ひふみ投信の第8期運用報告会が大阪でも開催されたので参加しました。ひふみ投信の第8期(2015年10月~16年9月)運用成績は+7.15%。参考指数であるTOPIX(配当込み)が-4.15%でしたから、素晴らしいパフォーマンスをたたき出しています。うまく相場のキャラクターが変化するのに合わせてポートフォリオを組み替える戦略が成功したようです。あいかわらず好調な運用が続いているひふみ投信ですが、10月から始まった第9期の運用戦略についても最高運用責任者である藤野英人さんから説明がありました。なんでも狙い目は“ガテン系オヤジ銘柄”だとか。これもなかなか面白い着目点です。
報告会前半は前期の振り返りでしたが、やはり成功の要因は市場のキャラクターの変化に合わせてポートフォリオを徐々に組み替えたことです。期前半は国内外景気のスローダウンを見越して比較的現金比率を高めにしていたのですが、2月に原油安から大幅な株価下落となっていたあたりから「これ以上は(ファンダメンタルの面から)下げはないだろう」ということで割安・外需銘柄を積極的に組み込んだそうです。こうした銘柄は大型株が多いですから、期終盤は日銀によるETF買い入れの恩恵も受けてリターンを大きく押し上げました。やはりアクティブ運用の基本は”安く買う”ことに尽きるわけで、お見事としか言いようがありません。
インフラ投資拡大で大型株中心の相場に
さて、今期(16年10月~17年9月)の運用について藤野さんは「前期に比べると楽観・強気」と断言します。米国の大統領選挙が不安要因とされますが、ヒラリー氏もトランプ氏もいずれも公約にインフラ公共投資の拡大を掲げていることがポイントです。これまで世界各国が金融政策によって景気テコ入れを進めてきましたが、ここにきてその限界が見え始めたことで「金融政策から財政政策にシフトする可能性が高い。これは格差是正や選挙対策にもなるので政治的に都合がよく、実行されやすい」と指摘します。また、日本はロシアとの北方領土交渉で何らかの進展がある可能性があり、これも両国の最終的な狙いは北方領土でのインフラ投資です。
世界的にインフラ投資が拡大すると、資源需要も拡大しますから新興国経済への好循環も期待できるとか。また、今後のインフラ投資は従来型インフラではなく、IoT(モノのインターネット)を組み込むなど新しいイノベーションを含んだものになるかもしれません。そうなると、大量のセンサーや半導体が必要になり、日本が得意とするハイテクハードウエアの需要も高まるというのが藤野さんの見立てです。
こうしたストーリーから、藤野さんは「今期は建機、資源銘柄である商社、鉄鋼といった銘柄が期待できそう。いずれも“ガテン系オヤジ銘柄”」と指摘します。“ガテン系オヤジ銘柄”とは、上手く言ったものです。また、半導体製造設備の需要も世界的に盛り上がっていますから、やはり半導体製造設備銘柄にも注目しています。だから藤野さんは「2017年は大型株中心の相場になる可能性がある」と指摘します。ひふみ投信としては“地味でもしっかりとした銘柄”という従来からの重点投資銘柄に投資することは継続しながら「上昇期待が見えている銘柄は、しっかりと組み込んで相場についていく」ことが今期の投資戦略となるそうです。ぜひ成功してもらいたいものです。
米国株への投資は、まずは1~2銘柄から
質疑応答では、ある受益者から海外投資の可能性について質問がありました。これに対して藤野さんは「検討を続けている。やるなら米国株。すでに米国株に投資するための現地事務手続きが完了したので、いつでもスタートできる」との答えが。ただし「そんなに大きくは投資しない。まずは1~2銘柄、日本株では投資できない分野の銘柄を組み入れたい」と説明しています。日本株を通じて投資できない分野って、いったい何なんでしょうか。これも非常に興味がわきます。
最後に私も「マザーファンドの規模が順調に成長していますが、今後は『ひふみ年金』も始まり、ますますマザーファンドの規模が大きくなることが予想されます。その場合、運用の在り方は変わらざるを得ないのですが、その点をどのように考えていますか」と質問しました。これに対して藤野さんの答えは「確かに運用規模が大きくなることは不利な点も多い。しかし、逆に入手できる情報量は格段に増える」とのこと。なんでもひふみ投信のマザーファンドの純資産残高が1000億円を超えたことを金融機関各社に連絡したところ、「昔は、ひふみ投信をゴミ扱いしていた金融機関各社から軒並み蘭の花が贈られてきた」とか。また、ひふみ投信の認知度が向上したことで、ほどんどの企業のトップが直接面談に応じてくれるようになったそうです。だから「機動力の低下を情報量の拡大で補いたい」というのが当面の対策となります。これが成功するかどうかも、注目したいと思います。
なお、ひふみ投信の第8期の実質コスト(税込)は信託報酬1.058%に売買委託手数料0.229%、その他費用0.002%を加えた合計1.359%でした。前期が1.366%でしたから、順調に実質コストも低下しています。これも純資産残高が拡大した効果のひとつです。
あと余談ですが、資料と一緒に配布されたひふみ投信のパンフレットがボーディングパスを模したもので洒落ている。
些細なことですが、こうした遊び心あふれる点がレオス・キャピタルワークスという運用会社の良い点です。ガツガツ儲けることばかり考えるのではなく、“楽しく投資を続ける”という発想は、とても大切だと思うからです。
【ご参考】
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