先日、水瀬ケンイチさんが次のツイートをしているのが目に入りました。
2008年リーマン・ショック直後の2009年バートン・マルキール来日セミナー、当時は大いに励まされて心の支えになったし、10年後の今振り返っても、暴落後の考え方の示唆に富んでいると思います。— 水瀬ケンイチ (@minasek) 2019年5月20日
これを見てふと思い出したのが、たしかこの来日時にマルキール博士がモーニングスター・ジャパンのインタビューを受けており、それがYouTubeにアップされていたことです。それで久しぶりに探してみたところ、今でも残っていました。再見して思わず唸る。驚くべきほど明晰な内容を語っており、あれから10年を経て博士が語っていたことの正しさがほぼ現実によって証明されていることに驚きます。古くからのインデックス投資家には既知の動画ですが、新しくインデックス投資を始めた人も多いですから、あえて紹介します。ぜひ一見することをお勧めします。
2009年といえばリーマンショックの記憶も生々しいころで、それこそ世の中には「株式市場は死んだ」とか「資本主義の終焉」といったことが真面目にささやかれていた時期です。そんなときに来日したのが『ウォール街のランダム・ウォーカー ―株式投資の不滅の真理』の著者であるバートン・マルキール博士。モーニングスター・ジャパンのインタビューで、まるで老師が弟子たちに語りかけるような穏やかさで、それでいて明晰な分析と投資指針を語ってくれています。
このインタビューには、インデックス投資のエッセンスが凝縮されています。マルキール博士の主張は首尾一貫していて「レバレッジを高めすぎるな」「とにかく分散投資が大切」「投資のコアポートフォリオはインデックス投資で」「積立など機械的に投資することの有効性とリバランスの重要性」「低コストの大切さ」といった投資のポイントを、それこそ噛んで含むように教えてくれます。その内容の的確さは10年を経てもまったく色褪せません。
なにより感嘆するのが(実際に映像を見てほしいのですが)インタビュー最後の投資家へのメッセージです。「世界経済は必ず回復することを信じてください」「いまはデフレですが、世界各国の積極的な財政・金融政策によって2年後くらいにはインフレの懸念が大きくなります」「株式投資を見限ってはいけません」「現在の魅力的な株価水準で株に投資すれば5年後、10年後のリターンはかなり期待できるでしょう」――そして現実はマルキール博士の予想通りとなりました。まさに“株式投資の不滅の真理”を歴史が証明したわけです。
それにしても、なぜ博士はこれほどまでに明晰に将来を見通せたのでしょうか。それは投資という営みに対して常に知性をもって分析してきたからにほなりません。本来、投資というのはこういった知的な営みであるはずなのです。だから、投資について勉強するというのは、些末なテクニックを学ぶことではなく、もっと本質的な知性を磨くということなのです。そういった知的な“構え”のようなものを学ぶのが、博士の著書のような古典的な文献を読む意義です。ですから、このインタビューを見て感じるものがあり、まだ博士の著書を読んでいない人は、ぜひ手に取ってみて欲しい。そして、そのほかの古典的な基本文献にも挑戦して欲しいと思います。
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