2020年4月12日

休日はゆったりと靴磨き―愛用の革靴ラインアップを紹介



新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令し、休日も近所を散歩するぐらいで、すっかり外出自粛モードに入りました。どうしてもストレスがたまるので、気晴らしに靴磨きをしています。どういうわけか靴磨きをしていると気持ちがゆったりとする。ある人が言っていましたが、男にとって靴磨きは自分磨きなのです。日々履いている革靴が奇麗になったのでじつに気分が良い。せっかくの機会ですから現在愛用している革靴のラインアップを紹介しようと思いました。ちょっとした革靴レビュー記事です。

愛用の革靴でいまもっとも気に入っているのが、最近買ったトリッカーズのカントリーブーツ「ストウ」です。



トリッカーズはロイヤルワラント(王室御用達)にもなっている英国の名門靴メーカー。とくにカントリーブーツは定番中の定番です。最大の特徴は、現在でも1人の職人が1足ずつ全工程を担って組み立てるベンチメード方式で製造されていること。まさに職人の技が詰め込まれた靴です。そして360度グッドイヤーウェルト製法によるダブルソールという仕様はじつに堅牢。カントリーブーツは元々、英国紳士が狩猟などの際に履いた靴だからです。それでいてウイングチップのフルブローグというデザインは、エレガントさを残していてじつにかっこいい。ちなみにトリッカーズのカントリーブーツは同じデザインで「ストウ」と「モールトン」があり、使われているアッパーの革が違います。ストウは通常のカーフレザーですが、モールトンは防水性や耐久性を高めたレザーが使われています。その代わり、モールトンの方が少し革が固く、足に馴染むのに時間がかかる。ストウはそこまで硬くはありません。

これは履いているだけで、とにかく歩きたくなる靴です。いまでは休日に近所を散歩するときに欠かさず履いています。これからどんどんと足に馴染んでいくでしょうから、履き心地がさらに良くなっていくことに期待が膨らみました。オフタイムだけでなく、最近は仕事に行くときも愛用しています(私の職場は比較的カジュアルな服装が許されています)。さすがにスーツスタイルには無理ですが、ジャケパンスタイルに合わせればあまり違和感がありません。とくにツイードのジャケットにグレーやブラウンのウールのパンツなどと合わせると、ちょっとしたカントリースタイルになるのでばっちり決まります。

いきなりカントリーブーツというカジュアルな靴の紹介になってしまいましたが、やはりサラリーマンにとって革靴の中心となるのはドレスシューズです。いまいちばん気に入っているのがユニオンインペリアルのセミブローグです。



ユニオンインペリアルは世界長ユニオンの本格革靴ブランドですが、とにかくコストパフォーマンスが凄い。グッドイヤーウェルト製法でアッパーの革はなんとフランスのアノネイ社のカーフ。もちろんライニングとインソールもすべてレザーです。これで価格は3万円台からなのですから驚き。縫製はベトナムですが、じつに丁寧な仕上がりになっています。さすが本格革靴好きの間で評価が高い理由が分かりました。木型も日本人の足に合ったものが多く、非常に履き心地が良いです。個人的には久しぶりのレザーソールの靴でしたが、レザーソールの履き心地の良さを思い出させてくれた靴でもあります。これから本格革靴を買おうと思っている人には、ぜひおすすめしたいブランドです。

コストパフォーマンスが良い本格革靴としては、スペインのバーウィックもお勧めです。私はホールカットを愛用しています。



スペインというのは欧州でも革靴生産が盛んな国ですが、英国靴とイタリア靴の両方の特徴を併せ持ったような雰囲気があります。私が持っているホールカットはダークブラウンのアンティーク仕上げ調のカラーですが、落ち着いた中に色気があり、履いていて楽しい靴です。ホールカットはアッパーの革の裁断効率が悪いため贅沢なデザインなのですが、けっこう上質なカーフが使われています。もちろんグッドイヤーウェルト製法でライニングとインソールも本革です。これも3万円台ですから素晴らしいコストパフォーマンスです。あまりフォーマルではありませんが、やはり茶靴というのは欲しくなるもの。ビジネスでもネイビーのスーツなどに合わせると悪目立ちせずに決まります。

基本的にグッドイヤーウェルト製法の靴を中心に愛用しているのですが、マッケイ製法の革靴も持っています。リーガルのライトブラウンのストレートチップはその一つ。



マッケイ製法はコバを薄くできますから、それを生かしたちょっとイキったデザインが可能です。これなどはロングノーズで土踏まず部分を大胆に絞り込んだデザイン、ライトブラウンというカラーもあって、かなり遊び心のあるデザインです。アッパーはキップのガラスレザーなので経年変化は楽しめませんが、とにかく手入れが簡単。普通のスーツスタイルには合いませんが、やはりジャケパンスタイルのときに愛用しています。チョークストライプが入ったネイビーのダブルブレストのジャケットとグレーのパンツなどと合わせると、かなりやんちゃなスタイルになって楽しいです(ちなみにライトブラウンの革靴は足元が悪目立ちしがちなので、それに負けないだけの派手目のトップスと合わせるといいです)。

もひとつ革靴のラインアップにぜひ加えておきたいのが雨の日用の靴。革靴にとって雨は大敵です。革は乾燥時に油分が抜けて硬化し、そのまま履き続けるとアッパーにクラックが入りやすくなります。すぐに正しいメンテナンスを行えばクラックも防げますが、サラリーマンにとってこれは簡単ではありません。例えば通勤時の雨などで午前中に革靴がびしょ濡れになるケースです。会社でメンテンできませんから、そのまま履き続けることになる。退社するころには雨は上がっていて、靴もすっかり乾燥している。これが革靴にとって非常に厳しい使用条件なのです。そこで雨の日用に安い靴を愛用しています。それがリーガルのアウトレット専用ラインです。



アウトレット専用ラインなので中国製です。アッパーは牛皮ですが、おそらくキップですらないでしょう。非常に硬く、顔料厚塗りなので艶や光沢も上品ではありません。ライニングはコットンでインソールはパルプ材です。1万円そこそこの価格ですから仕方ありません。ただ、さすがリーガルだけあって中国製とはいえグッドイヤーウェルト製法による非常に堅牢な作りです。黒のストレートチップは雨の日の冠婚葬祭でもガシガシ履けるわけです。チゼルトゥなので、ちょっとだけ遊び心もあります。そして、たとえ安い革靴でも、きちんと磨いてあげればそれなりの見た目にになります。じつはこれが革靴のもっとも重要な点で、よく手入れされた安物の靴は、手入れされていない高級靴に勝るのです。だから安い靴を履いていることを卑下する必要はありません。高級靴でも手入れされていない靴を履いていることを恥じるべきなのです。

こんな感じで最近、革靴熱がますます高じてきました。まだまだ欲しい靴があるので、これからもラインアップは増えてくるでしょう。おかげで靴磨きにかける時間も増えます。休日に一人嬉しそうに靴を磨いているの姿を妻は不思議そうに見ていますが、こういったコレクションとメンテンナスこそ“男のロマン”なのです。もう一度言います。男にとって靴磨きは自分磨きだ。

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