2018年1月18日

インデックスファンドの「商品性の評価」と「運用内容の評価」―実質コストと「配当込み」ベンチマークの重要性



このほど発表された「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」について、多くの投信ブロガーさんがまとめ記事を書いていますが、楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元さんも総括記事を書いています。

速報:投信ブロガーが選ぶ「Fund of the Year 2017」を徹底解剖!(楽天証券「トウシル」)

「つみたてNISA」効果やバンガードのブランド力など私が感じていたこととほぼ同じで大いに共感しました。その上で、いかにも山崎さんらしい鋭い指摘もあります。それは、ファンドを評価する場合に「商品性の評価と運用の評価」をどのように両立するのかという問題です。こういった観点が提唱されるようになるほど、投信ブロガーの“ファンドを見る目”への信頼感が高まっているということでしょうか。

今回のFOY2017でもトップ10には非常に良心的なファンドばかり選ばれました。いずれも極めて低コストであり、投資対象としても王道的なものが多く、いずれも「優れた商品」と言って差し支えないでしょう。ただ、山崎さんは次のようにも指摘しています。
TOP10のファンドの6本が昨年の新規設定商品であったことからも分かるように、投信ブロガーのファンドに対する評価は、もっぱらファンドの商品性に対する評価であって、運用内容に対する評価の要素は乏しかった。
確かにトップ10に選ばれたファンドの多くは、信託報酬の安さと引き下げ実績・方針、投資対象など商品性が評価されたものがほとんどです。一方、運用内容の評価も含めて選ばれたとすれば、それこそアクティブファンドで唯一トップ10にランクインした「ひふみ投信」ぐらいでしょうか。ただ、アクティブファンドはもともと運用内容が評価の大部分を占めるわけですから当然と言えば当然です。では、インデックスファンドの運用内容の評価はどうするべきか。この点に関して山崎さんは次のように述べています。
低コストが売りのインデックス・ファンドであっても、指数からのズレ具合の小ささや、信託報酬以外にも売買コストなどの手数料を含めた「経費率」の優れたファンドを評価する情報提供があってもいい。ファンドの商品性の評価と運用の評価を混ぜることが可能なのか、また、できたとして望ましいのかは難しい問題だが、考えてみたいポイントだ。
つまり、実質コストやベンチマークとなる指数に対してどれだけ乖離せずに運用できているかという精度を評価すべしということです。こうした視点は今後、ますます重要になると思う。なぜなら、いまやインデックスファンドの低コスト化は、恐らく現在の日本での投資信託の市場規模から考えてほぼ限界に近いレベルにまで低下しているからです。つまり、コストに代表される商品性の評価では、実質的な差がだんだんとなくなってきた。実際に信託報酬の差が数ベーシスポイントなら、それこそ実質コストの多寡で、その差が逆転することもある。あるいは、ほんのわずかな指数からの乖離でもリターンに信託報酬の差以上の違いが出てくることになるでしょう。

もっとも、はたしてそういったかなり高度な視点までも個人投資家が持ってファンドを評価をすべきなのかという問題があります。そういう難しさも含めて山崎さんは「考えてみたいポイントだ」と言っているように思えます。ただ、少なくとも(私も含めて)投信ブログを書くようなマニア的なインデックス投資家は、やはりファンドの評価に運用内容の評価も含めるべきなのかもしれません。例えば新規設定されたファンドに対しては、最初の決算を経て実質コストが明らかになるまでは評価しないという姿勢が必要なのかもしれないのです。

そしてもう一つは、運用精度を評価するためにもベンチマークは「配当込み」指数であることの重要性が高まっていると思う。株式指数には「配当込み」と「配当除く」がありますが、「配当込み」指数に連動するインデックスファンドは、基準価額が信託報酬分だけ指数から下方乖離します。一方、「配当除く」指数に連動するインデックスファンドは、純資産残高に配当収入が含まれますから、例え分配金が出たとしても分配金再投資基準価額が指数に対して上方乖離していきます。そして、運用の精度を確認しやすいのは、圧倒的に「配当込み」指数をベンチマークとするインデックスファンド。なぜなら、指数からどれだけ下方乖離するかは、信託報酬や実質コストという形で明示されていますから、運用報告書を読み込むことで比較的簡単にベンチマークからの乖離の多寡も知ることができるのです。

一方、「配当除く」指数をベンチマークとするインデックスファンドは指数から上方乖離した部分のどこまでが配当の影響であり、どこまでが運用によるものなのか明確には分かりません。だから事実上、「配当除く」指数をベンチマークとするインデックスファンドの運用精度を確認することは、少なくとも運用報告書を読むだけでは不可能なのです。もちろん、日々の基準価額変動から自力でベンチマークとの乖離を算出するといった方法はあります。しかし、それは既に個人投資家がやれる作業の域を超えているでしょう。こう考えると、ファンドの運用精度にこだわる人は、たとえ信託報酬が最安値でなくても、やはり「配当込み」指数をベンチマークとするインデックスファンドを選ぶのが好ましい。信託報酬の多寡は商品性の評価にとって重要ですが、ベンチマークが「配当込み」指数であることは運用内容の評価のために必要だからです。

なぜこんな細かい話をくどくど書くのかというと、じつは私自身はこれまでインデックスファンドのベンチマークが「配当込み」なのか「配当除く」なのかをあまり重視してきませんでした。基本的に好みの問題だと思っていたのです。それよりも信託報酬の低さやファンド運営の方針などを重視していました。つまり、商品性の評価に重きを置いていた。しかし近年のインデックスファンドの急激な低コスト化を体験し、少しづつ考え方が変わってきました。信託報酬に代表される商品性の評価の差が極めて小さくなったことで、改めて運用内容の評価というものも重く考えるべきという思いが強くなったのです。

だから、山崎さんが指摘するように今後はインデックスファンドを評価するときに「商品性の評価と運用の評価を混ぜること」がもっと必要になってきたのではないでしょうか。両者のバランスの中で総合的に評価するべきということです。もちろん、こういった考え方はあくまでブログを書くような投信マニアだけの問題なのも事実です。普通の人は単純に商品性の評価だけでファンドを選んでも大きな間違いにはなりません。ただ、インデックスファンドの評価により高度な視点が求められるようになり、それが大きな意味を持つようになったということ自体が、それだけ甲乙つけがたい優れたファンドが増えたことを意味しています。だから、今回書いたような悩みは、それこそ嬉しい悲鳴なのです。そうした中で、ファンドが良くなっていくように投資家も見る眼を磨いていかなければならないと思うのです。
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