2018年2月19日

給与収入より圧倒的に増えた配当収入―資本主義の厳しい現実を実感する



週末を利用して2017年分の確定申告書を作成しました。普通のサラリーマンは税務管理を源泉徴収と年末調整に丸投げなのですが、これこそ日本人のマネーリテラシーが向上しない要因のひとつです。年に1度、確定申告書を作れば、自分がどれだけお金を稼ぎ、どれだけの税金・社会保険料を支払っているのかが実に明瞭に分かりますから、それだけでマネーリテラシーが劇的に向上します。そして改めて感じたのが「資本主義の厳しい現実」です。自分の確定申告書を昨年分と比較すると、給与収入よりも配当収入の方が圧倒的に増えているのです。

私は普通のサラリーマンなので以前は確定申告をしていませんでした。ところが数年前から本業以外にちょっとした原稿を書いたりで僅かながら副収入があります。さらに米国株式投資を始めたこともあって外国税額控除にも挑戦しようと思い、2016年分から確定申告を行っています。今回で2回目となるわけですから、前年分と比較できるようになりました。

前年分と比較してまず驚いたのが社会保険料の上昇です。消費税を数%上げる上げないで世間は大騒ぎですが、その背後で実質的な税ともいえる社会保険料がしれっと上昇している。やはり国家というのは狡猾なものです。消費税の議論そのものが、社会保険料の引き上げ議論を隠すための煙幕なのではないかと思ったぐらいです。

ただ、個人的に最も驚いたのが配当収入の増加です。もちろん収入の柱である給与収入と比較すると、総収入に占める割合や絶対額は小さいのですが、伸び率では給与収入を圧倒的に上回ります。私の場合、保有する個別株で最も金額が大きい関西電力が昨年に復配したことや、そのほかの保有銘柄も増配が相次いだことが要因でした。もちろん保有するETFからの分配金も増加しています。

我がことながら資本主義の厳しい現実を実感しました。日本では景気が回復していると言われながらも、庶民にはその実感が乏しく「実感なき景気回復」とマスコミは書いています。しかし、これは嘘だ。少なくとも株式投資をしている人は、明確に景気回復を実感している。「実感なき景気回復」というのは、正しくは「投資していない人には実感できない景気回復」ということです。

たとえ庶民でも株式を保有している人は、現在の景気回復を実感しているはずです(少なくとも私は実感しました)。逆にお金持ちでも株式を保有していない人は景気回復を実感できていないでしょう(現預金を多く持っているだけの一部の高齢者などがこれにあたります)。ただ、そういった現実が表に出ないのは、株式を保有している人の多くは配当収入が増えたこと黙っているから。日本では配当収入というのは一種の不労所得だと誤解されているので、余計なことを言って妬まれたりしたら大変。日常生活に波風を立てないようにする庶民の知恵です。

さらに、もっと厳しい資本主義の現実も垣間見えます。それは、いまや企業の利益分配構造が根本的に変わってしまったということです。企業が利益を上げれば、それは労働者の賃金よりも株主への配当に優先して回される。だから給与収入の伸び率と配当収入の伸び率に劇的な乖離が生じる。これはマクロなレベルで起こっていることですが、私個人の確定申告書を見ただけで、ミクロレベルでも起こっていることがよく分かる。

これが良いことなのか悪いことなのかは一概には言えません。しかし、少なくとも資本主義生産様式を前提とすれば、当然の帰結です。だから、こうした厳しい現実の中で庶民が生き抜くために、やはり「投資」ということをもう一度真剣に考えないといけないと思う。そうでなければ、短期的にも長期的にも格差が広がるばかりでしょう。もはや「投資」は、お金持ちのためだけにあるのではなく、庶民にこそ必要不可欠なものにならないといけないのだと思うのです。

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