2019年12月3日

投資信託は購入時手数料無料時代の幕開け―販売会社は新たな収益モデル構築が不可避に



先日、フィデリティ証券がインターネット取引で投資信託の購入時手数料を無料化すると発表しました。これに対抗してか、このほど松井証券も投資信託の購入時手数料を完全無料化すると発表しました。

フィデリティ証券、「オンライン0%プログラム」によりインターネット取引の投資信託購入時手数料を無料化(フィデリティ証券)
投資信託の購入時手数料を完全無料化します(松井証券)

フィデリティ証券に続いてネット専業証券大手の一角である松井証券も投資信託の購入時手数料無料化に踏み切ったことで、今後は他のネット専業証券への波及が予想されます。いよいよ投資信託は購入時手数料無料時代の幕開けとなりそう。個人投資家にとってはありがたい流れですが、証券会社・銀行など投資信託の販売会社にとっては、新たな収益モデルの構築が不可避になったともいえます。
【追記】
予想どおり楽天証券、マネックス証券、SBI証券も投資信託の購入時手数料無料化を発表しました。
楽天証券、すべての投資信託 買付手数料を無料に(楽天証券)
投資信託も!ETF・REIT等の信用取引も!実質0円!(マネックス証券)
SBI証券、各種手数料の無料化のお知らせ(SBI証券)

投資信託の購入時手数料というのは本来、店頭販売の際の商品説明や手続き対応への手数料という側面があるのですが、ネット証券では購入方法の性格上、その存在意義が疑問視されることが多く、そのためノーロード(購入時手数料なし)の投資信託が増えていました。とはいえ、いまでもアクティブファンドを中心に購入時手数料が必要なファンドは少なくなく、とくに店頭販売ではまだ一般的です。

さらに購入時手数料への批判が高まった理由のひとつに、これが証券会社・銀行など販売会社が顧客に対して盛んにファンドを乗り換えさせる回転売買の温床になっているという実態があったからです。ファンドを乗り換えさせるたびに購入金額の1~3%の手数料が入るわけですから、販売会社にとっては顧客に次々とファンドを乗り換えさせるインセンティブになっているのです。

こうした中、フィデリティ証券と松井証券が投資信託の購入時手数料を完全無料化するというのは、非常に大きなインパクトがあります。おそらく他のネット証券も追随するでしょうから、購入時手数料無料時代の幕開けと言えそうです。それは同時に販売会社として購入時手数料によって利益を得るという収益構造から決別することを意味しますから、極めて大きな意味のある決断なのです。

今回の動きの背景には投資信託業界全体の大きな構造変化もあるでしょう。従来、投資信託の顧客の主力を占めたのは比較的大きな金額を一括投資する高齢層でした。しかし近年、少額ずつ定期的に積立投資する若年層から壮年層にかけての個人投資家が増えています。こうした顧客層の変化が購入時手数料の存在意義を希薄にしてしまったわけです。販売会社にとって購入時手数料をとることは、若い世代の投資家を取り込むことの障害となるからです。

ですから、投資信託の購入時手数料を完全無料かするというネット証券の動きは市場の構造変化に素早く対応するためと言えます。今後、あいかわらず高齢層の顧客から購入手数料を取ることで収益を確保している店頭型証券会社・銀行と、購入時手数料無料化によって若い投資を取り込むネット証券の間で大きな格差が生まれるかもしれません。なにしろ、高齢層の投資家は減少する一方であり、少しずつですがノーロードの投資信託を選ぶ若い投資家は増えているのですから。どちらの市場に将来性があるのかは自明のことでしょう。

一方、投資信託の購入時手数料無料時代が始まったことで販売会社は新たな収益モデルの構築が不可避になりました。今後、購入手数料に代わってどういった収益源を見出すことができるのでしょうか。この点に関してヒントとなる報道があります。

フィデリティ証券、投信販売手数料を12月撤廃(「日本経済新聞」電子版)

報道によると、フィデリティ証券は将来的に「運用助言手数料」を新たに設け、これを収益の柱に育てることを考えているそうです。つまり、収益モデルを従来の手数料収入中心ではなく、コンサルティングフィー中心へと転換しようとしているわけです。こうした動きが今後どうなっていくのかも注目でしょう。そう考えると、やはり投資信託の購入時手数料無料化という動きは、投信業界全体の大きな転換点を示す出来事として後世に記憶されるのかもしれません。

関連コンテンツ

スポンサードリンク