2017年3月7日

信託報酬の引き下げは売名行為なのか―「日経ヴェリタス」で紹介されました



海外出張中に発行されていたのですっかり古新聞になってしまいましたが、「日経ヴェリタス」2017年2月19日号の63面に掲載されている金融記者座談会「放電塔」というコーナーで私のコメントが少しだけ掲載されました。今回のテーマは「三菱UFJ国際投信が「奇策」新商品 「信託報酬いつも最安」の下心」の見出しで三菱UFJ国際投信の超低コストインデックスファンド「eMAXIS Slim」についてなかなか穿った議論が展開されています。「eMAXIS Slim」の設定については個人ブロガーの間でも様々な意見があったわけですが、さすが専門紙だけあって業界の内幕に踏み込んだ情報も記載されていたので、そちらの方が私のコメントよりも注目だと思います。

三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」については私もブログでけっこう熱く語ってしまいました。

MUFGは恐ろしいことをやろうとしている―eMAXISの信託報酬が"業界最低水準"に引き下げられるとの報道
「eMAXIS Slim」登場の歴史的意味―インデックスファンドの低コスト競争は新たな局面に入った

これを読んだ記者さんが座談会の中でネットでの議論のひとつとして、次のように紹介してくれました(「大阪在住の投資家」という肩書がこそばゆいです。たしかに私も投資家の端くれかもしれませんが、メチャメチャ弱小の投資家ですから)。



かなり穿った見方をしていると自覚しているのですが、専門紙の記者さんから見てもそれなりに説得力があったようで安心しました。実際に私が予想したように、「eMAXIS Slim」はインデックスファンドの低コスト競争のアンカー(重石)としての役割を果たしそうな予感が強まっています。

ただ、私のコメントよりも面白いのは「eMAXIS Slim」登場に対する他の運用会社の反応が紹介されていることでしょう。例えばネットでも話題になった既存の「eMAXIS」と"一物二価"の状態となったことや、eMAXISの受益者が切り捨てられたと不満に感じていることを紹介した上で、ライバルであるニッセイアセットマネジメントの結城宗治氏が次のような反応を示したと紹介されています。
結城宗治氏は「販社との手数料引き下げ交渉は大変だが、既存の投資家を置き去りにはできない。あくまでいまある商品の手数料引き下げにこだわる」と暗に批判していたよ。
なかなかニッセイAMの態度は立派です。ぜひ今後も既存ファンド(具体的には〈購入・換金手数料なし〉シリーズのことでしょう)の信託報酬引き下げにこだわって欲しいと思います。

一方、昨今の低コスト競争に対してネット証券からも批判的な声が上がっているとして、次のようは記者の発言で座談会は締めくくられています。
ネット証券の幹部は「そもそもこういう手数料競争はおかしい」と話していた。米国で投信の手数料が下がったのは純資産残高が積み上がり、浮いた運用コストなどを投資家に還元する好循環の結果。ところが日本は、純資産が米国ほど増えていないのに信託報酬だけが下がる。しかも信託報酬の引き下げはインデックス投信だけで、毎月分配型のアクティブ投信などは手つかずだ。この幹部が「顧客本位」の営業を金融庁にアピールする「売名行為」と呼んだのも、うなずけけるよね。
このネット証券がどこなのか分かりませんが、これはこれで正論かもしれません。

では、現在繰り広げられているインデックスファンドの低コスト競争は、はたして「売名行為」なのでしょうか。もしかしたらそうした側面が確かにあるのかもしれません。しかし、私は「売名行為」でも別にかまわないと思っています。ただし、それは投資家にとって利益があるなら何でもOKといった考えからではありません。そうではなくて、たとえ運用会社の「下心」が根底にあったとしても、それが結果的に日本の投資環境や運用業界の問題を解決する方向に向かわせる契機となっているからです。そこでは運用会社の意図とは無関係に、ある種の歴史的役割を担ってしまっている。それこそヘーゲル的な言い方ですが、一種の「理性の狡知」の現れだといえるのです。

座談会が非常に面白かったわけですが、せっかくコメントを紹介してくれたのですから宣伝もしておきたいと思います。今回の「日経ヴェリタス」の巻頭特集は「黄昏マンション市場 富裕層も息切れ 値崩れあるか」と、実に興味深い内容でした。いろんな意味で読みたい内容です。すでに駅売りなどは終了していますが、Amazonなどではバックナンバーが買えますので、関心のある方は一読してみてはいかがでしょうか。



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