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2019年9月16日
毎月決算型や通貨選択型の投資信託の信託期間が短い理由
投資信託には、いつからいつまで運用を続けるのか定める「運用期間」というものがあります。インデックスファンドなどは運用期間が「無期限」となっているものが多いのですが、日本の投資信託全体で見ると意外と運用期間が定めれれているファンドが多いのです。この点に関してモーニングスターが興味深い分析を載せていました。
見落としがちな信託期間の傾向とは(モーニングスター)
やはりパッシブファンドは運用期間が無期限のものが多い一方、アクティブファンドも有期限のファンドが多いという結果に。特に注目すべき点は、運用期間が5年未満のファンドの多くは毎月決算型や通貨選択型のファンドだということでしょう。なぜ毎月決算型や通貨選択型の投資信託は運用期間が短いのか。そこには投資信託についてちょっと詳しい投資家ならだれもが気づいている“不都合な真実”があります。
モーニングスターの分析によると、信託期間が5年未満のファンドの42.7%が毎月分配型であり、さらにその半分は通貨選択型の投資信託とのことです。これは非常にわかりやすい構図が見えてきます。というのも、毎月決算型や通貨選択型の投資信託が人気を集めた理由は、分配金を出す頻度と金額の多さだったからです(「分配金利回り」などと言う意味不明のセールスタームすら生まれたくらいです)。
分配金が人気の理由だったことで、毎月決算型は分配金の原資を確保する必要があります。しかし、現在のような運用難の時代には安定的に利益を確保できる投資対象がありません。そこで為替取引のオプションを売ってプレミアム収入を得る通貨選択型投信が登場します。しかし、オプション売りは“利益は有限、損失は無限”となる可能性を抱える不安定な運用手法です。トータルリターンで見れば、それほど大きな利益をえることは難しかったのです。
その結果どうなったのか。運用益があまりないのに分配金を出すわけですから、特別分配金(元本払戻金)を乱発することになります。こうなると、あとは純資産残高を取り崩していくだけです。まともな運用などできなくなり、いずれ資産も底をつきます。この時、信託期間が決まっていると非常に都合がいい。堂々と定時償還できるからです。
なぜ毎月決算型や通貨選択型のファンドは信託期間が短いのか。それは、そもそも毎月決算型や通貨選択型の投資信託というのは、最初から長期運用などできない商品設計になっているという単純な理由です。そして問題はここから。はたして金融機関は毎月決算型や通貨選択型の投資信託を購入している人に、そういった商品の性格をきちんと説明して販売しているのでしょうか。
さらに信託期間が終了して定時償還によって資金が払い戻された顧客に対して、別の毎月決算型投信や通貨選択型投信への乗り換えを提案しているのではないかという問題があります。毎月決算型や通貨選択型の投資信託は購入時手数料が必要なものが多い。購入時手数料が必要な有期限のファンを販売し、償還後には別のファンドの乗り換えさせることで再び購入時手数料を得ることもできる。ここまで見れば、毎月決算型や通貨選択型の投資信託の信託期間が短い理由は、もうお察しでしょう。
モーニングスターの記事にあるように通貨選択型投信は2014年11月末に純資産総額が12.6兆円と最高に達し、15年6月末には本数も842本とピークを迎えました。しかし、その後は純資産総額・本数ともに減少が続いています。なぜ減少したのかといえば、金融庁が問題視したからです。しかし、金融庁が問題したのは商品そのものではないはずです。不誠実な販売の温床になっているから問題視したのです。
毎月決算型や通貨選択型の投資信託は信託期間の短いファンドが多いという事実は、日本の投資信託にまつわるある種の不誠実さを浮き彫りにします。これこそが投資信託についてちょっと詳しい投資家ならだれもが薄々気づいている日本の投資業界における“不都合な真実”にほかなりません。