2016年11月3日

りそな銀行の個人型確定拠出年金(iDeCo)は隠れた大本命




みずほ銀行や三井住友銀行が個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称:iDeCo)の新プランを発表したように、2017年1月からの加入対象者拡大を見すえた競争がメガバンクでも過熱してきました。従来、大手銀行のiDeCoプランは運営管理手数料が割高だったり、商品ラインアップが高コスト商品に偏っていたりと魅力の乏しいものが多かったのですが、健全な競争が起こることで大手銀行のプランも改善されていくという現在の状況は個人投資家としても喜ばしいことです。そんな中、早くから個人型DCに注力してきた大手銀行が、りそな銀行です。現在でも低コストなインデックスファンドをラインアップするなどプランが良心的。さらに、このほど運営管理手数料を2年間無料とするキャンペーンを始めました。

りそな銀行個人型確定拠出年金

iDeCo(個人型確定拠出年金)「運営管理機関手数料ゼロ」の開始について(りそな銀行)

りそな銀行は、前身の大和銀行時代から日本で唯一の信託併営の商業銀行です。このため他の銀行とはやや異なる仕組みのインデックスファンドをラインアップしており、それが低コスト化の秘密でもあります。信託併営のため年金運用で豊富な実績を持つことも強みでしょう。銀行が提供するiDeCoプランの中ではダークホースどころか隠れた大本命となる存在かもしれません。

現在、りそな銀行のiDeCoプランは30以上の商品をラインアップしていますが、とくに注目は以下の低コストインデックスファンドです。



いずれも業界トップクラスの低コスト商品ですから、これらのファンドで素直にポートフォリオを組めば、極めて低コストでの運用が可能になります。なかでも面白いと思うのが、「りそなDC信託のチカラ日本の株式インデックスファンド」と「りそなDC信託のチカラ日本の債券インデックスファンド」でしょう。というのも、この2本は通常の投資信託とはやや異なる方法で運営されている商品だからです。

投資信託は通常、委託会社(運用会社)、受託会社(信託銀行)、販売会社(証券・銀行)の3者で運営され、信託報酬も3者で分け合う形式をとります。これに対して「りそなDC信託のチカラ」シリーズは、りそな銀行が委託会社、受託会社、販売会社すべての役割を担います。運営の仕組みとしては信託銀行が販売する運用商品である金銭信託と似た形式です(ちなみに、投資信託も厳密には特定単独運用金銭信託の一種です)。

この仕組みが有利なのは、低コスト化が可能なことです。なぜなら、信託報酬が安くても、りそな銀行が総取りするわけですから採算的にサスティナビリティがある。純資産が積み上がって収益性に余裕ができてくれば、りそな銀行の一存で信託報酬を引き下げることも可能では。その点を踏まえると、かなりのポテンシャルを秘めているように思えます。まさに信託併営というりそな銀行の特徴を生かした商品といえるでしょう。

一方、運営管理手数料も月額316円(税込)と比較的安いですし、このほど「2017年1月1日現在、りそな個人型確定拠出年金の加入者および運用指図者」もしくは「2018年12月28日までに、りそな個人型確定拠出年金に新規加入、資産移換した加入者」は運営管理手数料が2年間無料になるキャンペーンも始まりました。無料期間終了後も掛金引落口座をりそなグループ(りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行)に指定するか、掛金を事業主払込(給与天引き)にすれば月額54円の割引きが適用されますから、運営管理手数料は月額262円となる。これは、みずほ銀行の運営管理手数料と比較しても遜色ありません(国民年金基金連合会への手数料月額103円、信託銀行への手数料月額64円が別途必要な点は全運営管理機関共通)。

充実したサポート体制も、りそな銀行もiDeCoプランの魅力でしょう。専用コールセンターだけでなく全国のりそなグループ店頭でも手続きや問い合わせに対応していることは、ネット証券やネットバンキングに不慣れな人でも安心です。iDeCoは制度が複雑ですから、純粋に手続き上の疑問について対面で相談できる価値は無視できません。また、「りそな確定拠出年金定期便」や「個人向け運用状況レポート」などを発行していくれるのは良いサービスです。

なにより、りそな銀行はiDeCoに対して熱心なのも好感を持ちます。その一例がiDeCo情報サイト「iDeCo個人型確定拠出年金スタートクラブ」を立ち上げたことです。加入対象者が拡大されたことで、今後は投資初心者もiDeCoに加入することが予想されます。そういった人に対して積極的に情報提供しようとしている姿勢は高く評価すべきです。

ブログで再三指摘していますが、あくまで低コストにこだわるならSBI証券や楽天証券のiDeCoプランは運営管理手数料が無料になり、低コスト商品もそろっているので最もお得なプランといえます。しかし、投資初心者にとっては、ネット証券がいまいち信用できない、あるいは手続き上の疑問は対面で相談したいというニーズがあることをバカにしてはいけないと思う。iDeCoの加入対象者が拡大されたということは、それほど投資や制度に詳しくない人でも安心して老後に向けた資産形成ができるようにしないといけないわけですから。そういった観点から、りそな銀行のiDeCoプランも極めて有力な選択肢だといえるのです。

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