2017年4月15日

「リスク許容度」と「リスク選好」は別物だよ



投資ブログなどをやっていると、定期的に一括投資と積立投資の優位性・有効性についての議論が起こるのですが、どうも議論がかみ合わないことが多いです。その原因を考えていて気づいたのが、どうも「リスク許容度」と「リスク選好」が別物だということを明確にしたうえで議論していないからがかみ合わないのではないかと感じた次第です。一括投資と積立投資では、どちらが有利・不利なのかはタイミングや相場の状況次第だけど、「リスク選好」の観点から考えると、やっぱり投資初心者には積立投資の方がお勧めしやすいのでは。

辞書的な意味で「リスク許容度(risk tolerance)」というのは「投資家の許容できるリスクの範囲」のことです。一方、「リスク選好(risk appetite/risk tolerance)」というのは「リターンを得るためにどれだけのリスクをとろうとするかという意欲」のこと。だからリスク許容度とリスク選好の度合いというの似ているけど、微妙に異なります。

例えば、投資額の30%まで損しても別に生活が困らずに投資を続けることができるはずのAさんとBさんがいたとします。この場合、二人のリスク許容度はマイナス30%まであることになります。しかし、Aさんはマイナス50%になって日常生活が苦しくなっているのに投資を止めようとしません。一方、Bさんはマイナス20%の損で怖くなって投資を止めてしまった。この違いが「リスク選好」の度合いの違いです。

Aさんは「リスク許容度」よりも「リスク選好」の度合いが高いので、リスク許容度を超えて投資するというミスを犯してしまう。一方、Bさんは「リスク許容度」よりも「リスク選好」の度合いが低いので、必要以上に投資に対して消極的になるということです。この場合、前者は論外。まずは自分の「リスク許容度」の範囲内で投資するようにしなければなりません。問題は後者です。「リスク選好」の度合いが低い人に第三者がいくら「それぐらいの損、たいしたことないよ」といって慰めても、効果があるとは限らないのです。

「リスク許容度」と「リスク選好」の度合いが別物だということを理解すれば、一括投資と積立投資についての議論もだいぶ整理されるでしょう。「リスク許容度」の観点から見れば、一括投資も積立投資も大して差はありません。投資額が常にリスク許容度の範囲に収まっているかどうかが大切だからです。そして儲かるかどうかは投資タイミングと相場変動のボラティリティの推移次第です。また、投資効率を考慮すれば一括投資の方が合理的です。そして、投資効率が高いからと言ってリターンが向上するとも限りません。

一方、「リスク選好」の度合いという観点から考えると、一括投資と積立投資には大きな違いがあります。なぜなら「リスク選好」の度合いというのは実際に投資してみないと分からない場合が多いから。損をしてから初めて自分の「リスク選好」の度合いに気づく。だから投資初心者が一括投資で大きな資金を投じてしまうと、損をしたときに初めて自分の「リスク選好」の度合いの低さに気づき、損がリスク許容度範囲内でも心理的にダメージを受けるケースがあるわけです。それで「やっぱり投資は怖い」となる。

ここに投資初心者には、まず積立投資が勧められる理由がある。積立投資なら少額からの投資となり、その後に少しずつ投資額を積み重ねながら実際の相場の価格変動を体験できます。これは投資を開始した初期段階では「リスク許容度>リスク選好の度合い」の状態で投資をする形になります。この状態でだんだんと自分の「リスク選好」の度合いが分かってくれば、初めて冷静に「リスク許容度」の範囲内で投資することができるわけです。逆にどんなに損しても気にならず、もっと投資額を増やしたくなる人は要注意でしょう。そんな人は「リスク許容度」よりも「リスク選好」の度合いが高い可能性があるので、積立投資でも控えめな資金投入を心がける必要があります。

また、「リスク選好」には慣れの要素もありますから、投資に慣れてくれば、「リスク選好」の度合いも高まってきます。そうなれば、やはり自然と「リスク許容度」と「リスク選好」の度合いを一致させながらの投資ができるようになる。そうなれば、かなりの投資上級者の仲間入りでしょう。そいう人は一括投資でも積立投資でも好きなように投資できるわけで、それこそ積立投資と一括投資を併用している人は少なくありません。

ようするに自分の「リスク選好」の度合いが分からないような投資初心者は積立投資から始めた方が“安心”だということ。もっと言うと「積立」という方法自体よりも、まずは少額で始めて、自分の「リスク許容度」と「リスク選好」の度合いのギャップを確認しながら投資を続けることができるという点で積立投資は投資初心者には「有効」(「有利」とは違う)だということになります。

だから、一括投資と積立投資の有効性についての議論というのは、結局は「リスク選好」の問題です。積立投資の有効性を指摘する人は、「リスク選好」の度合いを重視しているということになる。そして、その発想はある程度正しいと思う。なぜなら「リスク選好」の度合いというのは人によって大きく異なるのだから。「リスク選好」の度合いが人によって異なるがゆえに、それを前提に“安心”して投資を始めることのできる方法として積立投資の「有効性」には一定の普遍性があるのだと思います。
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