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2020年7月25日

ESGがテーマのアクティブファンドが人気ですが…―いずれインデックスファンドが自然とESGファンドになるよ



最近、企業の「ESG(環境・社会・ガバナンス)」への取り組みを投資判断の基準に置く「ESG投資」への注目が高まっています。このためESGに注目するテーマ型アクティブファンドが非常な人気になっているようです。

「未来の世界(ESG)」設定額3800億円超、設定日残高「ノムラ 日本株戦略」以来20年ぶり高水準(モーニングスター)
野村アセット、ESGファンドへの関心高まる中で「循環経済関連株ファンド」を8月24日設定(同)

さすが大手運用会社は機敏。しかもアセットマネジメントOneの「未来の世界(ESG)」は、いきなり3800億円もの資金を集めてしまうのですから驚きです(“「ノムラ 日本株戦略」以来”という惹句は、いささかの微苦笑を誘いますが)。このように個人投資家の注目も熱いESGファンドですが、インデックス投資家の観点からはどのように見ればいいのでしょうか。

ESG投資とは、企業の価値を測る材料としてキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)などへの取り組みといった非財務情報も考慮して投資することです。これは元々、2006年に国連のアナン事務総長が機関投資家に対してESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI=Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけです。その直後にリーマン・ショックが起こり、短期的な利益追求に対する批判が高まったこともあってPRIに署名する機関投資家が増加するなど運用業界の大きな潮流になりました。

とくにESG投資に積極的なのが年金基金などです。なぜ年金基金がESG投資を重視するのかに関しては、世界最大の年金基金・機関投資家である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が次のように分かりやすく説明しています(ESG投資(GPIF))。
GPIFのように投資額が大きく、資本市場全体に幅広く分散して運用する投資家は「ユニバーサル・オーナー」と呼ばれます。また、GPIFが運用する年金積立金は、将来の現役世代の負担が大きくなりすぎないように使われるものです。(詳しくは「年金財政における積立金の役割」を参照)。このように「ユニバーサル・オーナー」かつ「世代をまたぐ投資家」という特性を持つGPIFが、長期にわたって安定した収益を獲得するためには、投資先の個々の企業の価値が持続的に高まり、ひいては資本市場全体が持続的・安定的に成長することが重要です。そして、資本市場は長期で見ると環境問題や社会問題の影響から逃れられないので、こうした問題が資本市場に与える負の影響を減らすことが、投資リターンを持続的に追求するうえでは不可欠といえます。
このように注目が高まるESG投資ですから、ESGをテーマにしたアクティブファンドが登場し、大きな資金を集めるというのは日本の投資業界によくあるパターン。いかにも有望そうですから。ではインデックス投資家の立場から、ESG投資の潮流をどのように考えればいいのでしょうか。私は、とくに慌てる必要はないと考えています。

そもそもESGは企業にとって避けられない方向性です。なぜなら、GPIFに代表されるような巨大機関投資家・年金基金がESG重視の姿勢を強めるということは、あらゆる企業にとってESGを重視しなければその企業の株式には今後、大きな資金流入が期待できないことを意味します。だからすべての企業はますますESG重視の企業運営に舵を切っていくでしょう。そして、恐らくESGを尊重する企業には実際に資金が流れていき、株価も上昇するはずです。

するとインデックスファンドはどうなるか。ESGを尊重する企業の時価総額が増加していけば、恐らくインデックスファンドの組み入れ銘柄もESGを重視する企業で占められるようになるはずです。ESG重視の流れが強まれば強まるほど、インデックスファンドもまた自然とESGファンドになっていくわけです。それはある意味で「責任投資原則」の提唱によって目指した世界でもあります。

こうしたことを考えると、ESGをテーマにするアクティブファンドの将来というのは、なかなか興味深いものがあります。ESGを基準にした銘柄選択が成功すればするほど、その銘柄の株式市場における時価総額のウエートは高まりますから、それはインデックスの中で再現されていきます。10年後、20年後のESGアクティブファンドのポートフォリオは、インデックスファンドにどんどんと近づいていくのかもしれません。

そこで問題になるのはコストです。確かにESGアクティブファンドは期待できるESG銘柄を先回りして組み入れることができますが、それによって獲得したリターンは、インデックスファンドとのコスト差を超えることができるでしょうか。そこがESGをテーマにするアクティブファンドの存在意義が問われるポイントになるのではないでしょうか。ちなみに今回話題になったアセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式『愛称:未来の世界(ESG)』」の信託報酬(税込)は1.85%。野村アセットマネジメントの「野村ブラックロック循環経済関連株投信」の信託報酬(税込)は1.83%です。

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