2020年7月16日

分かっている人は既に行動している―金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」



金融庁はこのほど「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」を発表しました。

「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」(金融庁)

これによると、30代から40代を中心に「つみたてNISA」の利用が確実に広がっていることをうかがわせます。こうしたデータを見て改めて感じるのは“分かっている人は既に行動している”ということです。

今回の金融庁の調査報告に対して既にいくつかのメディアや専門家が分析を発表しています。

「つみたてNISA」口座数・買付額の増加続く、買付額は1年前比2.8倍―金融庁調査(20年3月末時点)(モーニングスター)

30代、40代の活用が進むつみたてNISA(ニッセイ基礎研究所)

これら分析も示すように、やはり印象的なのが30~40代の活用が着実に進んでいることでしょう。この点に関してニッセイ基礎研究所の前山裕亮准主任研究員は「制度自体が2年目に入って周知されてきたことに加えて、やはり2019年6月の「年金2,000万円不足」問題によって老後の生活資金確保や資産運用に対する関心が高まったことが影響したと思われる」と分析しています。

「年金2000万円論」がどれだけ妥当性をもっているのかは議論の分かれるところですが、少なくとも日本の年金制度は「公助」「共助」「自助」の組み合わせが大前提となっているという厳しくも当たり前の現実を人々に突き付けた点で意味があったのでしょう。そして、そうした現実に気付いた人は、既に老後に向けた資産形成のために行動しているということです。

一方、こうしたデータを見ると新たな懸念も生じます。それは今後、問題に気付いて行動した人と、そうでない人との間で大きな経済格差が生じるであろうことです。高齢者の経済格差というのは、もはや当事者の努力では解決できません。本人にそのための人的資本と、なにより“時間”が残されていないからです。そう考えると、NISAのような制度のさらなる普及というのは、極めて大きな意味があるわけです。そのための情報発信や啓発活動の必要性は依然として大きいと言えそうです。

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