2021年7月3日

GPIFの2020年度運用実績は過去最高の+25.15%―地に足のついた見事な運用は長期分散投資のお手本

 

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2020年度(20年4月~21年3月)の運用実績が発表されました。期間収益率は+25.15%、評価上の収益額は37兆7986億円となり、いずれも過去最高となります。これにより運用資産総額は186兆1624億円となりました。詳細は業務概況書で確認できます。


19年度は“コロナ・ショック”で収益率-5.2%、評価額上の損失8兆2831億円だったのですが、そこからのV字回復です。収益の大きさも素晴らしいのですが、それよりも見事だと思うのは、その地に足のついた運用スタイルです。まさに長期分散投資のお手本といえます。

20年度は“コロナ・ショック”からの株価回復が目覚ましく、その流れにGPIFも上手く乗ることができました。資産別収益率で見ると、国内債券が-0.68%となるも外国債券が+7.06%となり、外国株式は+59.42%、国内株式も+41.55%と大きく上昇しています。まさに国内外の株式が収益を牽引したことになります。

そして、収益率・額以上に感心させられたのが運用の手際です。「2020年度業務概況書」の「2020年度の運用を振り返って」という文章を読んで感心しました。GPIFは国内債券、外国債券、国内株式、外国株式をそれぞれ25%ずつ保有する基本ポートフォリオを採用していますが、株式が大きく上昇する中できちんとリバランスを実施してウエートを維持しています。つまり、上昇した株式を適時売却し、下落した債券を購入している。これこそ地に足の着いた長期分散投資のお手本です。運用成績の好調さ以上に、こうした健全な運用が行われていることが大いに評価できるでしょう。

もうひとつ注目は、インカムゲイン(利子・配当収入)が3兆128億円もあるということです。日本の公的年金制度は賦課方式ですから、保険料収入が年金給付の原資に充てられ、不足分をGPIFの資金から補充する仕組みです。つまりGPIFの資金は年金特別会計の調整資金です。そして20年度のGPIFから年金特別会計への納付は寄託金の償還も合わせて2兆7525億円でしたから、インカムゲインだけで賄えました。つまり、20年度は元本をまったく取り崩す必要がなかったということです。このようにGPIFの運用によって年金制度の持続性が高まるわけです。

情報公開の丁寧さも一段と洗練されてきました。「2020年度業務概況書」は日本の公的年金制度の仕組みとGPIFの役割についても分かりやすく紹介されており、一読の価値があります。あいかわらず日本の公的年金制度に対して誤った解釈を吹聴するメディアや自称“専門家”が存在しますが、それらの言説のせいで公的年金制度に対して不安を感じる人は、ぜひ「2020年度業務概況書」を読んで欲しい。いろいろと納得も得心もできる部分があるはずです。

GPIFには、今後も地に足のついた運用を続けると同時に、丁寧な情報発信を心掛けて欲しいと思います。そうすることによって、国民の公的年金に対する理解が深まれば、それこそが制度の持続性を支える基盤となるからです。

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