2021年5月20日

狼狽売りするような仮想通貨投資家は覚悟が足りない

 

ビットコインなど仮想通貨が暴落しています。5月19日段階でビットコインは一時、30%を超える下落となり、他の仮想通貨はそれ以上の暴落に。まさに「仮想通貨バブル崩壊の様相」です。


ただ、こうした相場の動きを見ていると改めて現在の多くの仮想通貨投資家には“覚悟”が足りないのではないか感じてしまいます。

今回の仮想通貨暴落の要因として、いくつかの悪材料が重なったことがあります。報道にもあるように、テスラが準備資産の一部として仮想通貨を購入していたのですが、CEOのイーロン・マスク氏がさっさと一部保有を売却した途端、テスラもが仮想通貨での支払い受け入れを止めると発表するなどマッチ・ポンプな動きが嫌気された面もあるでしょう。

ただ、それ以上に悪材料となっているのは、いよいよ各国の金融当局が本格的に仮想通貨排除の動きを強めていることだと思います。報道にあるように中国人民銀行が仮想通貨を決済手段として認めない方針を示しました。そのほか、インドも仮想通貨の禁止を検討していることが再三報じられています。やはり仮想通貨にとって最大のリスク要因は、「国家」による規制だということがだんだん明瞭になってきました。

ただ、国家が規制を強化しそうだからといって狼狽売りしてしまう現在の仮想通貨投資家は、ちょっと覚悟が足りないと思います。そもそも仮想通貨はなぜ誕生したのでしょうか。それは、法定通貨のように国家によって管理されことなく、自由で自立した経済圏を作ることが目的だったはずです。そしてブロックチェーンという仮想通貨を支える技術も、国家などによる中央集権的な情報管理とは違う分散型ネットワークの可能性を希求していたはずです。つまり、仮想通貨というのは、はじめから“アンチ国家”“アンチ中央集権”という思想が内包されていたわけです。

だから、仮想通貨保有者にとって、国家が仮想通貨を規制することは「想定の範囲内」であるべきなのです。そもそもが“アンチ国家”なのですから、それを国家が潰しにかかるのは当たり前でしょう。そういう当たり前のことを考えずに狼狽売りしているようでは、そもそも「国家や中央集権システムに対抗する」という“覚悟”が足りなかったということです。

だから、いまもし本気で仮想通貨の可能性を信じているなら、やるべきことは狼狽売りすることではないはず。がっちりと保有を続けたうえで、仮想通貨が本当に通貨として“流通”するように、現実の社会インフラへの浸透を図る「運動」をするべきです。その結果、仮想通貨保有者が損しても構わないはず。なぜなら、それは仮想通貨を通じた「理想」を実現するための必要経費にすぎないのですから。

ちなみに、仮想通貨のように電子情報に基づく通貨発行というのは、国家の側でも準備を進めており、既に中国はデジタル人民元の発行を準備しています。こうした動きは今後、他の国にも広がるかもしれません。こちらは法定通貨ですから、国家権力によって実際の流通も担保されるはず。さて、法定デジタル通貨が流通した時、現在の仮想通貨の“交換価値”がどうなるか。その時こそ仮想通貨の真価が試されるような気がします。

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