2021年2月28日

「ひふみ」シリーズにバランス型アクティブファンドが登場―債券投資で結果を出せるか要注目

 


「ひふみ投信」「ひふみワールド」などを運用するレオス・キャピタルワークスが「ひふみ」シリーズの新商品としてバランス型アクティブファンド「ひふみらいと」「まるごとひふみ」を新規設定します(設定日は3月30日)。


いずれも株式と債券を組み合わせたバランス型アクティブファンドとなります。レオスとして債券投資にも参入するわけですが、最近は債券投資の難易度が極めて高くなっているだけに、はたしてどれだけの結果を出せるか要注目でしょう。

「ひふみらいと」は株式10%(ひふみ投信マザーファンド5%、ひふみワールド5%)、債券90%(ひふみグローバル債券マザーファンド)の組み入れとなり、「まるごとひふみ」は株式の比率が15%、50%、100%の3タイプが用意されています。今回のバランスファンド設定のために、新たに国内外債券に投資する「ひふみグローバル債券マザーファンド」が設定されたほか、「ひふみワールドファンドFOFs用(適格機関投資家専用)」も用意されました。このためファンド・オブ・ファンズ(FOFs)形式での運用となります。また、モーニングスターの報道によると外貨建て債券は基本的に為替ヘッジするそうです。

信託報酬(税抜)は「ひふみらいと」0.5%、「まるごとひふみ15」0.6%、「まるごとひふみ50」0.85%、「まるごとひふみ100」1.2%となります。ただし、FOFsなので投資対象ファンドの費用負担も生じるため、実質的なコスト負担(税抜)は「ひふみらいと」0.502%程度、「まるごとひふみ15」0.6024%程度、「まるごとひふみ50」0.858%程度、「まるごとひふみ100」1.216%程度とのことです。

今回のバランス型アクティブファンドの設定によって、レオスとしてさらに幅広い階層に商品を訴求していこうという狙いがあるようです。モーニングスターはレオスの藤野英人社長の次のような発言を伝えています。
20019年6月頃にあった『老後2000万円問題』が社会的に大きな問題となったことで、いわゆる有識者、政治家、そして、メディアが意外と金融リテラシーが低いことがわかった。投資に対する理解が進んでおらず、投資行動をとる人も少ない。われわれは株式運用の専門家として成功することはできるだろうが、会社として成功したとしても、株式運用の商品だけでは、せいぜい3兆円~5兆円という資産規模の会社にすぎない。国内の個人金融資産2000兆円、うち、預貯金に1000兆円も眠っているという現実をみれば、今後、投資をする人・しない人の間の資産格差は大きくなる一方だ。そのことに何もしないでいていいのかという思いが強まった。
確かに時価総額だけを見ても現在市場に流通している金融商品のうち債券は圧倒的なボリュームを占めます。また、投資期間を長く確保できる若年層・壮年層なら株式だけの運用でもボラティリティに耐えることができるでしょうが、リタイアを控えた中高年層やシニア層にとっては、もう少しボラティリティを抑えた運用への要望があるのも事実。こうしたニーズを取り込む商品として「『シンプルでプレーンなバランスファンドが一番ふさわしい』という結論に至った」とのことです。

やはり最大の注目点は、これまで株式投資で良好な成果を上げ続けてきたレオスが、はたして債券投資でも結果を出せるかということでしょう。というのも近年、債券は世界的な金融緩和が続き、運用の難易度が高まっているからです。債券投資というのは基本的に金利に対して投資することですが、現在の金利水準は十分なリターンをもたらすレベルにない可能性があります。それは言い換えると債券価格が極めて高値圏で推移しているわけですから、値下がりのリスクが大きくなっているとも言えます。リスクとリターンのバランスが危うくなっているわけです。

一方、こうした債券投資の環境が厳しいことが、かえってアクティブ運用にとって勝機となるというのがレオスの見立てのようです。債券運用を担当するレオスの福室光生氏は、記者会見で次のように述べています。
現在、各国の中央銀行による国債等の買い上げによって、既に投資には値しないといえるほどに債券価格が値上がりした国債は少なくない。そのような魅力的ではない債券を除外するだけでも債券インデックスを上回るパフォーマンスが期待できる。今後も国やセクターのアロケーションや投資年限の調整などによって、アクティブファンドとしての特性を出していきたい。
こうした戦略が成功するかどうかが焦点になるでしょう。こうした戦略は多くのアクティブファンドが考えることですが、実際に成功している例は少ない印象があるので、目論見通りに事が進むのか気になるところです。

また、コスト水準についても判断の難しいところです。各ファンドともアクティブファンドとしては比較的低水準な信託報酬に抑えられていることは大いに評価できるのですが、債券はもともと利ざやが薄い商品なので、債券ファンドは株式ファンド以上に信託報酬の負担がファンドのリターンに与える悪影響が大きくなりがち。このあたりの課題をどのようにクリアするつもりなのか注目です。

また、コストに関連する問題として、外国株式に投資する部分がなぜ既存の「ひふみワールドマザーファンド」を使うのではなく、別個に「ひふみワールドファンドFOFs用(適格機関投資家専用)」を用意し、FOFs形式で運用することにしたのかという点も気になります。おそらくテクニカルな理由があると思うのですが、できればこのあたりの説明も欲しいところです。

最近、やや人気がなくなっているバランス型ファンドですが、とくに株式+債券という組み合わせは国際分散投資における王道です。そういったジャンルに「ひふみ」シリーズが参入したことで、個人投資家の選択肢が増えることは良いことでしょう。ぜひ「ひふみらいと」「まるごとひふみ」でも“顔の見える運用”を実践して欲しい。大いに関心を持ってウオッチしていきたいと思います。

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