんから新刊『こんなときどうする? どうなる? Q&A 3つのNISA 徹底活用術』を献本いただきました。「NISA」制度に対する簡便かつ良質な解説書です。「NISA」は現在、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」が並立し、さらに2024年からは「一般NISA」は「新NISA」へと衣替えします。このため非常に複雑な体形になっており、一般の個人投資家にとって利用のハードルが高くなりがち。竹川さんの新著は、そういった制度過渡期だからこそ欲しかった1冊となっています。

本書は2部構成で、第Ⅰ部は「3つのNISA制度のキホンと改正点」として、第1章で2024年の制度改正の内容と新制度について丁寧に解説されています。現行の「一般NISA」から改正後の「新NISA」への移行は、けっこう複雑なので、第2章で具体的な例を挙げながらの解説は助かります。現在、「一般NISA」を使っている人にとっては必読でしょう。

また、第3章で取り上げている「ジュニアNISA」は2023年で新規投資が終了する一方で、2024年からは引き出し制限が解除されます。そこで2013年まで投資した分を子供が成人するまで非課税口座として運用するためには手続きが必要になるのですが、このあたりも複数口座が並立することになり、かなり複雑な仕組みになっているので、やはり本書のような解説書をじっくりと読んで理解することが必要になるでしょう。

第Ⅱ部は「Q&Aでわかる!キホン、活用、出口」と題して、Q&A方式で制度や使い方、換金時の実際について解説されているのですが、これも非常に読みごたえがあって勉強になる。やはり資産形成というのは個々の家計の状態によって様々なケースがあるので、絶対的な解があるわけではありません。具体的なケーススタディーを繰り返すことが重要になります。

本書では、竹川さんがセミナーなどで実際に寄せられた質問をベースにQ&Aを作っているので、内容が極めて具体的かつリアルです。読んでいると、それこそ紙上で個別相談会に参加しているような気分になるほど。気なる疑問点のほとんどが網羅されていました。これは実際にセミナーなどを通じて多くの相談者と相対してきた竹川さんだからこそ書くことのできた内容でしょう。

最後の「おわりに」も短い文ですが必読です。本書はNISA制度の「徹底活用術」をうたっているのですが、それは非課税投資枠や非課税期間を最大限に使うことではないとして、次のように書いています。
制度をめいっぱい使うとか、効率的に使おう、と考える前に、まずは家計の現状把握(資産や負債、収支)や、投資する目的、運用できる期間、投資に回す金額などを整理しましょう。大事なのは、運用方針を明確にしたうえで、制度をどう使うかを決めることです。
私は常々、個人投資家は運用効率などにあまりこだわるべきではないと指摘してきました。運用効率が問われるのは、他人の金を預かって手数料を取っているプロ投資家だけです。個人投資家が運用効率にこだわるあまり、家計の実態を無視した運用を行うのは本末転倒。NISAでも同じことが言えるでしょう。NISAはあくまで制度であり手段に過ぎません。この制度を使う目的は「資産形成」です。手段と目的を混同しないこと。これこそが本当の意味での「徹底活用術」です。本書は、そういった基本的な、しかももっとも大事な考え方のスタンツが徹底されています。

だからこそ、やはり現在のような制度過渡期で、多くの人が迷いがちな時だからこそ欲しかった1冊だと感じました。

関連コンテンツ