2021年4月5日

ニッセイAMがアクティブファンドの信託報酬を引き下げ―アクティブファンドも既存ファンドの信託報酬を引き下げる時代に

 

ニッセイアセットマネジメントが日本株に投資するアクティブファンド「ニッセイ日本株ファンド」の信託報酬を4月1日から引き下げました。


これまでインデックスファンドの低コスト化をリードしてきたニッセイAMが、ついにアクティブファンドの信託報酬も引き下げにも踏み切ったわけです。しかも新規設定ではなく既存ファンドの信託報酬を引き下げる手法を採用したことは極めて大きな意味があります。

ニッセイAMの「ニッセイ日本株ファンド」の信託報酬は、これまで税抜1.0%でしたが、これが税抜0.8%に引き下げられます。モーニングスターの記事によると、純資産残高が1000億円を超えたことが信託報酬引き下げの理由のひとつとみられます。

今回のニッセイAMの決断は、日本の投資信託業界にとって非常に意味のあることでしょう。近年、インデックスファンドの低コスト化が急速に進む一方で、アクティブファンドに関しては依然として高コストなファンドが粗製乱造されるという状況が続いていました。これに対してニッセイAMは一石を投じたわけです。

しかも、ファンドの新規設定によって低コスト化を実現するのではなく、純資産残高が増加した既存ファンドの信託報酬を引き下げるという方法を採用したことは極めて高く評価できます。なぜなら、既にファンドを保有している受益者を切り捨てるのではなく、コスト低下のメリットを還元する方法だからです。とにかく日本の運用業界というのはファンドの新規購入者ばかり優遇し、既存の受益者を軽視しがちだっただけに、やはりニッセイAMの姿勢は特筆に値するでしょう。

しかも「ニッセイ日本株ファンド」は一般販売のほかに、確定拠出年金(DC)にも採用されています。DCでは、加入者は運営管理金融機関のプランにラインナップされたファンドしか買えませんから、簡単にファンドを乗り換えることができません。このためDC採用ファンドの信託報酬引き下げというのは、受益者にとって極めて意義の大きいことです。この点でもニッセイAMの決断は、どれだけ評価しても評価し過ぎることはないでしょう。

さすはニッセイAMは、これまでもインデックスファンド「<購入・換金手数料なし>」シリーズで継続的に信託報酬を引き下げるなどファンドの受益者を重視する運営を実践してきただけのことはあります。こうした姿勢がアクティブファンドにまで拡大されたことで、同社の受益者重視の姿勢が一段と鮮明になったと思います。

今回のニッセイAMの英断によって、日本の投資信託は新しい段階に入る可能性があります。インデックスファンドだけでなく、ついにアクティブファンドも継続的に信託報酬が引き下げられる時代が到来する可能性が出てきました。こうした試みは、これまで一部の独立系投信会社が実践してきましたが、ついに大手の一角が動いた意味は大きい。

ファンドの規模が成長すれば、それによるコスト低減効果をまずは受益者に還元するというのは投資信託にとって当たり前の姿です。この当たり前が日本ではおざなりにされてきたのですが、ようやく正常化への道筋が見えてきたと言えます。その先陣を切ったニッセイAMの功績は極めて大きいと言えるでしょう。

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