2020年7月19日

“インデックスファンドの時代”に求められる金融機関の体質改善



三菱アセット・ブレインズの調べによると、今年1~6月はパッシブ運用の投信(上場投資信託を除く)に購入と解約などの差し引きで約1兆1670億円の資金が流入したそうです。

「指数連動型」投信に1兆円超 若年層が流入、1~6月最高(日本経済新聞)

これは前年同期の約2倍の規模で、半期ベースで過去最高を更新しました。一方、アクティブ運用の投信は約750億円の流出に。いよいよ日本でも“インデックスファンドの時代”が始まろうとしているのかもしれません。そうなるとますます気になるのが金融機関のあり方です。恐らく今後、“インデックスファンドの時代”に適応するために金融機関の体質改善が重要なテーマになるような気がします。

今回の“コロナ・ショック”で世界的に株価は大幅下落したわけですが、皮肉なことにこの暴落が若年層の間で「つみたてNISA」など非課税口座を活用して投資をスタートさせるきっかけになったようです。その際に選ばれたのがコストの低いインデックスファンドでした。さらに若年層の多くは積立投資を始めています。

日経新聞の記事によると「ネット証券大手5社の新規口座は3~5月に約69万件と直前の3カ月の約1.6倍に急増」「一定の条件下で売却益や配当金に税金がかからない「少額投資非課税制度(NISA)」の新規口座も5社合計で4月に約11万件と、前年同月の2.8倍」「ネット5社で毎月一定額を購入する「積み立て投資」をする投資家は6月末で125万人と半年前に比べて35%増。月間の積立額は約470億円にのぼる」とのことです。

かつてインデックス投資や積立投資はともに極めてマイナーな存在でした。ところがここにきて若者を中心に少しづつですが、確実に普及しつつあることを感じさせます。そして、これだけの口座数と資金流入となれば、もはや金融機関にとってもインデックスファンドや積立投資というのは無視できない市場と認識せざるを得ないでしょう。それだけで日本の投資業界に大きな地殻変動を起こす可能性があります。

なにより金融機関の多くは体質改善に迫られるでしょう。なぜなら、インデックスファンドは手数料収入が極めて小さいからです。例えば現在はインデックスファンドの信託報酬が0.1%前後にまで低下しています。すると1兆円の資金流入があったとしても、金融機関が得る手数料収入はわずか10億円程度。しかも、これを運用会社、信託銀行、販売会社の3者で分け合うことになります。逆にアクティブファンドの信託報酬は1.5%程度ですから、750億円流出しただけで11億円以上の減益となります。

つまり、極めて低コストでも採算を維持して運用を継続できるような企業体質が“インデックスファンドの時代”における金融機関には求められるわけです。そういったローコストオペレーションが実現されてこそ初めてインデックスファンドは金融商品の主役となり得るでしょう。なぜなら、採算性のともなわない商品には持続性がないからです。

インデックス投資にとってファンドが持続的に運用されるというのは極めて重要なことです。だから、日本の金融機関にはぜひ大胆な体質改善に挑戦して欲しいと思います。例えば機械化・自動化なども有望でしょう。運用の世界で機械化というとすぐにロボアドバイザーやAIによるアクティブ運用などが注目されるのですが、案外とパッシブ運用の方が全面的な機械化に向いているのでは。ファンドの統合などによる運用本数の削減による効率化なども不可欠です。

そうやって金融機関が低コストなインデックスファンドの運用でもきちんと利益を確保できるような体質になってこそ、本当の意味でインデックス投資家と金融機関は“ウィン・ウィン”の関係になれるはずです。その意味で今後はインデックスファンドによる“金融商品の改革”から、パッシブ運用を持続できる“企業体質の改革”へと焦点が移っていくような気がします。

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