2018年9月25日

どんどん増える配当金収入―日本も恐るべき格差社会に突入している



日本経済新聞によると、日本の上場企業の中間配当総額が9年連続増の4兆8906億円と過去最高になる見通しだそうです。

中間配当最高、4.9兆円 9年連続増、企業の積極還元進む(「日本経済新聞」電子版)

積極的な配当政策といえば米国株が有名ですが、ここにきて日本企業も株主還元積極化が一段と進んだということでしょう。日本株にも投資している立場としては嬉しいことですが、同時にちょっと空恐ろしくなりました。なぜなら、日本も恐るべき格差社会に突入しているということをひしひしと感じたからです。

ここ数年、日本企業の配当政策が極めて積極的になっていることは実感としてありました。なぜなら、実際に私の配当金振込指定口座のお金が確実に増えていたからです。配当金や分配金が出る個別株やETFへの投資も基本的にバイ&ホールドの“ほったらかし投資”ですから、それこそ知らない間にお金がどんどん増えているという状態です。

投資家の配当金収入がどんどん増えていることが上場企業の中間配当金支払い総額の増加からも裏付けられてたわけですが、家計への恩恵について日経新聞は次のように書いています。
日本株の保有比率からみて約8000億円が家計に入り、年末の消費を支える効果も期待できそうだ。
これは驚くべき数字です。4.9兆円のうち、家計に入るのがわずか8000億円。つまり、それほど日本の家計は株式を所有していないということです。実際に日銀のの資金循環統計を見ても、2018年6月末段階で家計が所有する金融資産1848兆円のうち、株式・投資信託は276兆円に過ぎません。比率にして14.9%。この比率はここ数年、とくに大きく増えていません。

つまり日本の家計のほとんどは株式や投資信託などを保有していないと推定され、そうなると増加を続けている配当金の恩恵も受けることができていないと考えられるのです。これを見て私はちょっと空恐ろしくなりました。上場企業による配当金支払いがどんどん増える一方で、家計の金融資産に占める株式の比率が高まらないということは、株式を保有している家計と、保有していない家計の間でどんどんと収入格差が広がっていくということだからです。日本は、既に恐るべき格差社会に突入しているのだと思います。

なぜ格差が問題なのかというと、それが社会の安定を損ねるからに他なりません。だから、どんな保守的な政府であっても常に格差社会の是正に動くものです(国家の目的は社会の安寧秩序に尽きるのですから)。一方で格差を是正するために再分配が必要だとして、それを過度に行うと今度は社会の活力が失われます。社会の活力が奪われると、やはりそれは社会の安定を損ねることにつながる。このあたりに再分配政策の難しさがあります。

そう考えると、今のように株式を保有している人と保有していない人の間で格差が広がっていくような状態は、いずれ社会問題化するに違いない。しかし、このあたりの問題になってくると、すでに私のような市井の庶民では簡単に最適解を見出すことができません。

それでは一庶民の立場から、これから日本を覆うであろう格差社会にどのように対処すればいいのでしょうか。やはり最適な答えは見出せません。せいぜい、庶民も可能な限り株式を保有して、どんどん増えていく配当金の恩恵に少しでも与れるようになろうと言うくらいでしょうか。それがベストな方法だとはとても思えませんが。

現在、政府は盛んに「貯蓄から投資へ」「安定的な資産形成」などを提唱しながら、国民に株式を保有することを促しています。その目的はいろいろあるのでしょうが、やはり政府も私と同じように、ある種の空恐ろしさを感じているのではないでしょうか。なんとなく、そんなことを夢想してしまいました。

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