2021年4月29日

足の速い資金にご用心―「グローバル3倍3分法ファンド」からの資金流出が止まらない

 

2019年に大人気となった「グローバル3倍3分法ファンド」ですか、20年5月から資金流出が止まらない状態になっています。


あいもかわらず日本の投資信託によくある光景。こういうことがあるから、やはり長期投資を志向している個人投資家にとっては、「足の速い資金にご用心」ということになるわけです。

モーニングスターの記事にもあるように、「グローバル3倍3分法ファンド」はユニークな債券レバレッジ戦略を組み入れたバランス型パッシブファンドとして設定当初から大いに注目を集めました。資金も急速に集まり、シリーズ全体の純資産残高はピーク時に6763億円に達したほどです。一部の投信ブロガーからの評価も高く、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」では7位にランクインしました。

ところがコロナ・ショックによる暴落以降、資金が急激に流出することになり、いまや純資産残高は3000億円台と半減しています。コロナ・ショック後も運用成績が低迷しているというならファンドに見切りをつける受益者が増えるのもわかるのですが、皮肉なことで運用成績自体は順調に回復しており、最近のパフォーマンスはS&P500と比較しても遜色ありません。にも関わらず資金流出が続いているわけです。

こういう状態を見ると、どうしても「受益者の質」ということを考えざるを得ません。「グローバル3倍3分法ファンド」は信託期間が無制限ですから、長期運用を前提としたファンドです。ところが、短期間で資金が流出してしまうということは、受益者の期待とファンドの目的の間に乖離があったわけです。もっと言うと、本当に納得も得心もしてファンドを購入した受益者が少なかったということです。それが「受益者の質」ということです。

こうした問題は、日本の投資信託においてこれまで何度も繰り返されてきた光景です。一時的に注目を集めたファンドに資金が急激に集まり、ちょっとショックがあると急速に資金が流出する。じつは、こうした急激な資金流出がファンドにとってはもっとも打撃が大きい。「グローバル3倍3分法ファンド」はパッシブ運用のファンドなのでまだましですが、アクティブファンドで同様のことが起こると目も当てられません。ファンドは換金のために保有資産の売却に忙殺され、まともな運用などできなくなるからです。

だから、長期運用を目指している投資家は、急激に資金を集めているファンドには注意する必要があります。急激に集まった“足の速い資金”は、やはり急激に流出する可能性があるからです。そして、その原因の一端は、納得も得心もせずにファンドを購入してしまう投資家にあります。結局、日本の投資信託市場が成熟するためには、良質なファンドが増えることと同時に「受益者の質」が高まることも欠かせないということでしょう。

モーニングスターの記事は「一時期は、時代の寵児のようにもてはやされた「グローバル3倍3分法ファンド」が、人気の面では大きな逆風を受けているのには、改めて、日本の投資信託市場の現状に対して考えさせられる要素があるように思う」と指摘していますが、まったくその通りなわけです。

ちなみに「FOY2019」の公式サイトには「グローバル3倍3分法ファンド」に投票した投信ブロガーのコメントが紹介されています。資金流出な止まらない状態の中でこれを読み返すと、やはりなんとも考えさせられるものがあります。

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