2020年3月25日

本物の不況がやってきた―生活防衛資金が必要な本当の理由



あいかわらず先行き不透明な相場が続いていますが、株価下落よりも恐ろしいことが起こりました。以前にブログで「本当に怖いのは株価下落ではない」と書いたのですが、悪い予感が当たったようです。いよいよ本当の不況がやってきました。

新型コロナウイルス感染の拡大で株価が暴落しましたが、株式市場の暴落などは問題の本質ではありません。本当に怖いのは、感染拡大を防ぐために世界中の国や都市でロックダウン(封鎖)が始まり、あらゆる生産・流通・消費が急激に止まってしまったことです。世界経済へのダメージは計り知れず、その影響が私たちの実生活にも直撃することが避けられなくなりました。

私自身、早くも影響を被り始めています。私は中小零細企業のサラリーマンなのですが、このほど4月以降の給与を交渉する春闘の回答がありました。会社からの回答は「ベースアップ無し」。春闘でベースアップ無しになるのは、リーマン・ショック以来のことです。会社側の説明によると、新型コロナ問題によって売り上げが激減しており、このままでは赤字転落の可能性が高まってきたとのことでした。場合によって会社存続が危うくなる危険性もあるとのことです。たしかに多くの仕事がキャンセルのなっているので、さもありなんと思います。そして、この調子では今年のボーナスも激減することが予想されます。

いよいよ本物の不況がやってきました。こうなると、とにかく生活防衛が第一です。前にも書いた通り、いまこそ家計のキャッシュフローをしっかりと確認するべき。いままで以上に家計のキャッシュフローに注意を払い、場合によっては支出項目の見直しなど家計の棚卸も必要になります。もちろん吝嗇になり過ぎてはいけませんが、これまで以上に“賢い消費”を心掛ける必要があります。

そして、こうした生活の危機に対して最後の防波堤になるのが、現金や預貯金といった無リスク資産、いわゆる“生活防衛資金”です。生活防衛資金は、投資に失敗した時のためにあるのではありません。投資に失敗してもリスク許容度の範囲ならほとんど打撃はありませから。それよりも不況になって家計が危機に瀕した時に備える資金こそが生活防衛資金です。ここにこそ生活防衛資金が必要な本当の理由があるのです。

よく「生活防衛資金は生活費の数か月分でよい。それ以上に現金が必要になればリスク資産を換金すればいい」という意見がありますが、これは相当に豊富な資産を持つ人にしか当てはまらない方法です。多くの個人投資家にとって現実はもっと厳しい。なぜなら、不況とリスク資産の下落はほぼ必ずと言っていいほど同時に起こるからです。そこで十分な生活防衛資金を持っていないと、リスク資産を換金しようと思っても肝心のリスク資産の方が急速に減っているという事態に陥るのです。

ちなみに私は現在、年収の約3年分相当の無リスク資産を確保しています。それでもまだ完全には安心できません。私のような中小零細企業のサラリーマンにとって、不況というのはそれほど恐ろしいものなのです。無リスク資産を厚めに保有するというのは、相場が好調な時には「投資効率が悪い」「機会損失だ」などと嘲笑されるものです。しかし、そんな外野の意見など一切無視。どうせそんな調子のいいことを言って他人の資産運用に対してとやかく言うような人は、本物の不況が来ればほとんどが捻り潰されるのですから。

これから株式投資などよりも、もっと難しい“不況下での資産形成”が始まります。株価に一喜一憂するときではありません。そんな暇があったら、家計のキャッシュフローの再確認や支出の見直しなどに力を入るときです。それこそが個人投資家の資産形成における本当の闘いだからです。

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