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2017年5月12日
そろそろインデックスファンドの新規設定も打ち止めに
モーニングスターになかなか興味深い記事がアップされました。
インデックスファンドシリーズ勢力図―熾烈なコスト競争、古参の逆襲開始?(モーニングスター)
ここ数年、インデックスファンドの純資産総額が大幅に増加し、ファンド間の競争も激化したことでコストが大幅に低下しているということです。同時に、インデックスファンドシリーズの勢力図も大きく変わったということです。「SMT」や「eMAXIS」といった古豪ファンドのシェアが低下し、「ニッセイ」「三井住友・DC」「たわらノーロード」「iFree」といった新しいファンドへの資金流入が続いています。やはりインデックスファンドというのは、コストが安くないとまったく競争力を発揮できないといういい例でしょう。一方、記事の指摘とは別の印象も持ちました。それは、インデックスファンドの数があまりに多すぎるということです。
私がインデックス投資を開始した2013年初頃ですが、当時は「SMT」「eMAXIS」「インデックスe」「Funds-i」の4シリーズから選ぶというのが一般的でした。ところがその後、さらに低コストなファンドとして「ニッセイ」「たわらノーロード」「iFree」などが登場したことで投資家の多くが乗り換えを進めました。私自身の積立設定を見ても、以前は「SMT」と「eMAXIS」を積み立てていたものが現在は「ニッセイ」と「たわらノーロード」に変更しているわけですから、こうした動きは一般的だったということです。
こうした中、この10年でインデックスファンドの純資産総額は10倍になり、とくにこの5年間で信託報酬は半分にまで低下したことになります。インデックス投資家にとっては、実に投資しやすい環境が整備された10年間だったということができるでしょう。まだまだ市場全体で見ればインデックスファンドのシェアは大きくはありませんが、確実に普及しつつあることは確かです。
一方、気になったこともあります。純資産総額が10倍になる中、ファンドの本数も4倍になっているということです。現在、日本のインデックスファンドの数は約150本とのことですが、さすがにこれは多すぎる。なかには一時代前のコスト水準のままで純資産も増えずに放置されているファンドも少なくありません。なぜこんなことになったのかというと、やはりコスト競争が常にファンドの新規設定によって行われてきたからです。そこには信託報酬を引き下げるために運用会社だけでなく受託会社(信託銀行)、販売会社(銀行・証券)の同意が必要であり、それがなかなか得にくいという日本の投資信託の特殊な理由がありそうです。
改めて思ったのは「そろそろインデックスファンドの新規設定も打ち止めにしては」ということです。せっかく良心的なインデックスファンドシリーズを作っても、コスト競争のために新たなファンドを設定し、既存ファンドを使い捨てにするのはもったいない。そもそも既存ファンドにも受益者がいるわけですから。やはりファンドのコスト競争の王道は、既存ファンドの信託報酬を引き下げることです。そういう本当の意味でのコスト競争が日本でも当たり前になって欲しいものです。
そして、そういったことを実行する環境は整ってきたと思う。モーニングスターの記事に記載されている現在のインデックスファンドシリーズのシェア分布に載っているファンドを運用しているのは、三菱UFJ国際投信、三井住友トラスト・アセットマネジメント、三井住友アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメント、野村アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、ブラックロック・ジャパン、SBIアセットマネジメント、大和証券投資信託委託です。つまり、主要運用会社のほとんどすべてが“看板”となるインデックスファンドシリーズを持っていることになる。ならば今後は、この“看板”シリーズを大切に育てながらコスト競争を戦って欲しい。
実際にそういた動きに舵を切った運用会社も現れました。ニッセイAMは「ニッセイ」シリーズの信託報酬を断続的に引き下げ、既存ファンドでコスト競争を戦ってきた実績があります。そして三菱UFJ国際投信は「eMAXIS Slim」を登場させることで、逆説的ですが今後は既存ファンドの信託報酬引き下げによってコスト競争に参戦することを明言しました。こうした姿勢が他の運用会社にも広がれば、日本のインデックス投資をめぐる環境も、もっともっと素晴らしいものに育っていくと思えるのです(そのためには、やはり販売会社の意識改革が必要だと思いますが)。