2020年4月14日

パンデミックでも株価が下げ渋ることに感じる“嫌な予感”



日本でも新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されてから間もなく1週間です。あいかわらず欧米を中心に酷い状態が続いており、日本もジワジワと感染者数と感染死者数が増加しています。感染拡大を防ぐために世界的に外出自粛などソーシャルディスタンディング(社会的距離)対策が実施され、生産・流通・消費のいずれもが大きなダメージを受けています。このままでは世界経済への悪影響も甚大だとというのは素人でも感じることですが、一方で奇妙なことが起こっているように感じます。世界の株式市場が思いのほか下がっていないことです。パンデミックでも株価が下げ渋る状況を見て、なんとも“嫌な予感”を持ってしまいました。

株価というのは実体経済の先行指数的要素があります。ところが現在の株価水準を見ると、あくまで個人的な印象ですが、どうも新型コロナウイルスのパンデミックによる今後の経済への悪影響を十分に織り込んでいるとは思えません(もちろん、この後に2番底、3番底を探る急落があるのかもしれませんが)。何かもっと別の材料を織り込んでいるのではないかという気がするのです。それは、パンデミック収束後のインフレリスクではないでしょうか。

現在、パンデミック対策によって世界各地でロックダウン(都市封鎖)や企業活動の自粛要請などが行われことで、経済活動が停止し、失業率なども急速に高まっています。このため世界各国が国民への現金給付など大胆な経済対策を実施しようとしています。ただ、問題はその財源でしょう。通常ならば増税などで財源をまかなうのでしょうが、現在の経済危機は経済活動全体の停滞・収縮による国民総体での所得減少ですから、増税しようにも担税力自体が不足するはずです。

そうなると、各国とも国債を大量発行して資金を調達するか、それこそお札自体を刷って配るしかない。新型コロナ問題への経済対策として、まさに異次元の金融緩和と財政拡大が同時に実施される可能性があります。物価のメカニズムには諸説ありますが、もしマネタリストの言うように物価が貨幣現象なら、これから起こるであろう空前絶後の金融緩和と財政拡大でインフレになる可能性が高いわけです。

もちろん物価は貨幣現象でなく需給バランスによって決定されるという立場もあります。しかし、ことらも先行き不安要素が大きい。パンデミックの影響であらゆる商品のグローバルサプライチェーンが分断され、供給力不足に陥るという懸念があるからです。実際、すでにマスクなどは供給力不足から大幅な値上がりとなっています。おなじことが他の物品で起こらないという保証はありません。そして、過去の歴史を見ると急激なインフレの多くは自然災害や戦争など天変地異による供給能力の棄損から起こっているのです。

こうしたことを考えると、もしかしたら現在の株式市場は将来のインフレリスクを織り込むことで下げ渋っているのかもしれません。なぜなら、あらゆる資産カテゴリーの中で最もインフレ耐性があるのが株式だからです(逆に最もインフレに弱いのは現金)。もちろん相場のことはできませんから、あくまで個人的な印象に基づく見立てにすぎず、たんなる取り越し苦労に終わるかもしれません。しかし、じつに“嫌な予感”を抱かずにはいられないのです。

この“嫌な予感”に対して一人の個人投資家としてどう処するべきなのでしょうか。やはりそれは資産運用の基本原則に立ち返ることしかなさそうです。それは“資産運用というのは基本的にインフレ対策として行うものだ”という原則です。そして資産運用の根本目的がインフレ対策なら、やはり現在のような経済情勢下でも資産ポートフォリオの一部を株式に充てておくことが重要になるでしょう。それどころか、いまこそ株式を保有していなければならないのではないかという感じが強まっています。

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