2017年6月26日

「i-mizuho東南アジア株式インデックス」の第4期運用報告書を読む―好調な成績も実質コストが高い



私は個人的に東南アジアへの投資が好きなので、インデックス投資でもポートフォリオの新興国株式クラスの中で東南アジア株式をオーバーウエートしています。そこで愛用しているのがブラックロック・ジャパンのインデックスファンド「i-mizuho東南アジア株式インデックス」。このほど第4期(2016年5月3日~2017年5月2日)の運用報告書が交付されたので、さっそく目を通してみました。この期は株価の堅調さに加えて現地通貨の上昇もあったので騰落率は+15.2%と良好でした。今回も分配金を出さなかったのも良い判断だと思います。ただ気になることも。ちょっと実質コストが高いのです。

2016年初めまで新興国全体の不振もあって低迷した東南アジア株式ですが、5月から緩やかな上昇となり、16年末から17年初にかけてはトランプ相場による世界的な株価上昇の恩恵も受けています。このためベンチマークであるFTSEアセアン40インデックス(円換算ベース)は+14.2%の上昇となりました。ファンドの騰落率との差はベンチマークが配当含まずだからです。

「i-mizuho東南アジア株式インデックス」は、比較的低廉な信託報酬で東南アジア株式に投資できる貴重なインデックスファンドです。なにしろこのファンドが登場するまでは、東南アジア株式に投資するためには高コストなアクティブファンドしかありませんでした(実際に私は一時、「アセアン成長国株ファンド」を買っていたくらいです)。その意味でなかなか気に入っているファンドです。ただ、運用報告書を読むとやや気にる点も。実質コストが非常にかさんでいる。第4期の税込費用明細は以下のようになっています。

信託報酬:0.68%
売買委託手数料:0.081%
有価証券取引税:0.024%
その他(保管・監査・その他)費用:0.354%
実質コスト合計:1.139%

第3期の実質コストが1.042%でしたから、コストが増加しています。その理由は「その他費用」がかさんでるため。とくに保管費用が0.253%となり、やはり前期実績の0.159%を上回っています。おそらく理由は為替要因でしょう。保有資産の保管は現地金融機関が担いますので、実際の費用は現地通貨払いのはず。前期は現地通貨が大きく下落していましたが、今期は逆に上昇していますから、その分だけ円換算で費用が増加してしまったのだと思います。また、純資産残高が期末段階で8億8700万円しかないことも影響したでしょう。「i-mizuho東南アジア株式インデックス」はマザーファンド方式ではなく、このファンドが直接投資する形式ですから、純資産残高の少なさの悪影響がもろにコストに跳ね返っているのです。

やはりこのあたりが新興国株式に投資する難しさでです。新興国は資本規制や金融機関への規制の関係もあって、どうしてもコストが割高になりやすい。ファンドの規模が小さいと余計に口数当たりの費用負担もかさんでしまうのです。その意味では現状では仕方がない面もあるのです。あとはもっとファンドの規模が大きくなって、実質コストが低下することを期待したいと思います。

ところで私がなぜ東南アジア株式への投資が好きなのかと言うと、仕事の関係で定期的に現地を訪れることが多く、実感としてそのポテンシャルに魅せられたから。それともうひとつは、新興国株式インデックスに投資する場合に一般的なMSCIエマージング・インデックスに投資するインデックスファンドだと、中国、韓国、台湾のウエートが合わせて5割近くある(中国企業のケイマン諸島籍ADR含む)。また、まもなく中国本土上場の人民元建て株式である中国A株も組入れられるという流れがあります。

MSCI:中国A株を新興市場指数に組み入れへ-地位向上へ前進(ブルームバーグ)

今後、ますます新興国株式インデックスにおける中国のウエートは高まっていくでしょう。もっとも、これはこれで現在の新興国株式の時価総額加重平均による姿ですから別に悪いことではありません。ただ、個人的にちょっとひっかかるものがある。例えば中国A株は現在でも相場が混乱すると突然に取引停止になったりしますから。そういうことも含めて、中韓台のウエートを相対的に落とすために東南アジア株式をオーバーウエートしているわけ。あくまで個人的好みによるアクティブな判断に基づく運用戦略です。

そういった個人的な投資戦略の面でも「i-mizuho東南アジア株式インデックス」は貴重な存在。実は最近、少しだけ買い増しました。年に数回、スポットで購入することでポートフォリオのウエートを調整しました。引き続き愛用していこうと思います。

【ご参考】
「i-mizuho」シリーズは元々、みずほ銀行・みずほ証券専用ファンドでしたが、現在は主要ネット証券でも購入することができます。⇒SBI証券楽天証券カブドットコム証券マネックス証券

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