2019年2月10日

DC向けファンドの信託報酬引き下げは最優先課題―野村AMの決断を高く評価します



既に多くのブロガーさんが報告していますが、野村アセットマネジメントが確定拠出年金(DC)向け投資信託14本の信託報酬を大幅に引き下げると発表しました。

確定拠出年金向けファンドの信託報酬率引き下げについて(野村アセットマネジメント)

これにより外国株式インデックスファンドを除くインデックスファンドは一般販売されているファンドのコストを下回り、各資産クラスで最安値となります。今回の信託報酬引き下げはDC向けファンドという限られた商品でのことですが、それでも私は野村AMの決断を高く評価します。なぜなら、インデックスファンドの低コスト化が急速に進む中、DC向けファンドの信託報酬引き下げというのは最優先課題だからです。

野村AMのDC向けファンドは野村證券のほか地銀などの個人型確定拠出年金(iDeCo)にも幅広く採用されており、私自身もSBI証券のiDeCoオリジナルプランで「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」を保有・積立しています。なので今回の信託報酬引き下げは大いにありがたいし、同じように恩恵を受ける受益者も多いことでしょう。

しかし、そういった個人的利害を超えて、今回の野村AMの決断を高く評価したいと思います。従来、DC向けファンドは安定した資金流入が見込めることや金融機関が通常のコスト以外に運営管理費用を別途徴収できることから一般販売されているファンドよりも信託報酬を低く抑えることができるとされてきました。しかし近年、一般販売されるインデックスファンドの低コスト化が急激に進み、DC向けファンドのコストの方が割高になるという状況が発生していました。この状態を正す意味で野村AMの決断には大きな意味があります。

なぜDC向けファンドのコスト引き下げが重要なのかというと、その多くが企業型DCでも採用されているからです。もともとDCは企業型、個人型ともに商品の入れ替えが非常に困難な制度です。しかし個人型DC(iDeCo)の場合は加入者が自由に運営管理金融機関を乗り換えることで、より低コストなファンドへの移換が可能です。

ところが企業型DCの場合、そういうわけにはいかない。企業型DCは企業として採用したプランに従業員が事実上強制加入させられているからです。このため企業型DCのプランに含まれるファンドの信託報酬が割高だった場合、受益者は非常な不利益を被ることになり、しかもそこから逃れるすべもないわけです。これが非常に問題になっていました。

こうしたことを考えると、DC向けファンドの低コスト化というのは、一般販売されているファンドの低コスト化以上に最優先されるべき課題なのです。企業型DCは加入企業の従業員にとっては事実上の強制加入である上に、本来は企業が負うべき企業年金や退職金の運用リスクを従業員に負担させるという側面があります。その上で信託報酬まで徴収しているのですから、せめて信託報酬は“業界最安値を追求”するぐらいでなければならないはずです。

今回の野村AMの動きをきっかけに、今後はDC向けファンドの低コスト化が進むことを期待したい。とくに企業型DCで採用されているDC向けファンドの信託報酬が割高に放置されていることは、DC制度に対する信頼性に関わる重要問題だからです。

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