2017年3月9日

素晴らしい運用成果に驚く―ひふみ投信の2017年2月の運用成績



「カンブリア宮殿」登場ですっかり有名になった「ひふみ投信」ですが、以前からファンドを購入している立場からすると、なんとも不思議な気分です。注目を集めるのは喜ばしいことだけど、どこかで知る人のみぞ知るファンドであって欲しかったという思いもあるのですから皮肉なものです。さて、2017年2月次運用報告が出たので定例ウオッチです。「ひふみ投信」の2017年2月の騰落率は+3.4%、参考指数であるTOPIX(配当込み)の騰落率は+0.9%でした。前月に続いて参考指数を大幅にアウトパフォームする素晴らしい運用成果に驚きました。2月28日段階での純資産残高は403.0億円(前月は376.3億円)、受益権総口数は10,585,691,409口(前月は10,225,942,798口)となり、こちらも大幅に拡大しています。

トランプ相場も一段落したこともあり、日本の株式市場は一進一退といった状況ですが、こうした中、「ひふみ投信」は半導体関連銘柄にオーバーウエイトする戦略を続けたことが好成績につながったようです。ファンドマネージャーの藤野英人氏も次のようにコメントしています。
国内の景気動向も、一昨年末からの停滞期を脱して、再浮上する兆しが見えつつあります。特に世界的なデーターセンターの建設ラッシュを背景としたPC需要、半導体需要の盛り上がりは、日本においても半導体関連企業の設備投資の増加という形で業績の変化が目立つようになりました。
現在、半導体関連は世界的に大規模な設備投資が進められており、とくに製造設備などは装置・デバイスや関連機器など裾野が広く、しかも日本企業が世界的にも競争力を持つ分野ですから、まさにど真ん中の銘柄だと言えそうです。「ひふみ投信」は、かなり早い段階から半導体関連銘柄を積極的に組み入れてきましたから、ここにきてその成果が大きく表れ始めたと言えます。ただ、半導体関連は需要に浮き沈みがある分野ですから、出口戦略が難しい。今後は、そのあたりが焦点になりそうです。このため藤野氏も今後の運用について次のようにまとめていました。
現在、ひふみは外部環境に左右されにくく、独自の要因で成長を続ける地味で地道な企業への投資を軸として、半導体関連企業に厚めに投資をする戦略を続けています。とはいえ、半導体の設備投資は波があるので、今後はその動向をにらみつつ、引き続き「守りながらふやす」運用に徹していこうと考えています。
そういった戦略は、現在の組入れ上位銘柄からも読みとれます。半導体関連に並んで人材関連銘柄のウエートが大きくなっています。これは明らかに「働き方改革」と今後の人手不足という経済情勢を見越した動きです。また、新規組入れ銘柄としてキューピーと住友金属鉱山が登場しました。キューピーは、あきらかにデフェンシブ銘柄として組み入れたと考えられます。確かに食品は外部環境に左右されにくい。

そして個人的には住友金属鉱山に目を付けたところが鋭いと思いました。実は現在、世界最大の銅山会社であるフリーポート・マクモランがインドネシア・パプア州に保有する銅山の採掘・営業権を巡ってインドネシア政府とトラブっており、この銅山での採掘・出荷が禁止された状態になっています。
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このため銅相場は受給がかなり締まってきた。銅は天然資源の中でも特に需給バランスによって相場が左右される傾向の強い商品ですから、ここで銅鉱山会社に投資するというのは、タイミングとしてはなかなか面白い。個人的にも注目していただけに、「ひふみ投信」の素早い動きにはちょっと感心しました。あいかわらず、このファンドは抜け目がないのです。こういう抜け目のなさも受益者としては頼もしい限り。今後の成果に期待したいと思います。

さて、月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介です。今回はベステラ(1433)でした。こらもまったく知らない会社でしたが、製鉄所や石油精製・化学施設、ガスプラントなどの解体専門会社だそうです。球体のガス貯蔵タンクを解体するために「リンゴの皮むき工法」なる特殊工法を保有しているとか。こういった銘柄も、言われてみればなるほどと思います。日本では各種プラントの老朽化が進んでいますから、その更新需要というのは見逃せません。その場合、普通はプラント建設会社に注目が集まるわけですが、よく考えると設備を更新するためには前段階として必ず既存設備の解体が必要。あいかわらず眼のつけどころがひとひねり工夫されていると感心しました。

ところで、「カンブリア宮殿」で紹介されたことで「ひふみ投信」だけでなく「ひふみプラス」「ひふみ年金」も資金流入が拡大しているようでマザーファンドの純資産残高は2月28日段階で1417.7億円に達しました。1月31日段階の純資産が1235.6億円でしたから、1カ月で200億円近く増加したことになります。また、3月に入ってからも資金流入が続いており、遂にマザーファンドの純資産残高は1500億円を超えたようです。テレビの影響力、恐るべし。ただ、これは「ひふみ」シリーズにとって良い面と悪い面があります。急速に流入する資金というのは、状況が悪くなるとやはり急速に流出する足の速い資金でもあるからです。そういう意味でテレビ出演によって注目を集めたことで、かえって運用の難易度は増したと言えそう。

そもそもアクティブファンドへの投資というのは難しいものですから、単純に"儲けたい"という気持ちだけで購入していては寂しい思いをするケースも少なくありません。もっとファンドの在り方や運用哲学について踏み込んだ研究と理解が必要なはずです。はたして現在の流入している資金は、そういった研究と理解を経た上での資金かどうかが心配。だから今後、相場の状況によっては受益者の質が問われる場面も出てくるのではないでしょうか。
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【ご参考】
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