2019年9月4日

「まとまった資金がないので投資できない」は過去の話に―個人投資家の“感性の革新”の兆しか



投資に興味があるけれども、なかなか始められない。その理由として多かったのが「まとまった資金がないから」というのは以前はよく聞いた話です。ところが、どうもそれは過去の話となったようです。フィデリティ退職・投資教育研究所によると「投資をしていない理由」として「まとまった資金がないから」と答える割合が大きく低下しているそうです。

積立投資の広がり(フィデリティ退職・投資教育研究所)

背景にあるのが積立投資の増加です。まだまだ絶対数は小さけれども、やはり行動する人は確実に増えている。それは日本の個人投資家の“感性の革新”の兆しかもしれません。

フィデリティ退職・投資教育研究所は2010年から投資に関する「サラリーマン1万人アンケート」を実施しています。その結果を毎年レポートとしてまとめているのですが、10年近く調査を継続していると時系列による変化からも面白いことが分かるようになります。そのひとつが今回指摘している「投資をしていない理由」の変化です。2010年は「まとまった資金がないから」という答えが断トツの1位でしたが、19年の調査ではその比率が大幅に低下しました。

よく考えれば当然の話で、かつて投資といえば個別株投資のイメージが強く、当時は単元株数も大きかったので実際にある程度まとまった資金がなければ投資できませんでした。小口資金から始められる投資信託もコストの高いファンドが主流であり、やはり敷居が高かったのです。積立投資も存在しましたが、まだまだ黎明期であり、メジャーな投資手法ではありませんでした。

しかし、それから10年近く経って投資を取り巻く環境は劇的に変化しました。いまや投資信託の積立は100円から始めることができます。極めて低コストなインデックスファンドも増えました。なにより「つみたてNISA」の創設や個人型確定拠出年金(iDeCo)の対象者拡大など少額から始めることのできる積立投資のための環境整備を政府も積極的に進めることになります。積立投資が少しずつ、でも確実に普及しているのです。

どうやら「まとまった資金がないから投資できない」というのは過去の話になったようです。そして積立投資が少しずつ普及することで投資家の感性も変化しています。やはり「サラリーマン1万人アンケート」からは興味深い変化が読み取れます。

投資に対する考え方の変化の兆候(同)

これまで日本では株価が上昇すると一種の投資ブームが起こり投資が盛んになる一方で、株価が下落傾向になるとブームも終焉して市場から個人投資家が退場するということを繰り返してきました。しかし、2015年ごろから株価が上昇すると投資家比率が低下し、株価が下落またはもみ合うと投資家比率が上昇する傾向が表れ始めています。相場の動きに惑わされずにコツコツと投資を続ける積立投資家の存在が大きくなっているのではないと分析しています。

言い換えると、投資を「相場の短期的な変動によって儲ける」ものととらえるのではなく、長期的な資産形成の手段としてとらえる人が増えていることを意味するのではないでしょうか。それは日本の個人投資家における一種の“感性の革新”です。やはり世の中は少しづつ、でも確実に変化しているのでしょう。

一方、フィデリティ退職・投資教育研究所が指摘するように、投資に対するハードルとして大きくなっているのが「何をしていいのか分からない」という回答です。たしかに「つみたてNISA」や「iDeCo」が注目される反面、制度自体は非常に複雑になっていきました。また、インデックス投資や積立投資はいったん始めてしまえば簡単な投資手法ですが、前段階としてちょっと理論的な理解が必要になります。

その意味で、今後は制度面では手続きの簡素化が必要だろうし、投資について解説するメディアの役割も一段と大きくなるのかもしれません。それは商業メディアだけでなく、金融機関のウェブサイトから個人ブログまですべてに当てはまるはずです。

【ご参考】
投資について資産形成について基礎から勉強しようと思うなら良質な入門書をじっくり読むのがもっとも効率的です。いろいろと良書がありますが、個人的に1冊だけ選べと言われれば、岡本和久さんの『公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。』を挙げます。このブログでも以前に紹介しています。

『公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。』―これから投資を始めようとする人は必読

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