2016年12月8日

インデックスファンドが直面する二つの矛盾―「たわらノーロード」と<購入・換金手数料なし>について



アセットマネジメントOneの超低コストインデックスファンド「たわらノーロード」シリーズの第1期運用報告書が出ました。これで実質コストも明らかになりましたが、各ファンドとも非常に低コスト。やはり非常に優れた商品だということが分かります。ということで、実質コストについてはKenzさんのブログにお任せします。

たわらノーロードシリーズのうち7ファンドの初の実質コスト判明 (2016年12月)(インデックス投資日記@川崎)

実質コストはとても大事。ですが、やはり今一番ホットな話題は運用精度の問題でしょう。先日、「たわらノーロード」とライバル関係にあるともいえるニッセイアセットマネジメントの<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドが大きなトラッキングエラーを発生させてしまいました。一方、「たわらノーロード」も第1期はベンチマークに対して大きな乖離が生じています。そうなると、とくに先進国株式に投資するインデックスファンドとして、はたして「たわらノーロード」と<購入・換金手数料なし>のどちらを選べばいいのかという疑問を感じるのは投資家として当然のことです。そこで、少しばかり個人的な考えをメモしておこうと思います。

まず、「たわらノーロード」のベンチマークとの乖離ですが、これは「設定当初マザーファンドを非保有であったこと」という設定初年度特有の事情であり、マザーファンドに投資する形で追加設定されるベビーファンドとして、ある意味で仕方ないものです。この点を差し引けば、「たわらノーロード先進国株式」はマザーファンドの規模も十分で、安定した運用ができていると見ていいでしょう。実際に運用報告書のマザーファンドの運用報告の部分を見れば、おおむねベンチマークに連動した騰落率となっていることが確認できます。

一方、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドのトラッキングエラーですが、これはまさに不運としか言えません。<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドのマザーファンドには他にもいくつかの機関投資家限定ベビーファンドが投資していますが、どうもそこに大口の資金流入があったタイミングでトランプショックによる急激な為替変動にぶつかってしまったようです。マザーファンドの規模が比較的小さかったことで為替変動の影響を大きく受け、トラッキングエラーが発生してしまった。この点に関しては、小黒とらさんの分析が最終解だと思います。

ニッセイアセットの外国株式インデックスの乖離を分析(小黒とらのパーソナルファイナンスと悠々自適な生き方)
補足説明 ニッセイアセットの外国株式インデックスの乖離(同)

改めて思うのは、ベンチマークに連動させるインデックス運用というのは、われわれ素人が考えている以上に高度な運用方法だということです。とくに海外資産に投資するファンドは、常に為替や時差といった要素に影響されますし、オープン型投信である以上は、資金フローの影響も受けます。設定当初やマザーファンドの規模が小さいうちは、どうしても運用精度が不安定にならざるを得ない。それでも「たわらノーロード」と<購入・換金手数料なし>を比較すると、少なくとも運用の精度では「たわらノーロード」に一日の長があります。

とはいえ、既存ファンドの信託報酬を断続的に引き下げることで、常に業界最低水準のコストを追求しているのは<購入・換金手数料なし>シリーズです。何度もブログで書いていますが、コストが最低水準だから評価するのではありません。ファンドの成長に伴って既存ファンドの信託報酬が引き下げられるという当たり前のことが、日本でも当たり前になるために、その道筋を作ろうとしているニッセイAMの姿勢を評価しているのです。
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投資信託の究極の行動原理は受益者の利益を専らにすること、すなわちフィデューシャリー・デューティーです。そして、インデックスファンドは二つの目標によってフィデューシャリー・デューティーを全うしなければなりません。ひとつは、可能な限りコストを安くすること。もうひとつは可能な限りベンチマークに正確に連動することです。しかし、この二つの目標を阻害する矛盾に常に直面します。それは、運用会社が信託報酬を引き下げようとしても関係各社の思惑からなかなかそれが実現しないこと。そして、完璧にベンチマークに連想させることの技術的困難さです。

二つの矛盾は、前者はファンドの外部との関係から生じる矛盾ですから、外部矛盾と言っていいでしょう。後者は純粋にファンドの内部の問題ですから内部矛盾です。インデックスファンドが直面するこの二つの矛盾に対して、ファンドがどういった闘争を試みているのか。私は、そこにファンドの評価軸を置きたいのです。その意味では、内部矛盾に対して「たわらノーロード」は素晴らしい成果を上げています。一方、外部矛盾に対する闘争では、どうしても<購入・換金手数料なし>の挑戦を評価せざるを得ません。何しろ現実に断続的な信託報酬引き下げを実行しているのは<購入・換金手数料なし>なのですから。

こう考えると、「たわらノーロード」と<購入・換金手数料なし>のどちらを評価するかは、その人がファンドが直面する外部矛盾と内部矛盾のどちらを重視しているかで決まってくるのでしょう。ちなみに私自身は<購入・換金手数料なし>を購入しています。確かに運用精度がまだ不安定なのは厳然たる事実。しかし私は、やや毛沢東的ではありますが、外部矛盾の解消を優先したいのです。

もちろん、「たわらノーロード」を評価しないということは毛頭ありません。これはまったく素晴らしい商品です。だからこそ、「たわらノーロード」にはもう一歩、日本の投資信託が抱える外部矛盾に対して挑戦して欲しい。すなわち、もう一段の信託報酬の引き下げです(そういった動きを準備しているという噂はあります)。それができれば、「たわらノーロード」は現時点で日本におけるインデックスファンドの頂点に立てるでしょう。そのときには、私も“たわら男爵”さんにならって、“たわら伯”を名乗りたいと思います。
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