2020年8月24日

最強の老後資金対策は夫が家事育児をすること



いわゆる“老後資金2000万円問題”が話題になるなど、現代の現役世代にとってはリタイア後の経済問題というのは大きな関心事です。この問題に関してユニークな視点からの解決策を紹介する記事がありました。

正社員かつ異業種 共働き夫婦は「リスク分散」で(「日本経済新聞」電子版)

FPの山崎俊輔さんのコラムですが、なるほど夫婦共働きは、やはり最強の老後資金対策なのです。そして、その大前提は“夫が家事育児をすること”なのです。

共働き、いわゆる“二馬力”は資産形成でも最強だというのは以前から指摘されていたことで、山崎さんのコラムも基本的にこのことを再確認しているのですが、とくに興味深いのが老後資金の問題です。夫婦がともに正社員としては定年まで働けば、老後資金の問題はほぼ解決するとして次のように書いています。
正社員であれば「退職金ふたり分」「厚生年金ふたり分」を老後の財産として生活を送ることができます。これは専業主婦モデルと比べて、年金収入で年80万~100万円、退職金で500万~2000万円くらいの上積みになる可能性があります。
これは昨年の金融庁報告書で話題となった「老後に2000万円」も楽々解消できるほどのインパクトがあります。
じつに単純な話ですが、金融庁の報告で「老後に2000万円必要」と指摘されたモデル世帯は妻が専業主婦で、国民年金しか受給できません。ところが夫婦ともに正社員なら、ともに厚生年金を終身で受給できます。さらに退職金も二人がもらえば、金額の多寡は別にして老後のキャッシュフローは金融庁報告のモデル世帯とは別次元となるわけです。

そして共働きを続けるために必要なのが家事育児の分担。少なくとも年収比例に相当するレベルまでに夫婦で家事を分担すべきだと指摘しています。これもよくよく考えれば当然のことでしょう。つまり、最強の老後資金対策は“夫が家事育児をすること”ということです。

とはいえ、山崎さんが提唱するような「夫婦ともに正社員を続ける」というのは、それほど簡単なことではないという現実もあります。なぜなら、日本では依然として正社員に対して過大な労働を要求する企業が少なくないからです。家事育児の分担と言っても、夫婦ともに仕事が忙しくなれば、分担しようにも物理的時間が不足する場合も少なくない。1日は24時間しかありませんから。まして子供がいれば、そのハードルはさらに高まります。

結局、日本の正社員制度というのはいまだに配偶者が全面的に家事育児を負担することで初めて可能になる労働形態を残している。その意味で“働き方改革”が進まない限り、“夫婦ともに正社員で定年まで働く”というのは一般大衆にとっては絵に描いた餅です。言い換えると、政府は国民の老後資金対策としても“働き方改革”に取り組む必要があるのかもしれません。

そうした現実とのギャップを踏まえると、記事にあるような「共働きのポートフォリオ」は理想論にすぎないのでしょうか。もちろんそうではありません。やはりかなりの現実的な有効性があると思う。それは、たとえ夫婦の片方が正社員でなくでもです。今年5月、年金制度改正法が成立しました。これにより厚生年金の加入対象者が段階的に拡大され、2024年には従業員50人以上の企業は給与月額8.8万円以上、週労働時間20時間以上の従業員に対して厚生年金への加入が義務付けられます。これにより夫婦ともに正社員でなくとも、ともに厚生年金を受給できる道が大きく開かれました。

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました(厚生労働省)

これなら夫婦の片方が正社員、もう片方はパートタイマーといった働き方でも、頑張って働けば夫婦ともに老後は厚生年金を受給することが可能になります。「共働きは最強の老後資金対策」という戦略が一気に現実的になったのです。その意味で、やはり厚生年金の適用拡大というのは年金制度論における“絶対正義”なわけです。

そしてここで冒頭の話題に戻ります。正社員でなくとも夫婦共働きが最強の老後資金対策だとすると、やはりそれを実行するためには夫の家事分担が欠かせません。やはり最強の老後資金対策は“夫が家事育児をすること”。奥さんにパートタイマーでもいいから厚生年金に加入できるだけ働いてもらうことなのです。

ちなみに我が家は夫婦ともに正社員なので、家事も分担しています。どの家事を担当するかを明確には決めておらず、できるときにできることを双方がやるパターンが多いのですが、家事も種類によって得手不得手があるので、洗濯は妻が、料理は私がやることが多いです。最近、妻が「手荒れが悪化したので、もう食器洗いはしない!」と宣言しました。そのため、食器洗いは完全に私が専従となりました。これも我が家の老後資金対策なのです。

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