2017年3月3日

日経記者の“コツコツ投資批判”が個人投資家をイラつかせる理由



日経ビジネスの記者が「日経BP」に書いた“コツコツ投資批判”がちょっとした話題です。

コツコツ投資が報われるって誰が言った(日経BPオンライン)

ある意味でコツコツ投資を批判するときの定型ともいえる文章なので早速、コツコツ投資を実践しているブロガーさん何人かが批評してくれました。

コツコツ投資は報われない?(NightWalker's Investment Blog)
【「コツコツ投資が報われる」って誰が言った】って……(吊られた男の投資ブログ (インデックス投資))
日経BPがコツコツ投資をdisる(夢見る父さんのコツコツ投資日記)

ほとんど言いたいことは指摘され尽くされているので、あえて私が補足することはありません。とくにNightWalkerさんの見解に大賛成。貯金だって投資の一種です。その意味でコツコツ投資に成功した人は昔から沢山いた。貯金以外でも、かつては利付金融債とか割引金融債なんか人気で、売出日には興銀や長銀の店舗に列ができたそうです。これなんか完全な債券投資です。だから、日経BPの記事は基本的に視野が狭いことが問題なのですが、それ以上に気になったのは、なぜ日経新聞出身記者による“コツコツ投資批判”が、これほどまでにコツコツ投資を実践している私をイラつかせたのかということです。そこにあるのは恐らく、若い世代を中心としたコツコツ投資家が心に秘めている覚悟と悲壮感に対して、この記者の想像力が全く及んでいないからではないでしょうか。

記事を書いた記者は、恐らくちょっとした老婆心があったのでしょう。確かにiDeCoや積立NISAに代表されるように政府も金融業界も“コツコツ投資推し”。でもリスク資産への投資は自己責任の原則が貫徹されるから、納得も得心もしてから投資するべきだということを言いたかったのだと好意的に解釈することもできます。

ところが、そういった問題は、大半のコツコツ投資家にとっては承知のことです。それでも私も含めたコツコツ投資家は、投資を続けている。それはなぜか。そこには自分の将来の生活は自分で守るしかないという強烈な覚悟があるからです。とくに40代以下は“失われた20年”の中で経済的に徹底的にシゴキ上げられた世代です。そういった世代にとって、国も企業も自分の将来を守ってくれないという実感がある。給料はそんなに増えないし、年金など社会保障は将来的な縮小が必至だと覚悟している。だから自分の生活を守るために、自分自身で何とかしなければならないという覚悟を決めた人たちがいる。そういう人たちがある種の生活防衛策として選択したのがコツコツ投資という方法だったのです。

実際、庶民にとって日々の生活費から投資資金を捻出し、毎月数万円をリスク資産に投じるというのは、大変なことなのです。投資が必ず報われるとは限らないことなんかわかってる。でも、何もしなければ、将来にもっと悲惨な状況になる可能性がある。それなら、何もせずに失敗することよりも、今やれることに精いっぱい挑戦して、少なくとも後悔だけはしたくない。それはコツコツ投資を実践している人にある程度共通する思いではないでしょうか。ようするに、コツコツ投資を実践している人というのは、覚悟を決めた人たちなのです。

そういった覚悟と悲壮感を心の内に秘めたコツコツ投資家にとって、日経BPの記事のようなことをしたり顔で言われるイラっとする。そんなことは言われなくともわかっているし、そもそもコツコツ投資がダメなら「どうすべきなのだ?」という問いへの答えがないからです。ようするに“為にする”議論はいらんのですよ。為にする議論はしゃらくさいし、大阪風に言うと「ハゲたこと言うな!」ということになる。

結局、記事の筆者には多くのコツコツ投資家が内に秘めている覚悟とか悲壮感について想像力が及ばないのでしょう。そして、為にする議論で時間を浪費して嬉々としていられるのは、やっぱりその人に余裕があるからです。確かに日経新聞社員の平均年収は1200万円を超えているそうですから、庶民に比べれば余裕があるでしょう。経済的に余裕のある人が、したり顔でコツコツ投資を批判する。でも、その代わりにどうするべきかは提言しない。それは「貧乏人は何をやっても無駄だから諦めろ」と言っているのに等しい。だから、少なくとも必死の思いで資金を捻出し、コツコツ投資を続けている庶民投資家からすれば、イラっとするのは当然なのです。

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