2017年6月25日

「投資の鉄人」トークイベントに参加しました―生活者としての常識を鍛えよう



先日、梅田・蔦屋書店で開かれた「資産運用で大切な4つのこと」『投資の鉄人』著者4人によるトークイベント&サイン会に行ってきました。岡本和久さん、馬渕治好さん、竹川美奈子さん、大江英樹さんという“投資の鉄人”が、個人投資家を惑わす「情報」「相場」「商品」「自分」という4つの罠について語ってくました。とはいえ、投資の鉄人が強調しているのは何も難しいことではなりません。共通するのは、「生活者としての健全な常識を鍛えろ」ということでしょう。

今回のイベントは、4人による共著『投資の鉄人 』の関連イベントです。それぞれの担当テーマである「情報に惑わされない」「相場に惑わされない」「商品に惑わされない」「自分に惑わされない」について、本に書かれている内容のエッセンスを語ってくれました。



トップバッターの馬渕治好さんは「情報に惑わされない」として個人投資家にもたらされる様々な情報にどのように接するかを語ります。とくに印象に残ったのが「なぜ投資をするのかを考えないといけない。その条件は個々人で異なる。つまり、全員に正解となる情報はない」という指摘です。これは非常に大事なことで、明らかなフェイク情報は別にして、投資に関する情報というのは、ある一面から見れば正しいもの。問題は、それが自分にとって有益なものか、有害なものかを選別することです。だからこそ、情報を選別する基準として「なぜ自分は投資するのか」「どういった条件で投資をしたいのか」ということを常に自分の頭で考えないといけないのです。また、金融機関がもたらす情報にはバイアスがかかっていることを指摘していますが、同時に金融機関の言うことを100%否定するのも「思考停止だ」と諫めるあたりは、大人の投資家の姿勢としてカッコいいです。

岡本和久さんは「相場に惑わされない」として株式の相場に接する際に、株価と企業の本質的価値を峻別することの大切さを説いています。。岡本さんは「投資の重要な目的のひとつが退職後の経済的基盤を作ることであり、そのためには人生を通して行う長期投資が必要だが、その方法は簡単。全世界の株式と債券に分散投資するインデックスファンドを積み立てるだけ」だと言います。しかし現実は簡単ではない。「最大のリスクは、途中で止めてしまう」からです。なぜ止めてしまうのか。「株価ばかり見て、それに惑わされるから」。だからこそ「株価は、投資家の欲望と恐怖が生み出す影であり、実体価値とは異なる」というのは、とても大切な指摘です。さらに株式市場というのは、売買だけを切り取った流通市場として見れば、それはゼロサムの世界であり、売買手数料を控除すればマイナスサムの世界だというのも重要な指摘でした。だからこそ株式投資による収益の根源的源泉は企業の成長しかありえず、ここに長期投資の必要性が論理的に導き出されるのです。

また、「株価を見るのではなく、ポートフォリオの資産配分だけを見る」という考え方を強調していたのも印象的。ここでは岡本さんの体験談が紹介されました。岡本さんは全世界の株式と債券を50:50の割合で保有しているそうですが、リーマンショックなどのとき株価が大幅に下落したことで株式のウエートが大幅に低下しました。そこで岡本さんは淡々と株式を買い増して配分を戻した。結果的に安いところで株式を買ったことになり、その後の相場回復でリターンも増えた。別に将来の株価回復を予想したわけでもない。ましてや、“暴落したときに買って儲けてやろいう”といった狡い考えもない。これが大人の運用というものです。こういったなんの衒いもない、それでいて王道中の王道を行くやり方というのは、やはりカッコいい。

竹川美奈子さんは「商品に惑わされない」として岡本さんが推奨するような“全世界にパッケージとして投資とする”ツールとしてのインデックスファンドとETFについて紹介しました。面白かったのは、個人投資家でも買うことのできるインデックスファンドが本格的に登場したのは2000年代に入ってからだという指摘。個人投資家がインデックスファンドによる国際分散投資をできるようになったのは、たかだかこの10年ほどのことなのです。だから「今からインデックス投資を始める人は、環境が整備されていて幸せなこと」という言葉は、古くからこのテーマを追ってきた人ならではの感慨でしょう。また、アクティブファンドの難しさについても話題が及びましたが、この問題は本当に難しい。結局のところ、やはりポートフォリオのコアはインデックスファンドやETFを使い、アクティブファンドはサテライトとして自分が本当に欲しいと思ったファンドを少数だけ買うべきということになります。

トリは大江英樹さん。行動経済学の観点から「自分に惑わされない」ための方法について語ってくれました。大江さんは「投資商品と他の商品の決定的な違いは、結果がすぐに見えてしまうこと」と言います。普通の商品でしたら、使っていく中で少しずつ良し悪しが見えてくるのですが、株式や投資信託は購入した翌日から値段が変化し、自分が得しているのか損しているのかが見えてしまう。そこで人は心理的に間違うのです。よく「投資は10勝1敗でも損をする」というのは、儲かっているときはすぐに売ってしまい、損しているとなかなか売ることができないからですが、これは行動経済学でいうところのプロスペクトル理論で解釈できる。「人は本質的に損失回避的な行動をとる」ため、利益が出ているときは、その利益を失いたくないがために早めに利確してしまい、損しているときは回復を期待してなかなか損切りができないということです。だからこそ大江さんは「投資は仕組み化・ルール化することが必要」と言います。また、人間の心理の動きは実際に体験しなければ分かりません。なので、投資は実際に体験しないことには、仕組みもルールも作れない。「ここにこそ積立投資の意義がある。まずは少額でスタートし、そこで体験しながら、自分に合った投資の仕組み・ルールを作ることができる」ということです。

4人の話を聞いて改めて感じたのは、いずれも特段に複雑な理論などを話しているわけではないということです。いずれも常識で判断することができる内容です。ところが世間では、こと投資の話になると急に常識で判断することができなくなる場合が多い。例えば金融機関から複雑な金融商品を薦められたときに、よく理解せずに買ってしまう人がいるわけですが、普通の商品を買う場合に、それが何なのかを理解せずに買うことがありえますか? あるいは異常な高金利につられて投資したら、それが詐欺だったというような事件も後を絶ちませんが、他と比べて異常に高金利というだけで、やっぱり「怪しい」という常識を働かせるべきなのです。

トークイベントの中で金融機関の姿勢について話題が及びましたが、「最終的には個人投資家が賢くなって、不利な商品を薦める金融機関を相手にしなくなることで、そういった金融機関が淘汰されるようになるべき」という結論に至りました。しかし、「個人投資家が賢くなる」というのは、なにも難しい理論を理解することではありません。それよりも「生活者としての健全な常識を鍛える」ことなのです。それができれば、だれでも「投資の鉄人」になれるのではないでしょうか。

さて、イベントの最後にはサイン会があって、4人からサインをもらいました。



とくに今回は、岡本さんにお会いできたのが嬉しかった。投資に関して私はいろいろな人から影響を受けましたが、とくに資産形成・運用をトータルに捉える考え方では岡本さんの本から最も影響を受けています(関連記事:『公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。』―これから投資を始めようとする人は必読 )。名刺もいただき、その後にFacebookでメッセージのやり取りもさせていただきました。ぜひまた大阪に来て欲しいものです。

イベント終了後、たまたま会場に居合わせたくは72さん、cafeさん、そして労働組合の勉強会でお世話になったFPの松本真由美さんとなんとなく流れで飲みに行くことに。こういう交流も楽しいね。これも含めて、充実したイベントでした。
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