2017年8月23日

新興国通貨が意外と落ち着いている



インドネシア出張も2日目が終わり、中盤に入りました。あいかわらず交通渋滞がひどく、まったくスケジュール通りに移動できないのがこの国の特徴。まあ、訪問先も事情はよく分かっているので、アポイント時間に多少遅れても慌てる様子がありません。この辺りがインドネシアならではの感覚といったところでしょうか。さてそのインドネシアなのですが、半年ぶりに訪問して改めて感じたのが、通貨ルピアが意外としっかりとしているということ。新興国通貨といえば何かあるとすぐに下落するものだったのですが、最近は様子も変わってきました。なんとなく新興国の通貨がいつまでも弱いままだと思っていてはいけないのかもしれません。

2017年に入ってインドネシアの景気は良くもなく、悪くもなくといったところ。1~6月の実質GDP成長率は5%台前半と政府予測からは下振れしていますが、インフレ率も3%台後半に止まっていますから、全体としては落ち着いた状態と言えそうです。インドネシアはGDPの約半分が民間消費という国であり、やはり旺盛な個人消費が経済成長を下支えする構図が続いています。

とくに面白いのがインドネシア・ルピアの相場が落ち着いていること。現在、1ドル=13000ルピア台で安定しています。インドネシアは貿易収支・経常収支ともの赤字ですから、本来ならもっとルピア安が進んでもおかしくありません。ところがそうならないのは、資本・投資収支が黒字となり、国際収支全体でも黒字を維持しているから。とくに証券投資による資本流入がルピア相場を下支えしています。

このため現状では若干のルピア高傾向となっていて、これ以上のルピア高は輸出競争力の低下を招くとしてインドネシア中央銀行がドル買い・ルピア売りの為替介入をしているようです。実際に外貨準備高は今年6月に1278億ドルとなり、過去最高を更新しました。インドネシア中銀の為替介入といえば昔は通貨防衛のためのドル売り・ルピア買いが多かったのですが、いよいよインドネシアも自国通貨高を心配しなくならなくなったとはちょっと驚きました。

こうした状況を実際に目にすると、新興国通貨といえば長期的には下落するもの決めつけるのも考えものです。なぜなら為替相場を左右する資本循環構造は変化していくものだからです。確かにインドネシアの場合、現在の為替相場を支えているのは海外からの資本流入ですから、やはり外的要因によって大きく変化すると言えます。しかし、貿易収支の赤字も少しづつ減少しているのも見逃せません。もし経常収支が黒字化すれば、一気にルピア高となる可能性を秘めているわけです。

私は新興国投資大好き人間なのですが、新興国へ投資する面白さのひとつは、旺盛な経済成長への期待だけでなく、資本循環構造の変化によって通貨が強くなること。新興国投資の最大の弱点は通貨の弱さですから、これさえ克服できれば、極めて有望な投資先となるのです。改めて「いつまでも新興国通貨が弱いままとは限らない」ということを肌感覚として得ることになりました。

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