2018年6月13日

企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している事業主は、もっと真摯に投資教育をやりなさい



日経新聞によると企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入する企業が増えています。

確定拠出年金導入、3万社突破 政府目標上回る(「日本経済新聞」電子版)

企業型DC導入企業の増加で、個人型DC(iDeCo)と合わせた確定拠出年金加入者は延べ733万人となり、20~60歳の9人に1人が加入していることになるとか。よくよく考えると、これは凄いことで。米国ですでに起こったことですが、やはり確定拠出年金の普及が、投資の裾野を確実に広げていく。一方、問題もあります。企業型DCを導入しても、加入者のかなりの部分が元本保証商品での運用を行っており、実際の投資に足を踏み出せていないという実態です。なぜそうなるのか。はっきりいて企業型DCを導入している事業主の責任です。企業型DCの導入に際して義務付けられている投資教育が実に貧弱なために、「どうしたらいいのか分からない」という加入者が多い。だから、企業型DCを導入している事業主には、もっと真摯に投資教育をやりなさいと言いたい。

企業型DC導入拡大の背景にあるのは、従来のような確定給付年金(DB)を維持するだけの余裕が企業になくなってきたことがあります。記事にもあるようにDBは運用利回りが予定を下回ると、不足分を事情主が穴埋めしなければなりません。だから企業型DCの導入というのは、従来は事業主が負担していた年金運用リスクを従業員に転嫁するというシビアな現実もあるのです。

もちろん企業型DCには加入者側のメリットもあります。それは加入者の年金資産が事業主の経営リスクからから分離されること。DBは運用リスクを事業主が負担するといっても、事業主が破綻してしまっては無い袖は振れないわけで、結局は加入者の年金資産は毀損します。例えばJALが破綻したときにはDBの企業年金は大幅に減額されました。ちなみに私の父親も複数の企業で構成する総合型厚生年金基金からDBの企業年金をもらっていましたが、運用悪化による基金解散で、やはり減額を食らいました。

昨今は大企業といえども突然に経営危機に陥ったりする時代ですから、従業員の年金資産が個別企業の経営リスクから分離されるというのは非常に大きなメリットなのです。ましてや財務基盤の貧弱な中小企業や新興企業の従業員にとっては、DBよりもDCの方がありがたいくらいでしょう。

しかし、問題はここからです。企業型DCを導入した場合、加入者となる従業員のほとんどは投資未経験者。そこで事業主は適切な投資教育を行うことが法律で義務付けられている。ところが、この投資教育が実に貧弱。私は企業型DCに加入していませんが実弟と義弟が企業型DCに加入しており、いろいろと相談も受けたのである程度は実態を知っています。ほとんどの場合、運営管理機関となった金融機関の人がやってきて、セミナー形式の説明会を数回実施するだけ。ほとんどの加入者は話を聞いてもチンプンカンプンですが、そういった理解度の把握は無視。投資教育を実施したというアリバイ作りにすぎないと思えるぐらいです。

こういった実態は、とんでもないことだと思う。そもそも企業型DCは従業員にとって一種の強制加入の制度です。その上、本来は事業主が負担してた運用リスクを従業員に転嫁する制度でもある。だったら、せめて投資教育ぐらいは真摯にやりなさいよ。それが企業型DCを導入した事業主としての最低限の責任のはずです。もっと予算をかけて、例えば専用のワークブックやドリルを作って新入社員研修の中で強制的に解かせる。さらに試験もして、合格点を取るまで何回も追試をするぐらいのことをするべきです。そのためのツールは、それこそ業界団体が有識者の知恵を借りてでも作ればいいのです。

とにかく今のようなぬるい投資教育をやっているようでは、企業型DCの導入拡大もかえって将来に禍根を残す可能性がある。もっと“ビッシビシ”やらんといかんのです。この辺りは厚生労働省も、もっと厳しく指導するべきなのです。

※企業型DCのもうひとつの問題は、商品ラインアップがひどいプランがあるということです。この点については以前にブログで書きました。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の商品ラインアップにも何らかの規制が必要ではないか
厚生労働省が金融機関に企業型確定拠出年金(企業型DC)の商品ラインアップ公開を命令するようだ

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