2020年2月17日

共働き世帯の資産形成が進まない理由



我が家もそうなのですが、いまや共働き世帯は社会の主流になりつつあります。やはり1馬力よりも2馬力の方が経済的にはぐっと楽になるのですが、フィデリティ退職・投資教育研究所によるサラリーマン1万人アンケート調査によると奇妙なデータが浮かび上がりました。「共働き世帯は、世帯年収が高いのにもかかわらず世帯資産は少ない」「共働き世帯はあまり資産形成が進んでいない」のだとか。

共働き世帯の資産形成は進んでいない(フィデリティ退職・投資教育研究所)

あくまでアンケート結果に基づくものですから、正確な統計上のデータではありません。このため本当に共働き世帯の資産形成が遅れているのかは確証が持てないのですが、一つの兆候を表していると考えると、なんとも不思議な感じがしました。そこで、共働き世帯の資産形成が進まない理由として、どのようなものがあるのか考えてみました。

共働き世帯の資産形成が進まない理由として可能性があるのは、次のような点ではないでしょうか。

・世帯収入が多いが、外食などで支出も多くなる

2馬力になると確かに世帯収入は増えます。ところが、意外と支出も多くなってしまいます。というのも、夫婦ともに働いていると、どうしても互いに時間の余裕がなくなり、家事をやる時間が取れなくなります。このため例えば外食などが多くなりがち。私の知人の共働き夫婦も、しょっちゅう外食しています。別に贅沢がしたいわけではなく、単純に夕食を作る時間が惜しいわけです。この問題を解決する方法は一つしかありません。もっと夫婦で家事を分担するしかなく、はっきり言うと、男がもっと家事をすることが極めて重要なのです。

・家族としてQOLを高めるのにそれなりのコストをかけてしまう

資産形成のためには節約が大事ですが、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ=QOL)が低下するほどのケチケチ生活というのは精神衛生上も良くないし、そもそも長続きしません。QOLを低下させない“賢い消費”が求められるわけですが、共働き世帯の場合、家族としてのQOLを高めるのにそれなりのコストをかけてしまうのではないでしょうか。というのも、普段は夫婦ともに仕事で忙しいわけですから、家族で過ごす時間を特別に大切にしたくなるもの。そのため、ついつい“特別感”を求めて贅沢してしまうのです。私自身も結婚してからというもの、ときどき夫婦で高級レストランに出かけたり、頻繁にプレゼントを贈りあったりしてしまいます。

・夫婦で作った共有資産は投資に回しにくい

フィデリティのアンケート調査にあるように、共働き世帯の資産形成が遅れる要因として「投資をしている人の比率が低い点」があります。これはなんとなくわかります。共働き世帯の場合、世帯の共有資産は自分が稼いだお金であると同時にパートナーが稼いだお金でもあるのです。そういった資金を投資に回すのは非常にハードルが高い。そうとう踏み込んだ話し合いが必要になり、なかなかそれをできる世帯は少ないのでしょう。そうなるといきおい預貯金だけで運用することになり、現在の低金利下ではどうしても資産形成が遅れるということでしょう。

・でも、実際はしっかりと資産形成している可能性も大きい

こんな感じでいろいろと想像してみたわけですが、やはり最大のポイントは記事にあるように共働き世帯は「資産形成に関して、夫婦で共同して対応ができていない」ことにあります。でも、これは見方を変えると「実際はしっかりと資産形成している可能性も大きい」と考えることができるのでは。共働き夫婦は生活費を中心とした家計に関しては非常にクリアに情報を共有しているのに、個人名義の資産に関しては妙に秘密主義な場合もあります。実際に私の場合も妻がどれだけの資産を持っているの全く知りません。また、妻も私の個人名義の資産についてはとくに聞いてきません。よく言えば個人名義の資産に関して双方が自立しているし、悪く言えば夫婦なのにドライな関係といえます。

こう考えると、そもそもアンケートに参加した共働き世帯の回答者全員が、正確にパートナーの個人名義資産を把握しているとは思えません。知っている範囲だけで回答しているのでは。共働き世帯は片働き世帯よりも世帯ベースでの資産の全体像が把握しにくのです。このため結果的に「共働き世帯の資産形成は遅れている」かのような回答データが出てくるのではないでしょうか。

とはいえ、本来的には夫婦がそれぞれの個人資産を秘密にして、世帯としての資産の全体像が見えなくなるというのは“資産運用の効率”という面ではマイナスでしょう。しかし、夫婦関係は“効率”だけでは成り立たないということを私は知りました。あえて干渉しない領域を維持することは、関係ののり代として必要不可欠では。個人名義の資産などは、その一つです。「パートナーはきっと私の知らないところできちんと資産形成をしてくれている」と信じることが必要なのではなかろうか。そして、いざという時には「心配しないで。お金ならちゃんとあるから」と山内一豊の妻よろしく家計を助けてくれるという期待を持つのも夫婦における資産形成の一つの形だと思うのです。あるいは、たんに私が甘いだけなのかもしれませんが。

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