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2017年10月27日
対面型証券・銀行でも投資信託の購入手数料が無くなるとき
2018年1月から始まる「つみたてNISA」に向けて証券・銀行も急ピッチで商品ラインアップの整備を進めています。金融機関によって取り扱う「つみたてNISA」対象商品数がまったく異なるのですが、この点ではモーニングスターの専門サイト「つみたてNISA総合ガイド」が非常に便利。金融機関ごとに商品ラインアップの詳細を簡単に知ることができます。
つみたてNISA総合ガイド(モーニングスター)
「金融機関比較」のページを見ると、やはりネット証券が多数の商品をそろえるのに対して、対面型証券や銀行の商品数は少ない。ただ、それでもすべての商品が低コストであり、購入手数料無料(ノーロード)というのが「つみたてNISA」の特徴。これは案外、日本の投資信託の販売に大きな影響を与える可能性があるのでは。
「つみたてNISA」対象商品は金融庁が定めた規定をクリアする必要があるので、すべて低コストな商品となります。このため商品ラインアップが少ない金融機関で購入しても、例えば確定拠出年金のように、いわゆる"地雷"商品を選んでしまう危険性がまるでありません。だからネット証券に不慣れな投資初心者が馴染みの対面型証券やメガバンク、地銀で「つみたてNISA」を初めても、大きな間違いにならないわけです。
「つみたてNISA」対象商品のもう一つの大きな特徴は、すべてノーロードだということ。案外、これが日本の投資信託の販売に凄い影響を与えるのでは。ノーロードのファンドを当たり前のように買っているネット証券のユーザーにはピンとこないかもしれませんが、じつは日本ではまだまだ投資信託は購入手数料がかかるものだと思っている人が少なくありません。とくに対面型証券や銀行で投資信託を購入している人にとって、購入手数料の存在というのは自明のものであったりします。
ところが「つみたてNISA」では、大手証券や銀行での対面販売でもノーロードが前提となる。「つみたてNISA」を通じて初めてノーロードファンドの存在を知る人も出てくるのではないでしょうか。このインパクトは無視できません。なにしろ、いままで店頭で普通に購入手数料を支払って投資信託を購入していた人たちが、同じ店頭販売であるにもかかわらず「つみたてNISA」ではノーロードでファンドを購入することを経験するわけです。一旦その経験をした人が、引き続き通常の口座で投資信託を購入するときに大人しく購入手数料を支払うでしょうか。そんなことはまずないと思う。
いわば「つみたてNISA」によって対面型証券や銀行は、よほど特別なサービスを提供しない限りは購入手数料を取ることが難しくなる。それは事実上、対面型証券・銀行でも投資信託の購入手数料が無くなるという動きを促進するような気がします。またもや金融庁は巧妙な仕掛けで投資信託の購入手数料という制度自体を無効化しようとしているとさえ思えます。
こうしたことを考えても「つみたてNISA」は日本における投資信託の販売のあり方を大きく変えることでしょう。なぜなら、そもそも金融機関が手数料を取ること自体は悪ではない。しかし、その合理性が問われる。金融機関が手数料を取るために契約者に提供するべきサービスは何なのかということが問われる。金融機関は本当の意味で手数料の合理性について真摯に自省することが求められるのです。それは同時に、金融機関が今後も生き残るために絶対に必要なことでしょう。だから「つみたてNISA」というのは、金融機関にとってもじつに有益なトレーニングの機会を提供してくれる制度なのかもしれません。