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2019年7月3日

企業型DCの商品ラインアップが公開される―情報公開の形式にも金融機関の姿勢が表れる



以前にこのブログでも紹介したのですが、厚生労働省の「確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令」によって、2019年7月1日から金融機関が運営管理機関として企業型確定拠出年金(企業型DC)に提供しているの商品ラインアップをインターネットで公開することが義務付けられました。さっそく、どの金融機関もサイトで商品一覧がアップされています。企業型DCは従来、提供商品に関する情報公開がほとんどなされておらず、一部の加入者からは高コストな商品ばかりをラインアップしているのではないかという疑念の声が上がっていました。今回の改正省令の施行で、ようやく企業型DCにも“日の光”があてられることになります。ただ、始まったばかりの制度ですから問題点もいろいろ感じました。今後は情報公開の形式にも金融機関の姿勢が表れているということを指摘しておきたいと思います。

今回の省令改正によって金融機関の営業職員が確定拠出年金の運営管理機関業務の一部を兼務することが可能になりました。その代わりに加入者に対する忠実義務を確保するための措置が強化されており、その一つとして管理機関が加入者に提供している全ての運用商品に係る情報をインターネットを利用して公表することが義務付けられます。これによって加入者は自分が加入しているプランの商品ラインアップのコスト水準が高いのか低いのかを比較することが可能になります。

こうした情報公開を基に企業型DCの実施主体である事業主に対しても、少なくとも5年ごとに運営管理機関の業務について評価を行い、委託内容について検討を加え、必要に応じて委託内容の変更や運営管理機関の変更などを行う努力義務も課されました。例えば特定の金融グループがかかわる商品の偏重していないか、同種の商品と比較して明らかに運用成績が劣る商品が提供されいないか、同種の商品と比較して明らかに高コストな商品がランアップされていないかなどの観点についても評価することになります。

今回の省令改正は、企業型DCに大きな変化をもたらす可能性があります。企業型DCで高コストな商品が横行している理由のひとつが、それぞれのプランの加入者以外は実態が分からず、まったくブラックボックスに包まれていたからです。しかし、商品ラインアップが公開されたことで“日の光を当てる”(バンガードの創業者であるジョン・ボーグルの言葉)ことになり、改善が進む可能性があるからです。

その意味で大きな一歩を踏み出したことになり、大いに評価できるでしょう。ただ、現状では問題点も少なくありません。その一つが情報公開の形式です。実は私もさっそく各社の商品ラインアップを見ようと思い、大手銀行などのサイト内を探してみたのですが、とにかく商品一覧を探すだけでひと苦労。おまけに掲載形式は厚生労働省のフォーマットに従っているものの、商品をカテゴリーごとに並べて記載しているだけで比較しやすい形になっていません。はっきり言って、金融機関のやる気のなさ、嫌々やってる感がにじみ出ています(ただし、りそな銀行の公開形式は優秀)。この点に関しては専門家からも指摘されています。

改善の余地が大きいDC運用商品一覧の公表(社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方)
※向井洋平さんのこの記事は主だった金融機関の商品一覧ページへのリンクがあり便利です。

今後は、このあたりの改善を進めることで閲覧しやすい情報公開の形式を整えることが求められます。そうすることによって事業主や加入者による商品比較も容易になり、運営管理機関の評価という本来の目的につながるからです。その意味では、どれだけ分かりやすい情報公開の形式を整備していくのかも、その金融機関の企業型DCに対する姿勢の表れとして評価していくことが必要でしょう。また、金融機関もそういった目で見られているのだということを意識し、もっと真摯な態度で情報公開に取り組むべきだと強く指摘したいと思います。

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