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2018年7月7日

GPIFの2017年度運用実績は+6.9%に―インデックス運用のお手本のようなやり方です



年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2017年度(17年4月~18年3月)の運用実績が発表されました。GPIFの運用は大きくマイナスになったときぐらいしか一般メディアは大きく報じませんので、このブログでは意地でも定例ウオッチを続けます。資産残高の収益額は10兆810億円のプラスに、収益率は+6.9%でした。これにより資産総額は156兆9034億円となり、年度ベースでは市場運用開始来で過去最高の資産額を更新しました。詳細は新しい業務概況書が出ているので、そちらで確認できます。

業務概況書(GPIF)

2017年は世界的に良好な市場環境が続いたことでGPIFの運用もその恩恵を大きく受けました。そして、良好な市場環境の恩恵を全面的に享受てきたのも、GPIFが資産のほとんどをインデックス運用しているからにはほかなりません。そういった健全さはインデックス運用のお手本のようなやり方なのです。

2017年度は、いわゆる“適温相場”と言われるような近年でもまれな良好相場でした。このためGPIFの運用は主要4資産クラス(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券)すべてがプラスリターンとなりました。とくに国内株式が+15.66%、外国株式が+10.15%と全体を牽引しています。また、正味の現金収入となるインカムゲインは2兆7789億円に達します。こちらもうなぎ登りで増加傾向。近年、債券の利回り低下で金利収入は低下していますが、一方で株式からの配当は世界的に増勢が続いていますから、やはり株式への投資が大きな成果を出していると言えそうです。

一方、四半期ベースで見ると第3四半期(17年10~12月)までプラスリターンが続きましたが、第4四半期(18年1~3月)は世界的に株式相場が軟化したことで5兆5408億円の評価損となりました。この部分だけを抜き出して騒ぐ向きもありますが、重要なのは短期的な浮き沈みを繰り返しながらも長期では大きなプラスリターンを得ていることです。なぜそういうことができるのかというと、GPIFは各資産を基本ポートフォリオの割合に従って保有し、リバランスを行うほかは特段に売買を行っていません。直近の市場動向を意識しないパッシブ運用(インデックス運用)の方が、かえって市場の変動に対して耐性があるという一例でしょう。

もうひとつ興味深いのは手数料水準です。17年度にGPIFが運用委託先に支払った手数料は487億円。率にして年0.03%です。さすが世界最大級の機関投資家は凄い。異次元の低コストでしょう。なにより素晴らしいのは、海外の公的年金と比較しても低コストを実現していること。つまりGPIFはコストにもこだわっている。このあたりも含めて、やはりGPIFの運用というのはインデックス運用のお手本のようなやり方です。

17年から一転して18年は厳しい市場環境が続きそうですから、GPIFの運用成績も一時的に大きな評価損を出すことが今後もあるでしょう。しかし、年金というのは超長期の運用が前提となりますから、一時的な収益変動ではなく、運用のやり方自体が健全に行われているかをウオッチすることが重要です。そういう観点から今後もウオッチを続けていきたいと思います。

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